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雑誌と書籍(1)

淵上・橘川さんは出版が長いのですが「雑誌」と「書籍」の違いというのは、どういうものなんですか?

橘川・新聞は日々ニユースを届けるものだが、雑誌もその感覚に近い。人々の関心事の最先端のテーマを取材して記事にするわけだ。書籍はテーマを追求するのは同じだが、雑誌よりも時間をかけて熟考したり掘り下げたりして作品にする。雑誌は次の号が出ると意味をなくして多くは捨てられてしまうが、書籍は捨てずに古書業界などの二次流通に流されることが多い。

淵上・雑誌は今という瞬間を切り取って、書籍は、持続的なものとして次の世代にも伝えていくものなんですね。

橘川・なんかかっこいいこと言うじゃないか。まるで私が話すようだ(笑)

淵上・橘川さんが昔、言ってたんですよ。

橘川・ああ、そうか。マンガ雑誌でも読んだら新聞紙のようにまとめて捨てるが、コミックスはゴミ箱には捨てられないだろう?

淵上・よく考えたらそうですね。

橘川・それは、子どもの時の教科書体験が人々の深層心理にあるとにらんでいる。子どもたちは、自分を育ててくれたものに対する思い入れというのがあるだろう? 最初に世の中のことを教えてくれたのは、家族と教科書なんだな。だから本に対する愛着というものが潜在的にあると思っている。

淵上・だとしたら、最近の学校の教科書はパソコンになってきているので、これからの人というのは、コンピュータに対する愛着が潜在化するというこでしょうか。

橘川・まあ、私の考えは調査したわけでもない単なる感覚だから保証はしないが、田園で育った人が田園風景に愛着持ったり、都会で育った人が高層ビルに哀愁を感じたりするのと同じだな。

淵上・あるかも知れない。

橘川・それで「雑誌」と「書籍」だが、雑誌で連載して、まとまったら書籍にするという相互関係が出版業界にあった。夏目漱石だって、新聞連載してから書籍にしたんだな。雑誌の役割は新人発掘と育成という機能もあるんだ。

淵上・いきなり書籍でデビューするより、雑誌で散文を書いてから書籍デビューするというスタイルがありましたね。最近は、プログやYou Tubeからデビューする人も増えたが。

橘川・私のところにも、原稿を書いたので本にしたいという相談が昔からいろいろ来るのだが、今は、Amazonオンデマンドがあるから誰でもローコストで本は出せる。単発の思いつきで本を出したい人は、いろんな形で出版できるソリューションが揃っている。

淵上・自費出版ビジネスも、相変わらず盛況ですね。大手新聞社や出版社も自費出版サービスをやっている。

橘川・だけど、本気で文章を書き続けたいなら、すぐに本にするより、ゆっくりと雑誌に連載する方がよい。印刷された自分の原稿を読み直すことは、ディスプレーに映る文章を見るのとは違う感覚になるはずだ。連載していけば、読者という存在も意識出来るし、密室で書いたものを読まれるとはどういうことなのかも分かってくるようになる。

淵上・『イコール』には「孵化器」というコーナーがありますね。

橘川・本を出したいとか、雑誌を出したい人には誌面を提供するよ。ただし、『イコール』はコミュニティが作る雑誌だから、『イコール』の誌面を使いたい場合は、橘川の友人になるか私塾の塾生になるしかない。塾生の経験を積んでからだな。

淵上・『イコール』はコミュニティメンバーが使える雑誌なんてすね。

橘川・そうだよ、仲間たちが自由に遊べる「原っぱ」をメディアの上で創るんだ。孵化器コーナーだけではなく、「誌面を使いたい」という人が使える場を創るのだ。

淵上・では、私も使わせてもらいます。


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