1.雑誌「イコール」の発行についての気持ち

　橘川幸夫です。私は73歳になり、すでにたくさんの先輩・仲間・後輩を失い、肉体的にも満身創痍という状態です。でもなぜか精神だけはますますと高揚し、時代の最前線が見える位置に居続けていると思っています。

　私の最後の仕事として紙の雑誌を残そうと思いました。まず思ったのは「ポンプ」を完成させたいということでした。1978年に創刊した「ポンプ」は、その時代においてはやるべきことをやれたと思っていますが、その先に考えたことが実現出来ていません。それで「21世紀ポンプ」の構想を考えたのですが、考えれば考えるほど、「ポンプ」は1972年創刊の「ロッキング・オン」があったからスタートできたのだと思いました。

　それで、「21世紀ロッキング・オン」の創刊を考えました。かといって、音楽雑誌をやるのではありません。「ロッキング・オン」というのは、渋谷陽一、岩谷宏、松村雄策、橘川幸夫という個人が集まったコミュニティであり、そこに新しい読者の仲間が集まり運動的に展開していきました。

「コミュニティが作る雑誌」ということに可能性を感じました。現在、出版業界は悲惨な状況で、新雑誌の話もほとんど聞こえてきません。雑誌はインターネットに飲み込まれて役割を終えたのでしょうか。終えた部分も確かにあるでしょう。しかし「雑誌とは編集部というコミュニテイが作るものであり、そこに読者という仲間を巻き込んでいくものだ」という発想になれば、まだ可能性はあります。雑誌が単なる宣伝媒体として部数拡大を求めるだけであれば、インターネットに敵う訳がありません。しかし、誌面という限られた現実を共有しながら個人同士が切磋琢磨していくものであれば、役割はあります。

　雑誌を創刊するには、巨大な組織や資金や経験者が必要です。しかし、私たちが1972年に「ロッキング・オン」を創刊した時は、会社もなければ資金もなく経験も全くありませんでした。「雑誌とはこうあるべき」という常識すらありませんでした。私たちは、それぞれが努力して「雑誌って何なのだろう」と模索しながら、仲間たちとの関係性を深めていきました。もういちど、そこから始めたいと思います。

　雑誌の誌名は「イコール」にしました。イコールは、1982年に、平凡社の発売で発行したメディア情報誌です。バブル直前の、まだお金以外の未来の可能性を多くの人が探っていた時代に創刊しました。

　現在の曖昧模糊として状況を突き抜けるためには、これまでの延長線上の動きでは駄目で、80年代バブル以前の70年代の意識に戻って、金融バブルの80年代に向かわない、別の80年代を目指すべきだと思っています。

　私はロッキング・オンからやり直します。そして後に続く世代に、プロトタイプを渡していきます。現在、編集作業が進行中です。2024年の1月には創刊0号を発行します。

2.イコールの運営

　雑誌イコールは、橘川が編集長とし企画し、友人たちに原稿を依頼して、同じく友人たちの制作グループたちと一緒に創刊0号を制作中です。現在、50名近い友人が協力してくれています。まだ相談していない友人たちにも、少しずつ企画を説明して協力をお願いしていきます。面白いことに「雑誌をやるぞ」と強く意識した頃から、いろいろとユニークな人から連絡があったり相談があったりします。「雑誌」があると、ネットで見つけて面白い人にも直接、取材などを通して関係が結べます。

「イコール」の編集や執筆に参加するためには、橘川と友だちになる必要があります(笑)。作業に対する対価は、制作した雑誌の現物支給になります。

　2020年のコロナパンデミックの中で、橘川は「深呼吸学部」という私塾を開始して、Zoomを使い、全力で塾生たちと一緒にコロナの薄闇を疾走してきました。「深呼吸学部」がよかったのは、これまでの私塾が、橘川の読者中心だったものが、橘川のことを名前も知らない人たちが8割を占めたということだと思います。古い知り合いは2割。橘川も新鮮な気持ちでゼロから、いろいろなことを伝えられました。

　今回「イコール」を創刊したのは、橘川の友人である50人です。これを2割として、今後は、それ以外の8割の人間を巻き込みながら、編集部を作っていこと思います。

　具体的に言うと、第二次深呼吸学部は、「イコールを編集制作することによってメディアの本質と手法を学ぶ塾」となります。メディアに関心のある方は、新しい深呼吸学部に参加してください。

　もちろん「イコール」は橘川のワンマン雑誌で終始するつもりはありません。これも、新しい時代へ向けての「卵」の一つです。引き続き今後の活動にご注目ください。

第二次深呼吸学部へのご招待(詳細は以下をご覧たください。)