オタクの恋は難しい①~白冥の獄~

海外MMロマンスにどハマりしている昨今ですが、そんな私をさらに狂わせた事の顛末の始まりは、友人にオススメされコレ↓を読み始めたことです。

(1巻あらすじ アマゾンさんより引用)
キラームは成績優秀なことから異教徒として初めて王立サグラーダ学院へ入学が許される。入学初日、制服を美しく着こなし乗馬する上級生に遭遇、学院で待ち受ける未来に期待は膨らむばかり。しかし、寮で同室となったその上級生ハビエルは、武術堪能で学院の荒くれどもに一目置かれながらも、体の中に“地獄への扉”を持つ呪われた存在として忌避されていた。高慢な態度のハビエルに反発するキラームだが、その呪いの実態を知るにつれ…。

学園生活ありバトルあり異文化交流ありちょっとエッチなシーンあり…!
ハリポタの親世代の学校生活とゲーム・オブ・スローンズ的な「魔法を信じない人たちの異世界ファンタジー」の組み合わせ!
さらに、蒸気機関のスチームパンク的要素と様々な文化や肌の色が出てくるグローバルな感覚の豪華盛り合わせファンタジーかつ少年たちの愛…!
つまり異世界ファンタジー・ギムナジウム…!

ちなみに1の上巻の表紙は蒸気機関の天才で主人公のキラームくん。褐色金髪肌で、同性愛に寛容な少数民族の商家の出身。どちらかというと、研究家肌でギークな自由人。
お相手は下巻の表紙になっているハビエルくん。こちらは白い肌に黒髪の、中世キリスト教社会を思わせる騎士道精神の根付いた貴族の出身。涼やかな容貌ですが、キラームくんの100億倍武闘派です。スクールカーストならバスケ部にいるタイプです。

著者が「ムーア人とキリスト教の文化がせめぎ合うスペインに滞在していたときに思いついた」というだけあって、ただの「剣と魔法のファンタジー」というにはいささか壮大で濃密。ヨーロッパの文化だけでなく、西アジアや地中海沿岸の風土も織り交ぜられた奥深い世界観を感じられます。また、肌の色や文化のすれ違いなど、社会的な差別や格差、価値観の違い、闘争の片鱗も見え、大河ドラマ的な要素もあるのが面白いところです。

そんな細やかな描写も生々しく、翻訳ものとはいえ、一瞬で引き込まれて読んでしまいました。

(自治体の図書館にもひと揃いしかなく、どうやら売れなかったと聞いて、こんな面白いのに信じられない…!という気持ちです。世知辛い…)

ちなみにリバもあります。というかMMロマンス気軽にリバする…日本でフジョシをしているとにわか信じられないです。
が、それが事実……フェラーリみたいな感覚でリバをするのかな、というのが私の理解です。ちなみに私はリバがだーーーい好き!

そんな「白冥の獄」で、主人公ふたりが困難に見舞われながらも手と手を取り合い未来へと踏み出した一方で、魅力的な彼らに焦がれ失恋した男たちもちらほら……
その中のひとり、エレザール・グルニートくんに私は心を奪われてしまったわけです。2の上巻の表紙↓で、左上で剣を持っている子。スクールカーストでいうと二番手ですね。ラグビー部にいるタイプ。

ちょっとすっとぼけたところのあるハビエルくんを毒舌ながらも気にかけて支え、友人に「英雄たちの官能的で美しい友情」とハビエルと組み合わせて呼ばれていた子……

白冥の獄という話は、初めから終わりまでキラームの視点で進んでいくのですが、彼がハビエルと「いい仲」になってからも、その関係をオープンにできるわけではなく、同学年で同じグループの一番の友人であるエレザールはキラームにとってやきもきする存在なんです。
ハビエルは自分が男を好きになるゲイだということをずっと押し隠していて、「エレザールのような男になりたかった」と言うほど、ハビエルにとってエレザールは「男らしい男」であり、自分がなりたくてもなれない「女が好きな理想の男」なんですよ。ただ、それはあくまでハビエルの視点であって、ハビエルを好きなキラームから見たエレザールはそうではないんですよね。あのシーンもこのシーンも見てほしいんですが、それは読んで確かめてほしい……!
そして、ハビエルがだんだんともともとの友人たちより、キラームを優先するような態度をとるのが主人公に肩入れしている読者としては嬉しく、しかしエレザールくんを推したい身としてはつらいんです。休暇で同じ街に集まったものの、なかなかハビエルに会えない(この裏でキラームの家にハビエルは泊まっている)のにやさぐれたり、あのほんと、何かを言うと多大なネタバレになりそうで言えないんですが、一挙一動がハビエルに向いているのが本当に、健気とも言ってよくて……
見た目と普段の行動はジャイアンだし、口を開けばキラームには憎まれ口しか叩かないんですけどね。(人を投げたりできるしすごくマッチョ)
まぁ合理的で研究者肌のキラームと、人とのつながりが好きで感情優先好きなやつには思いっきり贔屓したいエレザールは、ハビエルのことがなくても絶対ウマが合わないとはわかるんですけど……(しかしそれがわかるのもいい)

そんなエレザールくん、ハビエルくんにほのかな想いを抱いているんだろうな~と思いつつも、キラームが同性愛に寛容な文化からきているのもあって、同性愛への嫌悪はかなりあからさまに示します。
それがキラームをさらにイラッとさせつつ、読者としては、同性愛を罪とされた社会で生まれ育った人間の価値観を土壌にして、自己肯定もできない「ホモフォビアのゲイ」として映ります。

そう、私は「ホモフォビアのゲイ」の葛藤に、なぜだかとんでもなく惹かれてしまうんです(参照:アドリアンイングリッシュの変

そういうまさしく「普通の男らしい男」の風貌を持つ彼が、自分の本来の欲望やアイデンティティを受け容れて、どうにか幸せになってほしい……!

いやだってさ~~~~こっそり好きな人の肖像画持ち歩いて撫でたり、一緒に友だち付き合いのノリで娼館に行って女とやりながら手を繋いだり、なのにいざキラームが目の前に入って来たら嫌悪をあらわにするなんて……!くそこのやろ~~大人げないけどちょっとかわいいじゃねえか~~!
今回の恋はかなわなくても、彼が自分自身を受け容れて、のびのびと生きる様が見たい……つらい過去や環境を昇華してどうにか幸せになってほしい……

そう願って、クライマックスを迎える前から情緒を狂わされTwitterでぼやいていました。誰かとエレザールくんの話がしたい。エレザール君の幸せについて語り合いたい。寝ても覚めても「エレザールくん……(鳴き声)」

そう、これがオタクの恋なのです。

別に自分とキャラが恋愛をしたいわけじゃない。一方的な、献身なのです。献身と言うのもおこがましい。なにもできない、お布施も彼らにはとどかない、ただただ幸せを願い、架空の結婚式でエア・ライスシャワーを投げ、気持ちだけは新婚旅行の旅費をカンパするのです。ただただ彼が幸せになるためには何が必要なのかを考えたいし、彼が幸せになった二次創作を摂取したい……しかし馴染みのpixivにもTwitterにも、エレザールくんの二次創作はありません。売れなかった翻訳本のサブキャラなんですから……そんなオタクの狂った私はAO3(英語版二次創作ノベル掲載サイト)とtumblr(イラストは結構載っている)をあさり、数点の二次創作に感謝しながらネットの海を泳いでいました……

そんな時、白冥の獄をオススメしてくれたあやさき先生から一言。

「続編はエレザール主人公だよ!未翻訳だけど!」

という情報を得てしまい……?!

普通だったら諦めていますが、もう私は恋するオタクでした。

次回!「翻訳サイトと契約して英文を読もう!~幸せになってほしいと思っていたけど、君が生きにくい理由の8割はだいたい自業自得なのでは?!と推しの株が急落してしまって…?~変」乞うご期待!


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