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前編:漫画原作、これをクリアできれば読みやすくなる

 漫画原作についてです。こんかい週刊少年マガジン原作大賞の応募作品をたくさん読んでいて、読みやすい原作と読みにくい原作がありましたので、その違いについて、思ったことを書いていきます。
 書いていたら長くなりましたので前後編に分けました。

 今回は読みやすい漫画原作について書いていきます。あくまで、1話or1~3話程度の長さの漫画原作の話です。小説の書き方でも、ヒット作品の作り方でもないので、あらかじめご了承ください。
 小見出しの後ろの【 】の数字は、読みやすさの%(体感)です。しっかり読んでもらえるページ数の割合と考えてもらってもOKです。

①冒頭で「なにをする or したいか」を描く【40~60%】

 いわゆる「どんなマンガか見せる」ですね。コレができるだけで上位40%には入れるのではないでしょうか。そのくらい、大きなアドバンテージです。
 漫画はスピード勝負です。冒頭にコレがないと、なにに注目すればいいのかわからないので、そっとページを閉じます。
 例を出します。ただしダメな例です。成功は汎用性がありませんが、失敗には汎用性がありますので。失敗素敵。

【ダメな例① 冒頭で説明しちゃう系】
 錬金術。それは、物質の構成や形を変えて別の物に作り変える技術とそれに伴う理論体系を扱う学問である。大国、アメストリス王国で錬金術は国家資格になっており、その資格を有するものは錬金術師と呼ばれた。エドワード・エルリックは、最年少でその錬金術師の資格を得た天才少年だった。
《修正するなら》→ 鋼の錬金術師、第一話を読みましょう。

【ダメな例② 冒頭から戦闘シーン】
主人公「女の子? それにしたって、こんな夜に出歩くなんて。魔族が襲って来るかもしれないのに」
主人公「まったく。フラグのつもりはなかったのに」
主人公「メンドウだけどしかたない。この”~くれない~”の力、見せてやる!」
《修正するなら》→ このシーンの前に、「夜は危険」+「女の子は命がけで薬を届けている」がわかるシーンを入れる。

 ②冒頭で「困難 or 障害」を描く【50~80%】

 これができていれば相当読みやすいのです。最後まで読んでもらえる可能性がかなり高いです。できる人は手練れですね。間違いない。
 読み手としても、困難や障害がわかっているので、各シーンがラストに向かってどう影響するのか、期待して読めます。
 例①:敵を倒したいのに攻撃力が金魚以下
 例②:好きを伝えたいのに、異世界語が分からない
 例③:爆弾が爆発するまであと30分(時間がない)
 例④:弾は一発。敵は二体。

 オマケ:実例『これ描いて死ね』

 毎巻心に刺さりすぎて泣いている『これ描いて死ね』。マンガ大賞2023の大賞受賞をはじめ、数々の賞を受賞したマンガです。そんな『これ描いて死ね』ですが、第一話では、冒頭で①と②を明示しています。
 ①について。見開き右のページで「マンガ(が好きな女の子)のマンガ」であることを見せています。
 ②について。見開き左のページで、第1話の障害は「担任が大好きなマンガを否定してくること」です。なんならマンガを全否定する勢いです。
 この二つ。特に②がしっかり効いているからこそ、えげつないラストに繋がっていきます。

 前半はここまで。

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