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理系大学生ならゲーム理論(ミクロ経済学)も学ぶといいかも。リコリス・リコイルにも出てきましたよ。

「ゲーム理論って聞いたことがあるけど、くわしく知らない。」

ミクロ経済学の一分野です。

「経済学って、文系の学問でしょ?」

いいえ、経済学では、非常に高度な数理モデルを使います。ただし、数学的になるのは、中級~上級の経済理論(ミクロ、マクロ)からです。

ミクロ経済学を、理系的にいうなら「配分の数理モデル」。対象とするのは「労働や資本といった財(資源)」で、ミクロ経済学では「限られた資源を系(システム)に効率的に配分する」ことを目的としています。

つまり「最適化する」問題と言い換えられます。

※ 経済学では「初級、中級、上級」という謎な分類が、風習としてあります。ミクロ経済学での初級、中級、上級を概略しておきます。

  • 初級: 微積(1変数まで)

    • 初等微分法や積分法を用いた基本的な微分・積分の計算

    • 一変数関数や二変数関数の極大・極小の問題の解法

    • 需要と供給曲線のグラフ描画や均衡点の算出

  • 中級: 微積(多変数の偏微分あり、多重積分は使わない)

    • 多変数関数や制約条件を用いた最適化問題の解法(ラグランジュ未定乗数法など)

    • 一次微分や二次微分を利用した最大化・最小化の判定法

    • 弾力性の計算や市場分析における微分法の応用

  • 上級(大学院レベル): 中級と上級とで、数理的アプローチが異なる。

    • 線型代数の概念や行列計算の導入(特に一般均衡理論における行列計算)

    • 非線型最適化問題の解法(勾配法やニュートン法など)

    • 需要関数や生産関数の推定や統計的手法の応用(最小二乗法など)

最適化問題といえば変分法です。

理論物理学での解析力学に似ています。

変分法のひとつの手法であるラグランジュ未定乗数法は、ミクロ経済学でもよく使われる数理手法です。2変数のラグランジュ未定乗数法ができれば、大学での中級ミクロ経済学を半分マスターしたといえます。

(中級)ミクロ経済学の教科書として、(まじめに勉強したい人たちに)日本でいちばん使われている、

を試し読みしていただければ、全体像がわかります。

微積を使っていますよね。解析力学よりも、変数が少ないために、数理的に簡単そうにみえるはず。物理学科、工学部系の方なら、「力学」よりも習得しやすいです。

ゲーム理論と経済学はどんな関係?

経済学では選好を考慮します。つまり、人の好みやニーズが絡んできます。ここまでは、変分法(微積)で計算できます。

さらに、現実的な経済学では「情報」が加わります。「情報が対称性である」とは、市場への参加者にとって経済活動に関する情報がすべて共有されている状況を指します。

知り得る情報が同じあれば、競合同士の打つ策が互いに分かっている状態になってしまいます。(ゲーム理論の言葉でいうと完全情報ゲーム)

ジャンケンでいえば、次に出す手が分かっているため、ずっとアイコです。

現実では、そんな訳はなく、情報は非対称です。勝負においては、相手が知り得ない情報を持つことがアドバンテージになります。

人間活動の困難さは、「わたしの意図は、相手に知られていない」から生まれます。これを、不完全情報ゲームといいます。

たとえば、ジャンケンは不完全情報ゲームです。

ただし、公平であれば、です。

『リコリス・リコイル』の千束のように、ジャンケンで相手の次の手がわかると、「アイコの次」で必ず勝ってしまいます。

千束だけは「情報が非対称(不公平)」になっています。こうなります。

第6話の最後で、たきなは戦略を変えます。「最初はグー」をなしに、ジャンケンを始めます。今度は、たきなが「情報の非対称(不公平)」(むしろこれで公平になった?)になりました。

ちなみに、ご存知ですか? ジャンケンには心理学的な必勝法があります。
「アイコで出した手の負ける手を次に出す」と、勝率が約30%上昇します。

たきなは一戦必勝を狙うべく、この必勝法からチョキを出しのかもしれません。1戦目がアイコになると、以降は、千束が勝つかアイコ、になってしまいますから。

さて、このような情報戦でのシステムを変分法では記述できません。ジャンケンを数理的に扱おうとするとゲーム理論が必要となります。

経済学では、人為的な意思決定が系に影響を与えます。このため、経済学ではゲーム理論を解析手法に組み入れないといけなくなりました。

先掲の『ミクロ経済学の力』でも、後半はゲーム理論で経済学しています。

ジャンケンでわかるように、ゲーム理論の理屈は日常で頻出します。競争、戦略、いずれもゲーム理論の専門領域です。

大学の理系学部では、ミクロ経済学やゲーム理論を習うタイミングがありません。開講さえされていません。理系の方は「科学的な戦略は、ゲーム理論として学問になっている」という事実さえも知らないかもしれません。ゲーム理論を知らないと、戦略といえば、一般教養的に「孫子やクラウゼヴィッツ?」となってしまいます。

ぜひ、理系学生であっても、この2冊のどちらかを立ち読みしてみてください。

ゲーム理論の本格的な書籍には、

よみものとしては、

さいごに、数学が得意な方には

理論経済学(ミクロ)の体系を、120ページほどに簡潔にまとめられています。岩波講座 応用数学シリーズですので、数学的にはやや高度なレベル(大学4~大学院~プロ向け)です。「理論経済学(ミクロ)とはこういう数理モデルを扱う」イメージが掴めます。大学図書館に所蔵しているはずです。

竹内啓先生の上掲の書籍は、こちらの書籍に似ている印象を受けます。ミクロ経済学での一般均衡理論が扱う空間は「多様体」ですし、数学での「多様体」の結果が経済学的帰結に使われています。古典力学では、たとえば、シンプレクティック多様体が解析対象となる空間です。力学と経済学は細かくいえば異なりますが、使う数学の分野(ツール)は互いに近いです。

さいごに、聴講するなら

聴講を担当先生によっては断られることもあります。事前に担当教員へ挨拶しにいっておくとトラブルを避けられます。

時期について。
ゲーム理論(ミクロ経済学)は、理工系の学生にとっては解析力学に近いと上述しました。解析力学を学んだあとであれば、スムーズにミクロ経済理論を数理的に理解しやすいと思います。


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