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KFCのポテトの着ぐるみの中で僕の見ている夢

シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろいろな人の話を聞くプロジェクトМесто47。今回は途中下車した街で出会った青年の話です。KFCのポテトの着ぐるみを来て街中でチラシを配る大学生のオレグは、幼いころから家計を支えるために働いてきました。大学生になった今もバイトに追われ、大学の授業を受けるのもままならない状態です。そんな彼にはかなえたい夢がありました。

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オレグ、18歳、エカテリンブルク

出身はトムスクのアレクサンドル村。家は貧乏子だくさんで12の時から働いてる。早く一人前にならないといけなかった。子供時代なんてなかったよ。

鋳鉄の浴槽を運ぶ仕事をして背中を痛めたのは12歳の時。13歳になって教会で働き始めて、芝刈りとか溶け落ちたろうそくカスの片付けとかしてたな。司祭からもらった賃金は雀の涙さ。14歳の時に身分証を偽造して弟と一緒に道路工事の会社に採用してもらった。アスファルトをひたすら運んだよ。

エカテリンブルクに来たのは3年前。ここの鉱山大学で勉強するためさ。奨学金は月740ルーブル(約1000円)で多い方なんだけど、それでも全然足りない。学生寮の費用すら賄えないんだからさ、自然と働かざるを得なくなる。清掃員として月7000ルーブル稼いでて、他にも不動産仲介とか、KFCのキッチンでも働いてる。あんまりおおっぴらには話せない仕事も一回やって、10万ルーブル稼いだこともあるよ。だけど仲間の一人が裏切って金と一緒にとんずらしたんだ。そしたら高級車に乗った上の人間たちに森に拉致られた。金はどこかって聞かれたんだけど、俺たちは本当に知らなかったから何も言えなかった。その後その仕事からは足を洗ったよ。将来は家族を持ちたいんだ。それを考えるとリスクが高すぎると思った。

大学の教授は言うんだよ。なんで君たちはバイトばかりに精を出して学業をおろそかにするんだって。答えは簡単で、そうしないと生きていけないからさ。両親から少し助けてもらってる。でも食っていくには足らない。

生活は厳しいけど、同年代のやつらに比べたらだいぶまともだと思ってる。今時の18のやつが考えてることなんて、酒飲んでセックスするくらいだろ。たむろって、パーティーして、乱交して。はっきり言って情けねえよな。やつらは自分の人生についてもうちょっと考えた方がいいと思うよ。

今は採鉱電気工学を勉強してる。鉱山の採掘で使う機械のメンテナンスに関すること。正直興味ないんだけど、母親が男らしい職業に就いてほしいって。本当はミュージシャンになりたいんだ。音楽学校を出てるから、バラライカ、ギター、管楽器全般、ピアノもいけるよ。ロシア全土をツアーで回ったこともあるんだ。バイオリンだって弾ける。ミュージシャンじゃなかったらパティシエもいいな。子供のころからお菓子作りが好きだったんだ。でももう手遅れだな。3年生になったし最後まで勉強しないと。

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今はラップをやってるんだ。ラップって歌詞が非道徳的みたいなことよく言われるけど、一つ一つのラインをしっかり読み込んでいくと深いものあるって分かるよ。自分は今までの人生とか、その中で出会った人間について歌ってる。自分はいろんな視点で世界を見る広い視野を持ってるんだ。金持ちから貧乏人まで。今アルバム作ってるんだ。ビデオクリップ作って、いかしたやつに仕上げたい。今はファストフードの時代だろ。無名のやつが底辺から成りあがるのは簡単なことじゃない。もしこのアルバムがダメだったら兵役に行くよ。炭鉱の採掘場でキンタマまで水につかってなんて俺の趣味じゃねえよ。

このポテトの着ぐるみの反応はいろいろだな。好意的に受け止めてハグしてくるようなやつらもいるし。昨日なんか女の子がナイキのブレスレットくれたんだ。中には怖がるやつらもいる。だいたいのやつらはしけた顔して通り過ぎるだけさ。ほとんどこっちのことなんかシカトだよ。まあ視界に入ったら完全に無視するのは難しいはずだけどな。今は実家に帰らないといけないから金が要るんだ。あんまり働きたくはないんだけど。

後悔してることは何もないよ。この国で生活していくのは簡単じゃない。人生が学校みたいなもんだな。誰も教えてくれないことを俺に教えてくれるんだからさ。

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