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ドイツ歌曲の話 詩人の恋 Dichterliebe #19 毎夜見る夢は

14.
Allnächtlich im Traume seh’ ich dich
Und sehe dich freundlich grüssen,
Und laut aufweinend stürz’ ich mich 
Zu deinen süssen Füssen.

毎夜夢で君を見る
そして親しげに挨拶する
僕は君の足元に
激しく泣きながらくずおれる

Du siehest mich an wehmütiglich
Und schüttelst das blonde Köpfchen;
Aus deinen Augen schleichen sich
Die Perlentränentröpfchen.

君は僕を切なげに見つめ
金髪の頭を振る
君の両目からは
真珠のような涙が流れる

Du sagst mir heimlich ein leises Wort
Und gibst mir den Strauss von Zypressen.
Ich wache auf, und der Strauss ist fort,
Und’s Wort hab’ ich vergessen.

君は僕にそっと優しく何かを言い
糸杉の花束をくれた。
目覚めると、花束はなく
何を言ってくれたかも忘れてしまった。


前曲の変ホ短調から、まさかの遠い遠い調、ロ長調。まるで目が覚めたような。でもどこか非現実的な響きのする調。覚めると分かっていても見たい、彼女の夢。
四分の二拍子、他に指示なし。

歌もピアノの両手ともアウフタクトから始まるのは、不安定な落ち着きのない感じがする。三番とも詩の二行目までは歌、三行目、四行目は語りで作曲されている。

前曲も夢だったが、一連毎に目を覚ましては泣いていた。
この詩では目を覚ますのは三連目だけ。
彼女は詩人に糸杉の花束を渡したのです。
ゴッホの絵にしばしば現れる、あの細長く伸びる木。

ゴッホ 糸杉と星の見える道


花束を渡されたところでハタと目が覚めた。糸杉は死を象徴するもの。え?
もちろん手には花束などなく、その前に彼女はなにかいいことを言ってくれてたけどそれも思い出せない…..

前奏もなければ、後奏もほとんどなく終わる。

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