英検3級から翻訳校閲者になるまで #1

 わたしは学生時代、英語はまったく得意ではなかった。英文科を出たわけでもない。留学経験もない。海外経験は、その昔に社員旅行でハワイに行っただけ、英検は中学生時代に3級をとったきりだった。
 それが、なぜ翻訳業界に入ったのか。
 当時メーカーで社内の編集ライターをしていたが、終電帰りの翌日にも朝8時から会議があるのがふつうで、体力的にとてもきつかった。この会社であと10年、20年、いや定年までがんばっていける気がまったくしなかった。
 そこで浅はかにも「翻訳をすればいざとなればフリーランスになれるし、いいんじゃないかなぁ」と思ったのである。
 そう、「浅はか」だった。英語もできず、翻訳者への道がどんなに険しいかも知らずに「なんとなく」そう思ったのであるから。
 ともかく、そうと決めてしまった以上、英語を勉強しなければならない。まずは安価な教材からと、NHKのラジオ講座を選んだ。
 会社の行き帰りは、英会話入門(遠山顕先生)、ラジオ英会話(大杉正明先生)、やさしいビジネス英語(杉田敏先生)を聞く。テキストとCDを買って、通勤時はもちろん、昼休みも外の公園で弁当をつつきながらずっとCDを聞いた。休日はシャドーイングとリピーティングを繰り返した。テキストを暗記できるまで覚えようと思った。
 この方法は間違っていなかった。半年くらいで、ほかに何の勉強もせずに英検準2級、2級とクリアし、腕試しで受けたTOEICも680点とれたのだ。
 この当たりで会社を辞めてしまい、毎日勉強の日々を送っていた。とはいってもラジオ講座オンリーは飽きてきたので、ほかにも面白そうな教材を買って試してみた。
 覚えているだけでも「小林克也のおしゃべりアメリ缶」、アルクの「TOEICマラソン 860点コース」、そして悪評高い「スピードラーニング」もやった。「聞き流すだけで英語がしゃべれるようになる」教材だが、シャドーイングとリピーティングを繰り返した結果、リスニング力は上がったし、教材の英文も興味が持てたので、やり方次第で「使えた」教材であったと思う。
 読解教材がなかなか自分に合うものを探せず、多読をしようと考えた。最初は英語の絵本、慣れてきたら児童書などを借りたり買ったりして1年間、「毎日1冊」読もうと決めた。
 いちばん面白かったのは、Jim Benton "Franny K. Stein Mad Scientist”
シリーズ https://www.amazon.com/Lunch-Walks-Among-Franny-Scientist/dp/0689862954/ だった。フラニーという小学生女子の「マッドサイエンティスト」がいろいろな事件を引き起こすというものだが、読んでいてとても楽しく引き込まれた。
 さて、1年間そうやって過ごしているうちに英語力は上がったかというと、TOEICは860点、それに念願であった英検準1級はとれた。一応は実務レベルまでは来たかなと思っているところに、知り合いから「翻訳会社で人が足りないから来ないか」というオファーがあったのだ。

続きは
https://note.com/merlin_witch/n/n275de1ba7c19

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