札幌地下鉄延伸の妄想③~東豊線~

札幌市の地下鉄は、清田区を除く区に広がっている。
地下鉄を清田区まで延伸して欲しいという声や、宮の沢より先まで延伸して欲しいという声もあるようで、札幌市における地下鉄は重要な公共交通機関と言える。

そこで、既に考えている方々も多く、陳腐な発想になってしまうが、もし今の路線からの延伸を行うとどうなるか、採算を度外視した上で自分なりに考えてみたいと思う。
なお、市外までの延伸は場合によっては考慮する。

今回は、当初の計画等を踏まえながら、東豊線の延伸を考えていく。




当初の計画

当初の計画は、下記のように表記されている。
具体的な場所までは記載されていないが東19丁目は元町周辺、市電西線系統は山鼻地区である。

3号線・補助系統線(東19丁目―テレビ塔―市電西線系統)

北海道建設新聞社 "第13回「五輪を支えた都市施設〈地下鉄(高速軌道)①〉」"より

現路線は、当初の計画と乖離しており、通るルートは東15丁目屯田通となり、山鼻ではなく月寒方面へ伸びている。
また、北野(清田区)への延伸が計画に組み込まれていたが、それも未達成のままである。


清田区への延伸

清田区への延伸を求めるため、昭和56年に発足された期成会が存在する。
彼らによれば、北野・清田区役所までの延伸のみならず、里塚方面までの延伸を希望しているようだ。

最終的な路線要望は、あくまで里塚とする。

地下鉄東豊線建設促進期成会連合会 "地下鉄清田延伸計画の経緯" より

↓期成会のホームページ
https://kiyota-chikatetsu.com/

期成会は何度も要望書を送っているようだが、市側は採算が合わないとして延伸を見送っている。


丘珠空港までの延伸

上記と違い、期成会があるわけではないが、今後丘珠空港の滑走路が1800mへ(従来は1500m)延長するとのことで、そこに接続できないかと考える人もいるようだ。

延長したからといって、必ずしも利用客等が増えるわけではないにせよ、延伸する場合はこの点も考慮する必要がある。

また、丘珠空港のターミナル自体が狭く、延長した際に拡張するのか、または移転するのかも考える必要が出てくるだろう。


新道東駅から延伸(丘珠空港接続)

栄町駅からの丘珠空港までのルートを考えたが、先へ進もうとすると伏古方面へ行くことになる等、どうやっても無茶なルートになってしまう。
そこで、ひとつ前の新道東駅から丘珠空港、ひいてはその先へ進むルートを考える。


通るルート

ルートとしては以下の通り。

青線部分が、延伸路線となる(Mapionの「キョリ測」を使用)

【丘珠空港→東15丁目屯田通→東8丁目篠路通】を通り、篠路駅を終点とする。

篠路駅ではなく、丘珠空港を終点にしても問題はないだろう。
また、栄町駅から西進して麻生駅への接続や、屯田地区への延伸も考えられそうなルートとなる。


各駅の詳細

■丘珠空港
 距離:約1.3km
 周辺施設:つどーむなど

栄町駅
 距離:約1.3km
 周辺施設:イオン 札幌栄町店など

■北49条東15丁目
 距離:約1km
 周辺施設:ホクレンショップ Food Farm 49条店など

■太平7条4丁目
 距離:約1.4km
 周辺施設:太平ゴルフセンター(跡地)など

篠路1条4丁目
 距離:約1km
 周辺施設:キャッツアイ 篠路店など

篠路駅
 距離:約1km
 周辺施設:篠路まちづくりセンターなど

総距離は約7kmとなる。
栄町からの接続よりはましだが、この場合でもやや無茶なルートになると思われる。


環状通東駅からルート変更(丘珠空港接続)

現行ルートでは丘珠空港への接続は難しい為、いっそのこと環状通東駅からやりなおし、延伸させたルートを考える。


通るルート

ルートとしては以下の通り。

青線部分が、延伸路線となる(Mapionの「キョリ測」を使用)

【苗穂丘珠通→丘珠空港通】を通り、栄町駅を終点とする。

栄町駅を終点としているが、丘珠空港を終点としても問題はないだろう。
この苗穂丘珠通を通るルートは、構想としてあったが不採用となってしまったものでもある。

また、この先は上記と同様に分岐可能な為、さらに延伸するならばふさわしい場所を終点としておきたい。


各駅の詳細

できる限り、交差点付近になるように、また駅間距離が2kmを超えないように選定した。

■北20条東19丁目
 距離:約1.3km
 周辺施設:元町泌尿器科など

■北24条東19丁目
 距離:約0.7km
 周辺施設:西友 元町北二十四条店など

■北37条東26丁目
 距離:約1.2km
 周辺施設:国土交通省航空局 札幌航空交通管制部など

■丘珠空港
 距離:約0.9km
 周辺施設:つどーむなど

栄町駅
 距離:約1.3km
 周辺施設:イオン 札幌栄町店など

総距離は約5.3kmとなる。


福住駅から延伸(里塚ルート)

福住駅から、期成会の要望通り里塚まで伸ばした場合のルートを考える。


通るルート

ルートとしては以下の通り。

青線部分が、延伸路線となる(Mapionの「キョリ測」を使用)

【国道36号線】を通り、コストコ周辺を終点とする。

期成会では里塚まで、および6駅分の記載があった為、(1駅分多くなってしまったが)おそらくこのようなものを想定していると思われる。

清田区役所から分岐し、平岡方面への延伸も考えられそうだが、里塚まで伸ばして欲しいと考えている期成会側は納得してはくれないだろう。

このルートの場合は、これ以上の延伸は不可であると考える。


各駅の詳細

できる限り、交差点付近になるように、また駅間距離が2kmを超えないように選定した。

■月寒東1条15丁目
 距離:約0.7km
 周辺施設:札幌ドームなど

■月寒東1条19丁目
 距離:約1.2km
 周辺施設:湯けむりの丘 つきさむ温泉など

■北野1条2丁目
 距離:約1.1km
 周辺施設:ヤマダデンキ 清田店など

■清田1条4丁目
 距離:約1.2km
 周辺施設:清田区役所など

平岡1条5丁目
 距離:約1.1km
 周辺施設:清田区体育館など

■里塚1条4丁目
 距離:約1.1km
 周辺施設:つどーむなど

里塚2条6丁目
 距離:約0.8km
 周辺施設:コストコホールセール 札幌倉庫店など

総距離は約7.2kmとなる。


延伸の際に考えるべきこと

仮に、このような妄想ではなく本当に延伸への機運が高まったとしても、

  • ルートをどうすべきか

  • 利用客の増加は見込めるか

  • 市や交通局の財政状態および経営成績は、新駅を建設できるレベルで良好か

  • 建設費等の財源はどうするか

  • 継続して利益が見込めるか(採算性があるか)

等の問題をクリアする必要がある。
この他、人口流出・少子高齢化社会等の社会的事情も考慮する必要があるので、延伸すべきかは慎重に決めなければならない。

さらに、この問題をクリアしたとしても周辺が賑わうかといえば、必ずしもそうではない。
コンパクトシティが叫ばれている中で、本当にその開発は必要なのかという意見もあるだろう。


東豊線特有の問題

延伸するならば、やはり清田方面が中心となり、その後に丘珠空港方面、といったところだろうか。

清田方面へ延伸すれば、期成会の悲願は成就されると同時に、公共交通機関があることによる経済波及効果や、交通環境の改善には繋がるだろうと考えている。
ただし、延伸できたとしても清田区役所周辺までになると思われる。

それに加え、札幌ドームへの駅の建設は慎重に検討しなければならない。
日本ハムファイターズというコンテンツを手放してしまった今、とてもではないが他チームでそれを補えるほどの集客力はないと言える。
場合によっては、地下鉄駅を造らないことも選択肢に入るだろう。

反対に、丘珠空港側への延伸は、栄町駅や新道東駅から無理に接続させるよりも、シャトルバス等で済ませる方が安上がりで済む。
どうしても接続させたいならば、環状通東駅からのルートを刷新するぐらいしなければならないだろう。

当然、丘珠空港の延伸による利用客の増加が見込みより少ないのならば、延伸の凍結もありうる。

※それ以前に、東豊線そのものが赤字なので、そこの解消が先決となるのかもしれないが……。


実現可能性

豪雪地帯である札幌にとって、気候の影響を受けない地下鉄が欲しいと思う方々もいるだろう。

事実、東豊線には手稲区への地下鉄延伸を求める期成会が発足されており、歴史も長い。
要望書も市長へ送り続けており、サイト内で閲覧が可能だ。

期成会側は、清田区に地下鉄を建設することにより、地域活性化や警察署といった公共施設の建設にも繋がるのではないか、と考えているようだ。

清田区は分区して20年以上経ちますが、地下鉄は勿論、バスターミナル、警察署、ホテルなど何一つ都市機能の整備が進んでいません。その最大の要因は、市の計画にも清田区の計画にもあった地下鉄がないからです。

地下鉄東豊線建設促進期成会連合会 "令和2年度 札幌市長への要望書" より

しかし、延伸の際の理由というのが「雪道で交通が麻痺してしまうから」「計画に組み込まれていたから」といったようなもので、正直なところ今一つ決定力に欠けているように思える。

理由を付けるならば、「SDGs未来都市に選ばれているので、環境に優しい公共交通機関を推進するのはどうか」「バスの運転手不足や地理的要因を考慮した上で、脱クルマ社会を目指す為、札幌市に最も適したメインの公共交通機関を推し進めるのはどうか」といったような、札幌市全体の問題提起をした上で、それとなく清田区への地下鉄延伸を誘導させるようなものであれば、少しは納得がいくものなのではないかと考えている。

当然ながら、札幌市側も検証をしたうえで延伸すべきか回答を出すようだが、第4次札幌市長期総合計画(2000年)の時点で、黒字化は困難であるとしている。
路線全体では黒字になってこそいるものの、東豊線単体では赤字が続いていることもネックといえる。

以上を勘案すると、東豊線の延伸は実現性はあまり無いが、赤字体質を改善し、延伸する資金を確保出来る見込みがあれば、東西線より希望はあるかもしれないといったところだろう。


次回は、当初の計画等を踏まえながら、案として挙げられていたが実現することのなかった、三号線について考えてみたいと思う。

参考資料↓


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