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『ニチアサオタク悪役転生』カクヨム原作についての意見や感想や推測のまとめ


https://note.com/meta13c/n/n7575b6c0826b

この記事の注意点などを記しました。

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注意

 今回は、『ニチアサ好きのオタクが悪役生徒に転生した結果、破滅フラグが崩壊していく件について』のカクヨムの原作の重要な展開を明かします。漫画版しか読んでいない方はご注意ください。

 また、過激な仮面ライダーシリーズの『真・仮面ライダー序章』、『仮面ライダー THE NEXT』、『仮面ライダーアマゾンズ』、『シン・仮面ライダー』にも言及します。


 これらの重要な展開を明かします。

特撮テレビドラマ

『仮面ライダー龍騎』
『ウルトラマン』
『ウルトラマンネクサス』
『ウルトラマンメビウス』
『ウルトラマンR/B』
『ウルトラマンタイガ』
『ウルトラマンZ』
『ウルトラマントリガー』
『ウルトラマンデッカー』

特撮オリジナルビデオ

『真・仮面ライダー序章』

テレビドラマ

『相棒』

漫画

『銀魂』
『聖女の魔力は万能です』
『喰いタン』
『ドラゴンボール』
『転生したらヤムチャだった件』
『真の安らぎはこの世になく シン・仮面ライダー』
『左ききのエレン』(少年ジャンププラス)

テレビアニメ

『ドラゴンボール超』

小説

『ニチアサ好きのオタクが悪役生徒に転生した結果、破滅フラグが崩壊していく件について』
『変身障害』(藤崎慎吾)
『二重螺旋の悪魔』
『ソリトンの悪魔』
『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』

漫画

『SSSS.GRIDMAN』
『ニチアサ好きのオタクが悪役生徒に転生した結果、破滅フラグが崩壊していく件について』
『神蛇』(田口清隆)

特撮映画

『仮面ライダー×スーパー戦隊 超スーパーヒーロー大戦』
『ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』
『仮面ライダー THE FIRST』
『仮面ライダー THE NEXT』
『シン・仮面ライダー』
『シン・ウルトラマン』

はじめに

 『ニチアサ好きのオタクが悪役生徒に転生した結果、破滅フラグが崩壊していく件について』(以下『ニチアサオタク悪役転生』)は、「ニチアサ」、主に仮面ライダーシリーズらしきヒーロー作品を知る高校生の呉井雄悟が、ファンタジーの恋愛ゲーム世界の「悪役」であり、何故か読みが同姓同名のユーゴ・クレイに転生して、旧型魔道具の鎧で変身する能力を手に入れて、「主人公」として転生した何人かの人間がゲーム世界を動かそうとするのを、知らずに妨害していくようです。
 嫌われる「悪役」に転生し、「主人公」の1人のゼノンにより強い魔道具を奪われ家から勘当されつつも、「ヒーロー」に憧れるユーゴは、自分を嫌う人間達にも誠実にふるまい、少しずつ信頼や協力関係を得て行きます。
 一方「主人公」であるはずのゼノン達は、ゲーム世界の未来を知りながら放置したり利用したりして、その私利私欲も含めた行動が、ユーゴ達にかかわることで徐々に批判されて行き、「主人公補正」などで持っていた信頼や、上がるはずの経験値なども逃して行きます。

 「主人公と悪役の逆転」として、非常に斬新なものを感じると共に、「悪役」でありつつ善意で行動するユーゴに私は共感を持ちます。
 そこから、幾つかの感想や意見や推測をまとめます。

「主人公補正」について

https://kakuyomu.jp/works/16817330651963156715/episodes/16817330652219629924

2024年2月27日閲覧

 ゼノンは、ゲームの「主人公」として、「補正」によってユーゴを根拠なくおとしめようとしたのが失敗しています。
 しかしそれは、冷静になりますと、様々な物語で、主人公の推測は勇み足や深読みでも当たり、悪役の推測は論理不足を突かれて失敗する傾向を客観視したとも考えられます。
 たとえば『喰いタン』原作では、尺の短い漫画であるためか、時折主人公の「推理」が、「嘘をついたから犯人だ」と断定するなど、駆け足で解決している、推測が強引と感じるときもありました。
 また、『相棒』では、杉下右京がシーズン9では「完全犯罪などありません」と言ったものの、シーズン15では「ないことの証明は不可能に近い」と言い、青木年男の犯罪を証明出来なかった様子がありました。
 『ウルトラマンネクサス』では、ウルトラシリーズの中で比較的現実寄りの世界観で、人間を捕食して増殖するスペースビーストという怪物の存在を知ったジャーナリストの根来が、その記事と同時に流れた河童や首長竜の記事や、オカルト研究会のような人間の話す小人の話を「ふざけるな」と信じないときがありました。しかし、他のウルトラシリーズならば、河童や首長竜はいてもおかしくありません。ビーストの存在を知っても、「河童や首長竜はいるはずがない」というのは、主人公寄りのジャーナリストであるために不完全な推測が勢いで肯定されているとも取れます。
 主人公の断言などが、推測として不完全でも主人公補正で肯定される傾向が、「推理」などを扱う物語には時折あり、それを『ニチアサオタク悪役転生』では客観視したと言えます。
 ゲームの中身を知らない目線のメルトからも、知る読者からも、ゼノンの「推測」が間違っていると言えるのが独自の要素を持ちます。

「ゲームじゃない」という謎

https://kakuyomu.jp/works/16817330651963156715/episodes/16817330660437586769

2024年2月27日閲覧

 また、『ニチアサオタク悪役転生』では、本来そのゲームにいないらしい「黒幕」が、ユーゴを「ヒーロー」として評価して、「主人公」の転生者を「クズ」だと批判して失敗を笑うのですが、「そもそもこれはゲームじゃない」と意味深な発言をしています。

『シン・仮面ライダー』などの「過激な」仮面ライダーシリーズとの関係

https://kakuyomu.jp/works/16817330651963156715/episodes/16817330661241659829

2024年2月27日閲覧

 なお、「ニチアサ」を知るユーゴがいつの時点からやって来たのか、「ニチアサ」をどこの作品の時点まで知っているのか気になりますが、『シン・仮面ライダー』の「用意周到」という表現を知っているようでした。
 また、それに「ルリ子さ...」と言っており、「用意周到」は公開前に宣伝されていたものの、『シン・仮面ライダー』の本編公開時点では、漫画版を含めても、ルリ子を「ルリ子さん」と呼ぶのは本編の本郷だけだったはずなので、少なくとも本編を見ているはずです。
 なお、仮面ライダーシリーズには過激なので年齢指定のある作品もありますが、ユーゴは『仮面ライダーアマゾンズ』と『真・仮面ライダー序章』は見ているようです。後者の戦法を「フィーに見せられない」と判断しています。
 しかし、『シン・仮面ライダー』公開後に高校生である以上、それ以前の時系列で、年齢の規則からみられないはずの仮面ライダーシリーズもありますが、さすがにそのパロディはないようです。
 『アマゾンズ』は観ていないのですが、他に『仮面ライダー THE NEXT』や『シン・仮面ライダー』など、おそらく仮面ライダーシリーズは、「かつてリメイク元を見ていた世代が大人になった」のを想定して、リメイク作品を「大人向け」、「子供に見せにくい過激な展開」にしているのでしょう。
 『ニチアサオタク悪役転生』自体も、「仮面ライダーファンが現実を知り成長した」のを想定したものかもしれません。
 同じ媒体の『神蛇』も、そう考えられますし。

「英雄ってのはなろうとした瞬間に失格なのよ」の発言の是非

https://kakuyomu.jp/works/16817330651963156715/episodes/16817330652466596935

2024年2月27日閲覧

 『ニチアサオタク悪役転生』で、「英雄」になろうとする人間に、「悪役」のユーゴは、「英雄ってのは、なろうとした瞬間に失格」と言っています。
 これは『仮面ライダー龍騎』の仮面ライダーゾルダ=北岡の台詞らしく、『超スーパーヒーロー大戦』でもそう話しています。
 しかし、これは英雄になろうとする願望で支離滅裂な行動をする仮面ライダータイガ=東條を動揺させてその場から離れるための嫌味らしく、あまり深く考えて一般化しない方が良い気もします。そのあと、東條は「ライダーなんて、最低な奴ばっかりで、気にすることなかったかも」と言っています。
 『超スーパーヒーロー大戦』でゲームの中の北岡がそう話したときは、「仮面戦隊ゴライダー」になること、戦いの過程で必要な能力を手に入れるのを断りそうなときなのですが、結局北岡はその「英雄」、ゴライダーになっていますし。
 
 また、北岡は嫌味な言動がしばしばあったようですが、たとえば『龍騎』でライダー同士の争いを止めたい仮面ライダー龍騎=城戸に、そのような言動まではしたか分かりません。
 少なくとも、「争いを絶対に止められない条件があるのを教えてやろうか?争いってのはさ、やめろって言った瞬間に争いなのよ。お前、いきなりアウトってわけ」と北岡が城戸に言ったことはないようです。
 仮に北岡がそのような台詞を言っていれば、物語の展開や議題を大きく揺るがしたでしょうし、『ニチアサオタク悪役転生』のユーゴにもこたえるところがあったかもしれません。ユーゴも城戸のように魔物などと戦うだけでなく、人間同士の争いを止めたい感情はみられましたから。
 そもそも、「英雄になろうとした時点で失格」と言いつつ、「ヒーロー」に憧れるユーゴの論理も難しく、『ウルトラマンネクサス』にこの両者を使うサブタイトルもありましたが、「英雄」と「ヒーロー」の区別も判定の難しいでしょう。

 

『ドラゴンボール』やカオス理論との関係

2024年2月27日閲覧

 以前から私は、『ドラゴンボール』のような、わずかな変化で展開が大きくプラスにもマイナスにも動く物語と、数学のカオス理論との関係に注目していました。
 『ニチアサオタク悪役転生』では、元々のゲームにあった、「悪役のユーゴがメインヒロインのクレアの唇を奪う」展開を、「主人公」の1人のゼノンが阻止して、「より良い展開」にするつもりだったのですが、ユーゴが武器をゼノンに奪われたことで、本来主人公の仲間になり得るものの「二軍落ちする」はずのマルコスがユーゴと戦い、新しい武器でユーゴが勝つことになっています。
 これをゼノンは「バグのようなもの」と表現していますが、コンピュータープログラムのように複雑な展開で、わずかな変化が大きな影響をもたらすのは、「バグのような」とも確かに言えますし、カオス理論も連想します。
 『ドラゴンボール』原作では、主人公の孫悟空がいない場合、ドラゴンボールが悪用されてピラフやレッドリボン軍が地球を征服する可能性がありましたが、ピッコロが目覚めない可能性もあり、ラディッツが地球に来ないので、フリーザ軍が地球やナメック星に危機をもたらさない代わりに壊滅せずに他の星で暴れ続け、地球でフリーザより強い人造人間が現れず、地球に強い超サイヤ人が現れないので、そのエネルギーを吸収するはずの魔人ブウが復活しない可能性もありました。
 このように、わずかな影響が、マイナスがプラス、プラスがマイナスになったりするのを繰り返し、「あのときこうしておけば良かった」とも言い切れない複雑さがあります。
 カオス理論で、a(n+1)=ba(n)(1-a(n))という「非線形」という単純な数式で、bの値次第では、初期値a(1)をわずかに動かすだけで誤差が何倍にも広がったり縮んだりして、予測がきわめて難しくなります。
 『ドラゴンボール』や『ニチアサオタク悪役転生』も、わずかなマイナスがプラスになったりまたマイナスになったりします。
 また、誰にとってのマイナスかプラスかも、大局的に考えなければならないときがあります。
 『ドラゴンボール超』アニメ版の天使のように、大局的に「過去を変えることは地球や人命のためにもしてはいけない」という視点も、『ニチアサオタク悪役転生』にはいずれ生まれるかもしれません。

 原作では、マルコスも徐々にまともな性格になり、ユーゴに協力するだけでなく、むしろ「主人公」達より強くなっていると取れます。
 このようにして、「主人公」が自分にとって「良い展開」にするつもりの変化を、周りにも自分にも予測の難しい変化をもたらすようです。

「未来を知る」「同じ状況ならどうする」か

 ただ、「主人公」達を擁護しますと、ゲーム世界に転生したつもりの「主人公」達も、未来を知っている以上、知っている災いを放置したり利用したりしないと、他の災いを防いだり生き延びたり出来ないところがあります。
 『転生したらヤムチャだった件』では、『ドラゴンボール』の世界のヤムチャに転生したファンが、途中で一時的に命を落とすのを防ぐために強くなるのですが、その結果ピッコロなどの他のキャラクターの死を防いでかえってあの世で強くなる機会を失わせたり、逆にナメック星の最長老などの死は放置したりした可能性があります。
 最長老は自分の未来を知りながら利用するヤムチャの内面を知りつつ怒りませんでしたが、元々寿命通りに命を落とすのでやむを得ないとも取れました。しかしベジータに殺されて生き返れなかったナメック星人について、それを事前に知るヤムチャが特別な対応をしたかは分かりませんでした。
 転生者として、起きると分かっている災いを放置したり利用したりするのは、かなり倫理的に悩むところです。ヤムチャは別の転生者に「生き延びるためならまだ良いが、展開を変えるのはやり過ぎだろう」と言っています。
 その意味で、『ニチアサオタク悪役転生』の「主人公」達がゲームの展開を利用するのは、知っている以上そうせざるを得ないところもあり、私利私欲のせいだけには出来ません。
 『ドラゴンボール』で、転生したわけではないものの、人造人間が現れる未来を知ったクリリンが、「今まで敵が現れても、別の敵に対抗するために味方になった」と話し、「共通の敵がいないとピッコロはともかくベジータが何をするか分からない」と、共通の敵の出現を放置していました。
 「途中まで良い話だったのに」と言われた通り、「災い転じて福となす」という過去の事実を述べるまでは「良い話」でも、未来にどうすべきか、災いを放置すべきかという意見の問題になると、かなり悩ましいでしょう。クリリンのような「起きると分かっている災いを福に転じるために放置する」のは、『ニチアサオタク悪役転生』の「主人公」達もしないわけには行かないかもしれません。
 『シン・ウルトラマン』のウルトラマンに変身する神永にも似たところがあります。『ウルトラマン』のハヤタが「ザラブ星人に捕まり、変身アイテムを忘れ、油断したザラブ星人がにせウルトラマンになって暴れ、仲間が知らずに届けてくれたので本物のウルトラマンに変身した」という何重かの「災い転じて福となす」ところがあったのですが、『シン・ウルトラマン』の神永は、「ザラブにあえて捕まり、仲間にアイテムを預け、わざと暴れさせたあとに仲間に届けてもらう」作戦を立てたようです。正体を隠していたことを仲間の浅見に「君が同じ状況ならどうする」と言っていますが、わざと捕まりザラブを暴れさせてその悪意を証明する作戦についても似たようなことを言いたいかもしれません。
 その意味で、今後仮に、「主人公」と立場が逆転したような「悪役」の「転生者」のユーゴも、「主人公」のようにゲームの未来を知ってしまえば、「同じ状況」になれば、「災いを放置すべきか、利用すべきか」という問題に直面するかもしれません。
  

メタレベルからの客観視

 「災い転じて福となす」物語が盛り上がって良い評価をされても、それを演出しているのでは一気に「悪い話」になってしまうというのは、『ウルトラマンR/B』の、自作自演で戦うウルトラマンオーブダーク=チェレーザにも通じます。
 しかし、そのような物語で、「結局は視聴者や読者もそれを望んでいるのだろう?」というメタレベルの反論の余地もあると、かなりこじれます。『R/B』でも、怪獣が出るときに劇中のテレビ番組への出演を重視する発言をする人間の変身するウルトラマンが「お前、テレビ作るのがどれだけ大変だと思っているんだ?」と言い、「それどころじゃない」という反論が、『R/B』自体がテレビ番組なので難しくなる複雑さがありました。
 『SSSS.GRIDMAN』漫画版でも、怪獣による戦いを起こす人物に怒るウルトラシリーズ好きが、「自分も喜んでいた」と反省していますし。
 未来を知る、物語の世界に転生するのもそれに近いと言えます。
 特に、「黒幕」が読者に「君達もこいつの悲惨な結末を知りたいだろう?」というように語りかけるのは、私には胸に迫るものがあります。

『シン・仮面ライダー』の「悪役同士の争い」との関係

 『シン・仮面ライダー』も『ニチアサオタク悪役転生』では言及されているようですが、『シン・仮面ライダー』の他の仮面ライダーシリーズと異なるものとして、「少数の幸福を目指す悪役が、悪役同士で争ってもおかしくない」ところがあります。それも『ニチアサオタク悪役転生』に通じます。
 『シン・仮面ライダー』では、人類の幸福のために、「もっとも絶望した少数の人間の幸福」を目指すAIの作り出したショッカーの組織が、少数の人間を強力なオーグメントという怪人に変えて、様々な暴力を容認します。
 しかし、人間を直接絞め殺すことを重視するクモオーグ、直接刺し殺すことを重視するらしいサソリオーグ、人間の数を自らのヴィルースで減らすことを重視するコウモリオーグ、人間全てを生きたまま操るのを重視するハチオーグ、人間全ての「魂」を「嘘のつけない世界」に連れて行きたいチョウオーグなど、それぞれの目的同士が衝突してもおかしくないぎりぎりの状況です。
 私は多くの特撮などで、ゲストの悪役が、世の中や社会の多数派や主人公ばかり責めて、他のゲストの悪役からみれば自分も「悪」になる可能性を想定しないことに最近疑問を感じていました。
 ウルトラシリーズで、人間と対立する怪獣や宇宙人を擁護するにしても、怪獣同士の争いや宇宙人同士の対立を想定せず、人間とそれを守るウルトラマンばかり悪役が責める傾向を、『ウルトラマンタイガ』や『ウルトラマンZ』や『ウルトラセブン』小説版『変身障害』などに感じていました。
 その意味で、『シン・仮面ライダー』は、多数派や社会を批判して攻撃する「少数」の人間が、それら同士で団結出来ず争ってもおかしくない、視野の狭さが示唆されています。
 『ニチアサオタク悪役転生』も、「主人公」が私利私欲でゲームを動かそうとするものの、「主人公」同士の競争もあるので、決して統一された巨悪ではないと言えます。
 また、カオス理論のように、『シン・仮面ライダー』では、主人公のバッタオーグ=仮面ライダーがいなければルリ子や緑川弘は不利だけれども、敵のオーグメント同士も争い不利になった可能性があり、「マイナスとプラスが頻繁に入れ替わる」ところがありました。むしろ本郷の仮面ライダーがオーグメントとの戦いを乗り越えて強くなり、次の災いに立ち向かう傾向もあります。
 「災い転じて福となす」からも、「災い」を起こす悪役同士の争いからも、『シン・仮面ライダー』は『ニチアサオタク悪役転生』にも通じそうです。
 また、『仮面ライダー』シリーズのかつてのリメイク作『仮面ライダー THE NEXT』は、凄惨な展開も多いものの、それらの災いにより、本郷とその高校の生徒の琴美が事件にかかわり、一文字の合流や風見志郎の協力により、最後の、「日本中の人間が改造される」大きな災いを防げたところがありました。『仮面ライダー THE FIRST』も、ヒロインなどの不幸により、多くの人間の改造を防いだのが近いと言えます。
 その意味で、『ニチアサオタク悪役転生』も、最後に大きな災いが待つとすれば、「主人公」の「災い転じて福となす」論理も、「主人公」同士の争いも、皮肉な意味で役に立ってしまうかもしれません。
 また、『シン・仮面ライダー』のオーグメントは多くが大量破壊兵器を持つため、「人を守りたい」本郷や協力者の「政府の男」などは、オーグメント同士を潰し合わせて減らすのは、どのような被害が出るか分からないと避けているかもしれません。
 その意味で、『ニチアサオタク悪役転生』も、「主人公」同士を潰し合わせるのは、世界全体からみても危険かもしれません。
 いずれ、「主人公」達が、「俺が上手く行かないのは、そもそもプレイヤーの主人公が何人もいるせいだ」と、ユーゴなどより相対的に弱くなった他の「主人公」の排除に動くかもしれません。

『神蛇』との関係

 
 ただ、『ニチアサオタク悪役転生』は、『神蛇』にもありますが、性的に過激なところもあるので、今後漫画版でどうなるか気になるところがあります。 
 

「悪役」と反転した「主人公」の「やり直し」

 また、「主人公」を私は擁護したところもありますが、「主人公」のうち、没落したと言えるゼノンは、自分が軽視した命について反省したり、ユーゴのように善行をしたい意思も芽生えたりしています。
 『ニチアサオタク悪役転生』は、単に「主人公」と「悪役」を反転させただけでなく、「転落した主人公にも立ち直る可能性がある」と救いを与えています。
 元々ゼノンは、ハーレム状態になろうとするのを、メインヒロインのクレアについて、「クレアには悪いけど」とある程度反省していたので、その伏線もあったと言えます。

「主人公」が「弱者男性」だとすれば

 また、本作の「主人公」になっているのは、ゲームを熱心にプレイしていたのが多い、一種の「ゲームオタク」のようです。
 しかし彼らは確かに私利私欲で動き、「モブキャラ」の命を何とも思わないことも多いけれども、元々現実世界で苦しんでいた可能性もあります。
 おそらく、いわゆる「弱者男性」の可能性があり、「ゲームぐらい楽しんで何が悪い」という主張をしたいのかもしれません。
 『銀魂』原作で、「ゲームと現実のパラメーターは反比例する」という主張もありましたが、それが『ニチアサオタク悪役転生』のゼノンのような「主人公」達の弱みと強みかもしれません。
 その「弱者男性」、「web小説を読む」ような人間、つまり読者の分身として、「こうなってはいけない」という反面教師として描いているのかもしれません。
 しかし、劇中の「主人公」として、転生後にある意味もっともひどいことをしたとも言えるエゴスは、元々「ブラック企業で勤めていたアラフォーのサラリーマン」だったらしく、転生前は他の「転生者」と比べても苦労していたらしいのですが、それすら「黒幕」は「努力不足」で片付けて破滅させています。
 「黒幕」はユーゴを「マイヒーロー」と呼び、動けないときにその命を狙ったエゴスへの怒りもあるようでしたが、転生前の苦労まで「努力不足」と言うのは酷ではないか、と考えます。
 「黒幕」にも、ユーゴを主人公として肯定するあまりに、それと対立する人間を過剰に否定する「主人公補正」が働いている傾向がみられます。
 少なくともユーゴの前身も「ニチアサオタク」で、周りに蔑まれるところもあったようでしたし、容姿にしても、転生した自分の顔を「人相悪いけれど、結構イケメン」と言っており、本人の主観とはいえ元々はユーゴ・クレイより魅力の落ちる顔だったかもしれません。その辺りについて、地の文では解説が見当たりません。
 何より、あくまで高校生の雄悟は、バイト経験や学費や生活費を稼ぐ努力の経験もあったか曖昧で、「ブラック企業でアラフォーのサラリーマン」の方が雄悟より「努力不足」というのは過剰な批判でしょう。
 いわゆる現代日本に多いと私も考える、「ゲームのパラメーターと反比例して現実では低い」、そしておそらく「弱者男性」の「主人公」達に、元々「努力不足だった」という断定は酷だと私は考えており、ゼノンの改心にその反論の鍵があるかもしれません。
 少なくともユーゴも、元々は「ニチアサオタク」だったのですから、一歩間違えれば「弱者男性」に転落していたかもしれません。
 ユーゴも、料理やドアの修理を出来ないことは認めています。

「ゲーム」、「仕事と趣味の一致」、「努力する悪役」

 また、「ゲーム」をしていた黒幕が世界を操作しているのに主人公が立ち向かうのは、『二重螺旋の悪魔』や『SSSS.GRIDMAN』や『ウルトラマンZ』を連想します。
 特に『二重螺旋の悪魔』の黒幕は、容姿や、一人称が名前と同じであることなど、「子供」のようなところも多く、「自分の間違いを認めるのに慣れていない」のであり、「悪趣味なサディスト」、「エゴイズムで命を操作する」とありました。それは『SSSS.GRIDMAN』の黒幕もそうでしょう。
 『二重螺旋の悪魔』では、主人公もそのゲームに乗せられそうになり、元々バイオテクノロジーで「努力」していた仕事がむしろ有害な失敗をもたらしたり周りに負荷をかけたりしていたことも反省しているため、「努力」しているからこその罪もありました。
 また、同じ梅原克文さんの『ソリトンの悪魔』では、「趣味と仕事が一致しているような人間は、仕事以外の話もせず、仕事の立場を守るためなら何をするか分からない」という指摘もありました。「努力家」だからこその悪だとも言えます。そして、その「趣味のような仕事」に「終わり」を見出す自己反省の様子もありました。
 佐藤優さんの『メンタルの強化書』でも、「現代日本の官僚で成功するのは、仕事と趣味が一致しているような人間だけ」という趣旨の主張がありました。そのような一部の「エリート」だけのひとにぎりの成功ばかり現代日本では正当化しているかもしれません。
 『左ききのエレン』少年ジャンププラスの佐久間にも通じるところがあります。
 趣味と一致しているような仕事で「努力」しても、全てが許されるわけではないこと、その「努力」がかえって有害であることは、考える必要があります。
 そもそも、「ゲームオタク」のゼノン達も、「ニチアサオタク」のユーゴも、命や安全や財産をかける「仕事」と、個人の楽しみのための「趣味」が一致しているところはあるはずですから、「趣味と一致した仕事」で「努力」して、楽しむ「不謹慎さ」はある程度重なり、ゼノン達だけにあり、ユーゴにはないところだけの問題にはならないはずです。
 ユーゴも、「他人になりかわるスライムと自分は同じではないのか」と反省することはありますし、その辺りで悪役との共通点に悩む必要はあります。

クレアの「変身ポーズ」

 今後の展開で個人的に期待するのは、本来のゲームのメインヒロインだったらしいクレアが、ユーゴに協力的で、本来の「主人公」のゼノンとの間をとりなすところもあるだけでなく、ユーゴの、戦いに本来必要なく「美学」である「変身ポーズ」に興味を示すことです。これは、変身するヒロインやプリキュアシリーズの要素も劇中の女性キャラクターにもいることから、いずれクレアも変身する、戦隊ヒーローのようになる伏線かもしれません。




「転生者」の正体とどうすべきか


 また、何故かユーゴ以外の「転生者」が仮面ライダーシリーズを知らないような様子のみられる「大事なこと」があり、ユーゴだけ転生前後で読みは同姓同名であり、その名前に他の「転生者」が違和感を持たない、エゴスが最期に黒幕に言われた詳細不明の台詞からも、実はユーゴだけが現実の人物で、他の「転生者」はゲームの記憶を与えられただけの、別の仮想世界などの人物である可能性すらあります。そうだとすれば、未来を知るだけでなく、元々仮想の人物である以上、「転生者」に「正しい生き方」は残っていなかった可能性もあります。

環境問題から、「フィーや読者が世界の破滅フラグを崩壊させる」可能性

 また、魔物が強くなった魔鎧獣の変化が「原因の人間の方が悪いのではないか」という、特撮にしばしばある「自己反省」の描写についても気になります。これがあくまで、ユーゴではなく弟のフィーの発言であり、そのフィーは本来のゲームの途中で命を落とすはずだったことを私は重視します。
 特撮で、怪獣などの暴れるのが人間の環境破壊によるもので、「人間の方が悪いのではないか」という指摘もしばしばあるものの、そう指摘しない特撮、たとえばウルトラシリーズもあります。
 『ウルトラマンメビウス』では、主人公のウルトラマンメビウスの擬態したヒビノミライが「人間が好き」だとみなされ、小説版以外で怪獣を殺さない例がほとんどみられず、人間の環境破壊への反省も劇中であまりなく、むしろ人間の宇宙開発を「ウルトラマンと肩を並べる」と肯定しています。
 『ウルトラマントリガー』も、主人公のマナカケンゴが「笑顔」を重視するためか、会話して笑顔になる怪獣のバリガイラー以外の怪獣には容赦しないところが多く、続編の『ウルトラマンデッカー』と異なり、「悪い人間」があまり登場しません。
 むしろ『メビウス』ではバードンの毒、『トリガー』ではバニラとアボラスの毒など、「怪獣の方が環境を破壊する」という主張もありました。
 ファンタジーでは、『聖女の魔力は万能です』漫画版も、直接登場する人間では、序盤の王子のカイル以外は「善人」が多く、人間を悪く扱わずに団結させるためか、「魔物のスライムの方が生態系を破壊する」と主張され、魔物は共存不可能で強くなるために利用してもかまわない「絶対悪」とみなされているようです。
 その意味で、『ニチアサオタク悪役転生』でも、魔物や魔鎧獣を「絶対悪」だとみなし、人間の環境破壊などを批判しない作品にすることも可能だったと私は考えており、フィーの発言を読むまでは、そのような展開になるかと予想していました。
 また、ユーゴはフィーの発言を認めたものの、自発的に魔物や魔鎧獣を擁護したとは言えません。
 もしかすると、本来のゲームには人間の環境破壊による魔物の変化などを問題視する要素がなく、環境破壊を度外視しており、黒幕の言う「ゲームじゃない」劇中世界では、魔物などを倒してもいずれ人間の環境破壊で「破滅」する「フラグ」があるのかもしれません。
 その「破滅フラグ」について、本来のゲーム世界で落命するはずだったフィーが生き延びることで、現実にも通じる、環境問題を重視する新しい世代となり、魔物の変化を防ぐことで「世界の破滅フラグを崩壊させる」のが、『ニチアサオタク悪役転生』の隠れた議題かもしれません。
 『ウルトラマンR/B』では、元々一般人だった兄弟がウルトラマンになり戦い、テレビ本編終盤で行方不明の母親や、新しい妹と共に暮らし、「兄弟の物語は終わり、家族の物語が始まる」と解説され、兄の友人の「引きこもり」を救った劇場版では、「これで俺達の物語は終わり、君の物語が始まるんだ」と解説されていました。
 そのようにして、「引きこもり」だったらしい転生者のゼノンも『R/B』劇場版の「引きこもり」のように救われるかもしれません。
 さらに、『ニチアサオタク悪役転生』は、「ゲーム世界の悪役が破滅フラグを崩壊させる物語は終わり、これからは、君達読者が現実の破滅フラグを崩壊させて行くんだ」と前向きにしめくくられるのかもしれません。

まとめ

 非常に多くの要素を久しぶりに書きました。それだけ充実感のある作品を扱えたと思います。


参考にした物語



特撮テレビドラマ

長石多可男(監督),小林靖子ほか(脚本),2003,『仮面ライダー龍騎』,テレビ朝日系列
樋口祐三ほか(監督),金城哲夫ほか(脚本),1966-1967,『ウルトラマン』,TBS系列(放映局)
小中和哉ほか(監督),長谷川圭一ほか(脚本),2004 -2005,『ウルトラマンネクサス』,TBS系列(放映局)
村石宏實ほか(監督),小林雄次ほか(脚本) ,2006 -2007 (放映期間),『ウルトラマンメビウス』,TBS系列(放映局)
武居正能ほか(監督),中野貴雄ほか(脚本),2018,『ウルトラマンR/B』,テレビ東京系列(放映局)
市野龍一ほか(監督),林壮太郎ほか(脚本),2019,『ウルトラマンタイガ』,テレビ東京系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),吹原幸太ほか(脚本),2020,『ウルトラマンZ』,テレビ東京系列(放映局)
坂本浩一ほか(監督),ハヤシナオキほか(脚本),2021-2022,『ウルトラマントリガー』,テレビ東京系列(放映局)
辻本貴則(監督),中野貴雄(脚本),2022-2023,『ウルトラマンデッカー』,テレビ東京系列(放映局)

特撮オリジナルビデオ

石ノ森章太郎(原作),辻理(監督),宮下準一(脚本),1992,『真・仮面ライダー序章』,東映

テレビドラマ

橋本一ほか(監督),真野勝成ほか(脚本),2000年6月3日-(放映期間,未完),『相棒』,テレビ朝日系列(放送)

漫画

空知英秋,2004-2019(発行期間),『銀魂』,集英社(出版社)
藤小豆,橘由華,珠梨やすゆき,2018-(未完),『聖女の魔力は万能です』,KADOKAWA
寺沢大介(作),2002-2009(発行期間),『喰いタン』,講談社(出版社)
鳥山明,1985-1995(発行期間),『ドラゴンボール』,集英社(出版社)
原作/鳥山明,漫画/ドラゴン画廊・リー,2017,『ドラゴンボール外伝 転生したらヤムチャだった件』,集英社
山田胡瓜,藤村緋二,石ノ森章太郎,庵野秀明,八手三郎,2023-,『真の安らぎはこの世になく-シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE』,集英社

テレビアニメ

大野勉ほか(作画監督),冨岡淳広ほか(脚本),畑野森生ほか(シリーズディレクター),鳥山明(原作),2015-2018,『ドラゴンボール超』,フジテレビ系列(放映局)

小説

烏丸英,2023-(未完),『ニチアサ好きのオタクが悪役生徒に転生した結果、破滅フラグが崩壊していく件について』,カクヨム

https://kakuyomu.jp/works/16817330651963156715

2024年2月27日閲覧

山本弘ほか(著),2015,『多々良島ふたたび』,早川書房(『変身障害』)
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(上)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(下)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 上』,朝日ソノラマ
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 下』,朝日ソノラマ
梅原克文,2010,『ソリトンの悪魔』,双葉文庫
朱川湊人,2013,『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』,光文社


漫画

今野ユウキ,2019-2021,『SSSS.GRIDMAN』,集英社
烏丸英(原作),どんぐりす(作画),2023-(未完),『ニチアサ好きのオタクが悪役生徒に転生した結果、破滅フラグが崩壊していく件について』,小学館
田口清隆,響眞,2022-(未完),『神蛇』,小学館
かっぴー(原作),nifuni(漫画),2017-(未完),『左ききのエレン』,集英社

特撮映画

金田治(監督),米村正二(脚本),2017,『仮面ライダー×スーパー戦隊 超スーパーヒーロー大戦』,東映
武居正能(監督),中野貴雄(脚本),2019,『劇場版 ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』,松竹(配給)
長石多可男(監督),井上敏樹(脚本),2005,『仮面ライダー THE FIRST』,東映
田﨑竜太(監督),井上敏樹(脚本),2007,『仮面ライダー THE NEXT』,東映
石ノ森章太郎(原作),庵野秀明(監督・脚本),2023,『シン・仮面ライダー』,東映
樋口真嗣(監督),庵野秀明(脚本),2022,『シン・ウルトラマン』,東宝

参考文献

佐藤優,2020,『メンタルの強化書』,クロスメディア・パブリッシング


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