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映画感想:窮鼠はチーズの夢を見る「恋愛って、すべてにおいてその人だけが例外になるってことなんですよ」

※ネタバレ注意※

BL漫画と言っていいのか、とにかく大好きで人生のバイブルと言ってもいい漫画が映画化されると聞いて……ドキドキ半分、冷や冷や半分、そして一人のフジョシとしてBL映画の今後の発展にお布施するつもりで見に行きました。

原作は多くの人が知っている通りなので紹介は割愛しますが、二人の全く違う人間が、まったく違うように恋愛をしてきて、どうしようもなく愚かな部分と堪らない魅力の両方をぶつけ合う物語です。

誰かが好きだというまっすぐな感情も、泥のような妬み嫉みも、赤裸々に、鮮やかに描かれていて、BL漫画という枠に収まらない、「大人の恋愛漫画」です。

映画は、とにかく、今ヶ瀬がしたたかで、それでいて不安定で可愛い…!
そして大伴先輩がしっかりぷかぷか流されまくりのクソ男で、なのに一対一で目の前に立つと細かな気遣いができて気分のいい魅力的な男性なんだろうなあ~という歯噛みしたくなる気持ちをちゃんと味わえるイイクズ男なんです。
今ヶ瀬とのキスも最初は嫌がって嫌悪感丸出しだったのに、時間が過ぎるとともに絆されて受け容れていくところが、ヨ!さすが流され侍!

そして、いい味出しているのが、夏生先輩。サバサバとした言動に、大伴恭一のダメなところも把握しながらよりを戻そうとする肝の座った女性像が痛烈でした。
一番好きなのは今ヶ瀬と夏生先輩の対決シーン。夏生先輩は本来LGBTにも偏見はないからこそ、あえて言葉を選んで傷つけにいくのが、こっちも「手段を選ばない恋愛」なのだと迫力を感じる。
なりふり構わない今ヶ瀬と夏生先輩の二人を目の前に、流され侍・恭一だけが安パイを選んでしまう……この対比もね、たまらないです。

この映画、思った以上によかったのは、本当に役者さんたちの迫真の演技のおかげだと思います。

正直、ポスターを見た時は「イメージと違う……」と思っていたのですが、映画が始まってすぐ、大伴恭一は大伴恭一、今ヶ瀬は今ヶ瀬の魅力をちゃんと三次元に具現化してくれた映画なんだ……!と感動しました。

今ヶ瀬の迫力と、情に流されながら、手さぐりで男同士の愛のかたちを探る大伴先輩。
したたかに大伴先輩を囲い込みながら、大伴先輩が向けてくる感情は今ヶ瀬自身が彼に付け込んでそう仕向けたものだという不安と、めげない逞しさで震えるように立つ今ヶ瀬は、本当に「愛す可し」でした。

そして、二人のキスがむちゃくちゃエロかった。なんなら肩を組む手、触れ合う一つ一つの手が泣きそうになりました。
そのシーンごとの感情が乗っているようで、特に大伴先輩……頑なに拒否するような、漫然と受け容れるような、そして自分からキスを仕掛けること。
二人が仲良くじゃれている時の周りの目、それを気にするのが今ヶ瀬なのがまた、声が出そうになる。

残念ながら後半は駆け足で、「前後編二本でやってもよかったのよ…!」と言いたくなりましたが……

ラストシーンは原作とは違いましたが、それもまた、この「窮鼠」と続編「俎上の鯉」のひとつのエンディングの形なんだな、腑に落ちました。

「恋愛って、すべてにおいてその人が例外になるってことなんですよ」

その言葉とともに、映し出される今ヶ瀬と大伴先輩二人が、まるでスタート地点の二人から逆転した様子。
二人にとって、他の誰でもなくお互い同士が、例外でした。

素敵なBL映画をこの世に発信していただきありがとうございます!
監督やスタッフさん、そして迫真の演技をしてくださった演者の皆様に感謝です。

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