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MOTHER-66話 命令

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世を見る力
 視能の技師の技術に、大変驚嘆した旨ご報告いたします。
 視覚にまつわる筋肉、細胞、神経の発達は成長の早い段階で完了してしまい、それ以降に生じる例えば近眼などの“ズレ”は眼鏡といった外部装置や、脳の視覚情報処理にて修正がなされるそうです。
 “視能”を検査していただいたところ、左目はわずかに左にずれているとのことでした。一般的な新聞だと4行分のズレが生じているそうです。
 その技師のレンズによってそのズレを補正したところ、普段「遠景」「中景」「近景」と層状に感じられていた景色が、得も言われぬ――地続きの立体のように感じられました。技師いわく、ズレを補正するための余計な視覚情報処理は除かれ、狂わぬ焦点を得た事で遠近感をより感じられるとのことです。
 ただ補正レンズを発注するかは悩み処です。“見え方は生き方”とは技師の言であり、このズレと歪みの生き方の否定に及び腰になるのです。(2017.05.30)

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