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寂しげな街並みを尻目に。

一昨日までの冬らしからぬ晴れ晴れしさが過ぎ去り、瞬く間に冬本番の景色となった。一夜にして白雪が降り積もり、あれほど露出していた道路は姿を潜めた。

新年に入ってから、冬が重い腰をやっとあげたようだ。そんな時期に重なるようにして、僕は青春18きっぷの旅へと出た。

最寄り駅を発ち、目指すは仙台の秋保温泉。寒風にさらされて芯まで冷えた体をあたためるのにうってつけの場所だ。

慣れた足取りでいつものように電車を乗り継ぎ、目的地を目指す。その道中でよく目にするのは、線路沿いにある街並みだ。頬杖をつきながら、流れゆく街並みを眺めているのが至福のひととき。

僕が見つめる街並みは、いつもどこかうら寂しげだ。地方ということもあってか、見かける人が少ない。歩いていたとしても、子どもたちの姿はあまりいない。

車窓からの街並みは、少子高齢化の一端を垣間見える貴重な機会だ。そんな気がするのは、僕だけだろうか。

「昔は、ここら一帯で子どもたちが駆け回っていたんだろうな」などと思いながら、目を閉じる。さきほどまで眼前に広がっていた景色が、目蓋の裏に浮かび上がる。

さらに、その景色に重なるようにして、無邪気な笑顔で遊びまわる子どもたちが現れた。一度も訪れたことのないこの街並みでは、昔はこんな風に子供たちが遊んでいたんだろうな。

なぜだか涙が出そうになる。

目を開くとそこには、先ほどまでの風景が流れていた。次の駅が近づいてきたのか、電車は徐々に速度を落としていく。

頬杖をつきなおし、僕はそのまま車窓の外を眺め続ける。きっと今の僕は、相当に物憂げな表情をしているんだろうな。


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