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更年期女性への心配り。信頼関係を失わない声かけの方法は?

こんにちは。
産業保健師の小林智美です。

今メディアでは、かつてないほど「月経」や「更年期」をテーマにした番組・コラムなどを目にします。

それもそのはず。日本女子大の周燕飛教授(労働経済学)が、更年期症状を理由とする離職による経済損失は年間約6300億円と推計されているのです。
企業にとって、これは軽視できない問題ですよね。

そこで今回は、今まで見過ごされていた「更年期女性への支援」について、一緒に考えていきたいと思います。

「更年期」私たちはまだわからないことだらけ

“更年期”と聞くと、「閉経後に症状に悩まされるんだよね」という人や、「閉経すれば更年期症状ってなくなるんだよね」と思っている人がいらっしゃいます。
でもこれ、どちらも半分は合っているようで半分は不正解です。

そもそも“更年期”とは、閉経の前後5年=10年間を指す言葉
ですから、閉経前から更年期症状がある人も、閉経後も更年期症状が続く人も、その両方を経験する人もいるということなのです。

日本人の平均閉経年齢は50.5歳ですから、だいたい45~55歳くらいの女性に更年期症状を経験している人が多いと考えられます。

2020年時点で、この年代(45~55歳)の女性は労働人口の24%を占めています。驚くかもしれませんが、すべての女性労働者のなかで、現在この年代の人口が最も多くなっています。
ですから、この年代の女性の生産性を維持すること、そしてエンゲージメントを高め、「働き続けたい」と思うモチベーションを維持するこが、未来の企業の存続のためにもまさに今、重要な課題になっているのです。

▲「人生100年時代」。更年期はまだ人生の折り返し地点です

高年齢者雇用安定法により、2025年4月から、すべての企業に65歳定年制が義務化されます。これが施行されると、女性のみなさんの労働寿命も法的に延びることになります。
更年期を過ぎても、まだ10~20年は働くことになりますから、いきいきと健康に過ごすためのセルフケアがますます重要になってきます。

前出の周燕飛教授は、過去3年間に約46万人の女性が、そして意外かもしれませんが、男性であっても約11万人の人が、更年期症状を理由に離職を経験していると試算しています。

更年期を経て定年まで働き続ける女性は、これまではそれほど多くはありませんでした。1986年に男女雇用機会均等法が施行され、それ以降に社会に出た女性たちが、今、日本の企業社会で初めてまとまった人数で更年期を迎えているのです。
それにともなってようやく芽生えてきた「更年期女性のへの支援」という企業の視点。今、その必要性が大きくうたわれている理由がわかっていただけたと思います。

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まずは、働きやすさと安心を生み出す“声かけ”から

では、具体的にどうしたらよいのでしょうか。
さんぎょうい株式会社では、女性の健康とキャリアをサポートするプログラム“mezame”で、そのさまざまな方法をお伝えしています。

そのなかでも、すぐに実践できる簡単な方法として「教えてもらえて良かった」「もっと早く知っておきたかった」と好評なのが「声かけ」です。

更年期女性への声かけといっても、さまざまな場面が想定されますが、今回は体調がすぐれないようすの従業員への声かけをピックアップします。

▲責任あるポジションにいることも多い更年期世代。仕事のストレスが症状を悪化させることも

更年期に該当する女性が、体調が悪そうだと、相手を気遣う思いからも

「大丈夫?更年期なんじゃない?」

と声をかけたくなるかもしれません。しかし、これは適切ではありません。

“更年期”という言葉にはこれまで、残念ながらネガティブなイメージがありました。
「若くない女性には価値がない」という偏った見方が横行していたかつての世の中で、イライラしたり怒りを表に出した中年期の女性に対し、からかったり嘲笑したりする意味合いも含んで「更年期?」と声をかける人が少なからず存在していました。
今の時代ではちょっと唖然としてしまいますが、テレビドラマやマンガなどにも、そういったシーンがひんぱんに描かれていた時代があったのです。

そのため、“更年期”に自分が当てはめられると、「バカにされている」「否定されている」と感じる女性は一定数います。現在更年期世代の女性は、まさにそうしたドラマや物語を目にして育った世代でもありますから。

そんなわけで上記のような声かけは、相手を不快にしたり「失礼な人だな」と思わせる可能性があるため、適切ではないのです。
こちらが、気を遣って発した言葉でも、信頼関係が崩れてしまうかもしれません。

また、「大丈夫?」という声掛けも、「大丈夫です」と回答してしまう方が多く、あまり意味がありません。

今後ますます高まるコミュニケーションの大切さ

“声かけ”には、「心配しているよ」「ちゃんと見ているよ」というメッセージが込められていることが大切です。
そこに、「更年期みたいだから」といった具体的な理由は必要ありません。これは、月経で体調が悪そうな女性に対する声かけでも同様です。

「体調が悪そうに見えるから、病院に行ってみたら?」
「具合が悪そうに見えるけど、何か手伝おうか?」

こうした声かけで十分なのです。

ただ、普段あまり言葉を交わさない人から、唐突にこのように言われると、驚かれたり、いぶかしく思われたりすることがあるかもしれません。コミュニケーションって、本当に難しいですよね…。
ですから、同じ職場で働く者同士、日頃からなにげない会話も大切にし、気軽に声かけできる人間関係を構築することも大切です。

テレワークが進むこの時代の声かけは、音声ではなく文字で伝えることのほうが多いかもしれません。もちろんそれでもOKです。
少し手間に思う人もいるかもしれませんが、ほんの少しの手間をそこに割くことが、お互いが気持ちよく仕事をするうえでは欠かせません。コロナ禍以降、こうしたコミュニケーションの必要性は一層高まっていると感じます。

もし、みなさんの周囲に今回のトピックに該当しそうな女性がいたら、ぜひ実践してみてくださいね。

■ 文/小林智美(こばやし・ともみ)
産業保健師、メンタルケア心理士、アンガーマネジメントファシリテーター・叱り方トレーナー

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