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大浦るかこ・あにまーれリスナーの集合的無意識が作り出したVTuber

この記事は、あにまーれ新人の大浦るかこさんを紹介する記事ではありません。タイトル通り「大浦るかこはあにまーれリスナーの集合的無意識が作り出したVTuberである」という私の説について語る内容になっています。

初配信

とはいえ前提知識は必要なので書きますと、大浦るかこ(以下敬称略で失礼します)はVTuberグループ「有閑喫茶あにまーれ」のメンバーとして2021年2月7日にデビューしました。記事執筆時点でデビューして2週間なので、ホヤホヤの新人だと言えます。あにまーれは一時期はメンバーが3人でしたが、1年前くらいから増員路線になって着々とメンバーを増やし、彼女と同期2人の加入によって12人という大所帯になりました。

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個性豊かなメンバーが揃っているわけですが、大浦るかこはデビューして2日ちょっとでYouTubeの登録者数が1万人に到達し、これはあにまーれの中ではかなり速い方です。初配信でインパクトのある配信をすると立ち上がりが速いわけですが(ものまね芸が圧巻だった風見くくなど)、彼女の初配信はそこまでインパクト重視ではありませんでした。でも立ち上がりは速かった。何がリスナーに刺さったのでしょうか。

これが初配信ですが、まず注目はオープニング映像ですね。アップルIIを思わせるクラシックなパソコンがモチーフのオシャレな映像ですが、画面には「あにまーれ」とあります。774inc. という事務所のロゴも見えます。

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でも肝心の自分の名前はどこにも無いんですよね。普通は一番目立つところに表示するでしょう。一応コンソール画面にちらっと映りますが実に控えめで、壁にある自分のポートレートも暗くして目立たないようになっています。彼女はこのオープニング映像を普段の配信でも使っています。

初配信の主な内容ですが、「謎」が好きだという話から自作の謎解きを披露し、それはあにまーれをテーマにしたパズルでした。そしてそのままおとなしく終わるのかと思ったら、最後に唐突に「初配信に臨む気持ちをラップにしたためました」と自作のラップを流しました。上の動画の27分30秒あたりからですが、リスナーが編集した以下の動画が歌詞付きでわかりやすいので引用しておきます。

ラップやるとかギャップがあっていいかも」というノリでやることになり、iPhoneアプリのGarageBandを初めて使って作ったそうですが、それにしてはクオリティ高いし、歌詞はいい意味で酷くて(体液出したいよ~♫)、あにまーれの先輩たちの初配信をネタにしており、あにまーれ愛にあふれているとも言えます。全体を通して、自身の紹介というよりは「あにまーれが大好きだ」と言いたいような初配信でした。

配信2回目:捗る妄想

2回目の配信は、定番であるタグ決めと初配信のメイキングをやることになっていましたが、彼女の癖である脱線癖と妄想癖が既に出ていました。先輩メンバーの白宮みみが吹奏楽経験者と言う話から、メンバーが吹奏楽部員だったらどの楽器担当かという妄想を長々と楽しそうに語っていましたね。

「個人的な感想ではフルートは美女が多いので、いちかさんがフルートで、るいさんがピッコロ。この二人のパート練習はめちゃくちゃいい匂いがしますよ」などと妄想が捗っていました。ちなみに私も吹奏楽経験者なので、彼女の妄想を「わかるわー」と聞いていました。るかこさん自身も経験者でバリトンサックスだそうです。これもわかる。バリサクはマイペースで剽軽(ひょうきん)な人が多いイメージですね。

さらには、あにまーれメンバーに歌ってほしいアイドルソングの話もしていました。あにまーれの誰に何を歌わせるかということを常に考えていて、既にライブ2回分のセットはあると。よほど全員をよく見てるんでしょうね。この回に限らず、あにまーれの話になると本題から脱線しがちで「私しか楽しくなかったらどうしよう」と言いながら語ってます。

配信3回目:死ぬまでにやりたいこと

3回目の配信は、大浦るかこの理解のために特に重要でした。「死ぬまでにしたい10のこと」というテーマで、実際は8個でしたが、彼女がやりたいことが凝縮されていたからです。

その8個の内容を書き出すとこうなります。

1. 死にたくない
2. 電脳化したい
3. グリードアイランドを作りたい
4. CEOになりたい
5. アイドルのプロデュースがしたい
6. 神絵師になってコミケで同人誌を出して、コスプレイヤーさんに売り子をしてもらいたい
7. バーチャルあにまーれを作りたい
8. パンダのおもちゃになりたい

まず最初の4つですが、死にたくないので自身を電脳化して、グリードアイランドやレディプレイヤー1のような仮想空間(メタバース)で生きられる世界を作りたいということですね。そしてそのために会社を作りたいと。とても興味深いですが、あとで言及します。

5番目の「アイドルのプロデュースをしたい」はアイドルオタクだからですが、一応あにまーれはアイドルなので、るかこさんもアイドルなんですよ。2回目の配信であにまーれメンバーに何を歌わせるかという話をしていましたが、そこに自分は入っていなかったようで、自分がVTuberアイドルになるというよりもプロデュースをしたいからあにまーれに入ったのではと思ってしまいますね。

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6番目の同人誌うんぬんは、単純に全オタクの夢です。そして7番目ですが、ARグラスをかけながらリアルの喫茶店「あにまーれ」で食事をして、グラスにはあにまーれメンバーが投影されて会話もできるという構想でした。それもあにまーれリスナーの夢ですね

そして8番目は、パンダが可愛いのでオモチャになって遊ばれたいそうですが、自分が可愛くなってちやほやされたいんじゃないんだなと。そもそも全体的に、VTuberがデビュー3回目の配信で語る夢には見えないですよね。普通は「武道館でライブがしたい」とか「憧れのあの人と共演したい」とかではないでしょうか。でも彼女の場合、自分が前面に出て表現したい・自分を見て欲しいというよりは、裏方でもいいのでプロデュースしたいというモチベーションが強いように見えます。これが彼女が普通のVTuberの雰囲気とはちょっと違う理由でもあるのでしょう。

配信4~7回目:あにまーれが好きすぎる

配信4回目は初めてのゲーム配信で、彼女らしい落ち着いた雰囲気の?ゲームでしたが。例によって脱線しがちで、あにまーれメンバーや(同じ事務所の)周防パトラのASMRについて熱く語っていました。毎晩ASMRを聞きながら寝ているそうです。

配信5回目は視聴者参加型の雀魂で、自身は麻雀初心者だそうですが、因幡はねるの雀魂公式配信「はねまん」で麻雀をおぼえたという話をしていました。ここではネタっぽい言い方ですが、実際の打ち方も、ねるちゃんの影響を受けてる感じはしましたね。

因幡はねるの配信はよく見ているようで、配信6回目ではねるちゃんと同期の湖南みあちゃんの配信がカブって同時視聴が大変だという話をしていました。

配信7回目は「美少女ゲーム『あにまーれ』の妄想企画書をつくります」というもので、タイトル通り妄想爆発だったわけですが、企画出しのやり方などは手慣れた感じもしました。あと「ブラウザでもスマートホンでも遊べるHTML5で作られたゲームをイメージしている」と言っていて、分かってる人の発言だなぁと。

「あにまーれメンバーで美少女ゲームを作ったら」はリスナーなら絶対面白いテーマですが、大浦るかこも例によって完全にリスナー目線で妄想していましたね。自身の役もありましたが、アウトサイダー的な立ち位置になっていました。

リスナー目線と言えば、配信で名前を呼ばれただけで喜んでいるのもただのリスナーです。ほんとに名前が出ただけでしたが。

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こうして初配信から7回目までの配信をざっと見ても、明らかにあにまーれが好きすぎるわけで、これが彼女の人気の理由の一つなんだろうと思えます。配信終了の挨拶が「おつまーれ」で、ひと呼吸おいて丁寧に言うのも好きですね。「おつまーれ」は主にあにまーれ内でコラボをするときの挨拶でソロでは使わない人も多いですが、彼女はこれを言えるのが嬉しくてしょうがないという気持ちが伝わってきます。(55分から)

もちろん、彼女自身の魅力はあるわけですよ。声が良いし、話題が豊富だし、映像作ったり曲作ったり器用だし、トークやコメント拾ったりするのもうまいし、配信者として明らかに有能です。しかしそれだけじゃなく、あにまーれリスナーとしてリスナーと同じ目線であにまーれについて語らってくれるのが親近感があるし、親近感があるだけにリスナーにとって羨ましい立ち位置なのですよね。あにまーれメンバーと同じところにいて、プロデュースにも関われるかもしれないのだから。あにまーれリスナーの願望を具現化した存在と言えるのではないでしょうか。むしろこんな存在が都合よくいるものなのか?

集合的無意識が作り出すもの

タイトルにある「集合的無意識」というのは本来は心理学の用語ですが、ここではSF的に拡張した意味で使っています。神林長平の短編SF「いま集合的無意識を、」に大いに影響されています。以下小説のネタバレがあります。

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この小説の主人公は神林長平氏自身で、謎の人物とTwitterで対話することになり、その人物は伊藤計劃だと名乗りました。伊藤計劃氏は「虐殺器官」で有名な作家ですが、この小説が書かれた時点で既に若くして亡くなっています。著者は、このTwitter人格はインターネットの集合的無意識が作り出したという仮説を立てます。

そもそも意識とは何でしょうか。著者によると、意識とは「リアル世界をシミュレートする脳の機能」です。そして「私」や「他人」というのはそのスクリーン上に投影されている虚像・フィクションだと。視覚や聴覚など外部からの現実の刺激に反応するだけなら意識は不要ですが、その情報を元に自分はどうすればいいのか考えるには、脳の中に自分を投影してシミュレートすることが必要で、それが意識だということです。人間の脳にはその機能があり、そのフィクションの力があるから芸術も宗教も政治も発達されることができた。

フィクション(虚構)が文明を発達させたという部分は、少し前に話題になった「サピエンス全史」が同じことを言っていますね。私はサピエンス全史とVTuberをからめた記事を書いているので、そちらを見て頂くとさらに分かりやすいかもしれません。

「いま集合的無意識を、」の考え方によると、私たちが意識している現実というのはリアルに見えるけれど、意識は前述のように脳の中でシミュレートされた映像を見ているのであって、ある意味バーチャル映像です。だから実在のものしか見えないとは限らないでしょう。そして現在、意識は体の外にも広がっていますね。スマホやPCを介してインターネットのクラウド上には膨大な意識があります。ユングが言ったように、大勢の無意識の集合が普遍的な意識としてのカタチを取ることもあるでしょう。であれば、それによって作られた虚構の存在が実在するように意識されることもあるのではないか、というのがこの小説で言う「集合的無意識」だと私は理解しました。

これがあり得るとしたら、あにまーれリスナーは何十万人もいるのだから、その集合的無意識はかなりの力があるのではないでしょうか。大浦るかこはVTuberとしてはちょっと変わっていますが、あにまーれリスナーの願望の具現化だと考えると違和感がない。そもそも彼女は、有閑喫茶あにまーれの店員という身分は仮の姿です。

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こちらは大浦るかこのTwitterのプロフィールですが、これにあるように彼女はあにまーれに潜入中のスパイなんですよ。ならば彼女の雇い主(ボス)は誰かという話になります。スパイを雇うのは国家や企業ですが、あにまーれにスパイするようなものがあるとは思えない。

あにまーれにスパイを放つとしたら、あにまーれリスナーしかいません。あにまーれリスナーの集合的無意識がVTuberを作り出してスパイとして送り込んだと考えるとどうでしょう。あにまーれのVTuberだけれど言動はまるでリスナーという、大浦るかこのような存在ができあがるでしょう。

「死ぬまでにしたい10のこと」で、電脳化してメタバース(仮想世界)を作りたいという話をしていましたが、そしそれが実現したら、あにまーれメンバーみんなも電脳化してメタバースに住めるようになります。そうなると、人間が電脳化した存在でも、クラウド上で生まれた人工意識でもメタバース上では同等の存在になります。グレッグ・イーガンの小説「ディアスポラ」がそういう世界を描いていました。大浦るかこが、それを作るために会社を作りたいというほどのモチベーションなのは辻褄が合います。

そんなふうに考えると、無人の部屋の中でコンピューターがカタカタ動いているオープニング映像も意味ありげに見えてきますね。

これが私の、「大浦るかこはあにまーれリスナーの集合的無意識が作り出したVTuber説」でした。真にバーチャルなVTuberということです。信じるか信じないかはあなた次第…

774inc.非公式Wiki 「大浦るかこ」

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