見出し画像

メ酒'23所感 #7(妹尾さん来たル! koti brewery at ノミヤマ酒販 他3本)


・koti brewery 妹尾さん来たル! at ノミヤマ酒販
-koti brewery(岡山県備前市)

koti brewery Naked Ale

福岡県古賀市の素晴らしい酒屋 ノミヤマ酒販。自分の良いと思った商品を厳選して置き、生産者産との距離が非常に近いのが魅力だ。天穏・群馬泉・白隠政宗の染み渡る銘酒に始まり、森嶋・よこやま・山の壽、土壌違い・原酒で焼酎の可能性を切り開く白石酒造・天狗櫻など、実力派の蔵が揃う。無論ビールにも力を入れており、その中でも一際買い求める方が多いのが、岡山県備前市のkoti breweryだ。

Naked Ale 樽生をサーブする妹尾さん

11/11(土) koti brewery の妹尾さんを招き、ノミヤマ酒販角打ちにてNaked Aleの樽生が提供された。国内では岡山県内一店舗のみの提供という激レアの生ビールであった。
妹尾さんはkoti breweryを1人で経営しているが、従業員の少ない醸造所はその個性が往々にして色濃く作品に出るものだが、koti breweryはそうではない。これは野生酵母由来の自然な発酵に任せているというのも一因だが、何より妹尾さんの人柄がそうさせるものであろう。
朴訥とした人柄でやわらかい雰囲気を纏う妹尾さん。あくまで発酵の面倒を見てやっているだけ、というような優しくも厳しい愛が液体に溶け込んでいる。
Naked Aleという名前が相応しい、発酵の変遷やビールという液体そのもの、全てが丸裸でありのままの味わいをしている。この銘柄一本でやっているというストロングな妹尾さんのスタイルもなぜか強気に聞こえない。ロットごとに表情を変える、風土を醸したようなビールはそれだけで飲み手に数多の景色を見せるのだ。

・Specialty COFFEE LAGER
-ひでじビール(宮崎県延岡市)

11/8

2023年11月の限定蔵出し、宮崎のロースター&スペシャリティコーヒーショップ ROSA COFFEEとのコラボビール。
コーヒには疎く、日常からほとんど飲まない私だがこの味わいには驚いた。
まずラガーという点。コーヒー×ビールの場合、スタイルとしてはスタウトが多いイメージだが、今作はラガー。外観も少し赤みがかった濃い金色。
次に特筆すべきは香でりあろう。酸味の目立つ香ばしく華やかなコーヒーの香り、外観からは想像できない強さである。味わいもラガーの苦みとのど越しとコーヒー由来の軽やかな苦みと調和しており素晴らしい味わいである。
神々しい金色の液体からこれほどまでに焙煎と豆の良さがでるとは驚きである。コーヒー×クラフトビールの一つの正解なのではないであろうか

参考
今月の蔵出し Specialty COFFEE LAGER – 宮崎ひでじビール (hideji-beer.jp)

・新政 エクリュ 2017(2023年モロッコ地震復興支援酒)
-新政酒造(秋田県秋田市)

11/3

23年9月に起こったモロッコの大地震。復興支援酒として販売されたエクリュ 2017年は瓶も現在の暁鐘になる前のブルゴーニュ型である。
ほんのりと黄色みがかった外観に、穏やかなガス感。柑橘とアルコールの香りを穏やかだが確かに感じる。閉じている液体から漏れ出る感じ。飲み口は柔らかく、甘い。個人的に6号酵母の特徴であると考えている、ウリっぽい味わい。陳皮やミカンの皮、梨を連想させる甘味と酸味が拮抗し調和が取れているような状態だ。味わいの奥の方に熟成感があり、飲み口は比較的軽いが、喉を通る頃には重たいお酒として認識している。
6年寝かせたエクリュの味わいの変遷を辿るには貴重な資料であるが、飲むためのお酒としては難しい。確立している酒が全くもって自分の感性に刺さらない、親しみを感じないお酒だ。

・王祿 丈径 ☆☆☆☆☆(R3BY)
-王祿酒造(島根県松江市)

10/31

商品の管理、特約店の選定、オンライン販売の禁止や買われたお客さんへの説明義務など厳しい制約が設けられている王祿。そのなぜそこまで厳しい制約を設け販路を限定するのかずっと疑問であったが、その理由は飲めば分かった。
王祿酒造が設ける酒のレギュレーションに星マークの数があるが、奇数が生酒、偶数が一回火入れ、そして星の数に応じて1タンクごとにとれる数量が少なくなっていく。☆4なら生詰原酒、☆5なら直汲み中取りといった具合だ。
今作は杜氏 石原丈径の名を冠した☆5のモデル。330本限定の希少な中取り生だ。香りは華やかさが広がり厚みのあるフルーティーさ、そしてもろみの香り。濃厚で味の密度を感じる。ほんのりとガス感が漂う。
ド直球なうま味をガスや香り酸味などがうまくマスキングし、口の中でそれがほどけ、含むほどにうま味がとろけでる。キンキンに冷やしていても、ひやで飲んだ時のように身体に染み渡るうま味だ。噛めば噛むほどにうま味と果実味が顔をのぞかせ、迸る。ジューシーやフレッシュなどといった言葉は丈径にこそ使うべきだ。生きている酒だと感じたのは初めての感覚である。
渾然一体となった液体が、生命の迸りを香りで、味わいで、喉元を過ぎたその余韻で表現する。
まさに、''生きている''そんな酒だ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?