すこしデキる人のための熱力学
日本での「熱力学」分野には世界的名著があります。
この驚くべき事実を物理界隈ではない人には知られていないかもしれない。
アマゾンで「熱力学」と検索すれば、すぐに分かります。
清水明『熱力学の基礎 第2版』,東京大学出版会,2021
物理学専攻ではなく、趣味・興味で熱力学を知りたい人には、『I: 熱力学の基本構造』だけか、旧版『熱力学の基礎,東京大学出版会,2007』でいいです。
この2冊です。これらのレビューは、WEBを多く見ることができます。
そう、『久保亮五,大学演習 熱学・統計力学〔修訂版〕,裳華房,1998』
この3冊は、物理の学生なら皆持っているのではないだろうか?
これだけの名著を揃えて、これらの知を享受できているのに、日本の産業が衰退していくのはなぜなのだろう?
※ 熱力学・統計力学は人工知能(AI)での数理面の理解に、大いに役立ちます。
ただし、これら3冊は熱力学3ループくらいで使う本です。「上に出たポチろ」なアマゾン買いをしてはいけません。
熱力学1ループ目、もしくは理系ではない人は、
のどちらかをおすすめします。熱力学には偏微分が必須ですが、これらの本であれば「偏微分を無視して、ふつうの微分」と捉えても、読み進められます。数学面をなんとなく誤魔化し、1週間ほどで、エントロピー増大まで到達できます。ブルーバックスなどの概説書を読むよりも、これらの方が理解の深さの面で、納得いくでしょう。本の内容をすべて読む必要はありません。
エントロピー増大(熱力学第2法則)は、物理法則として根源的な証明がなされていません。
「閉鎖系は、ある量が増大するように遷移する。その量をエントロピーと定義する」
この事実以上に、"熱の流れ(状態の遷移方向)"について、統計力学、量子力学、相対性理論を持ってしても、証明できていません。現代物理学では熱力学第2法則は証明不可能な原理として扱われます。
※ ずっと物理学の未解決問題でしたが、つぎのような兆しがあります。関連があると盛んに研究されていたエルゴード性は見当違いだったようです。(田崎統計参照のこと)
でも、今回はこちら方向ではなくて。
ヨビノリさんは「化学熱力学推し」とコメントをよくされています。わたしも同じく「化学熱力学推し」です。
物理な熱力学の問題点
数学的手法を制限されている
エントロピーの理解に焦点が充てられており、物理的意味を重視して、数学的手法で思考の簡略経路で誤魔化さない傾向にある。
いいことなんですけど、熱力学はこういう趣旨の本ばかりです。使い回しが利く「上級な熱力学」は皆無で、田崎熱力 や 清水熱力 も応用として使用するには「基礎的(根本原理的)」で、すこし冗長。
あとに統計力学が控えているために、応用的な熱力学範囲をあまり扱わない。
物理学科での熱力学のカリキュラムは、"エントロピー~熱力学関数~平衡~相"の流れです。統計力学を早めに導入しなければならないために、後半の"平衡~相"が内容が薄くなりがち。
このような問題を解決している本
数学的手法を制限されている
統計力学でも、基礎的な内容ではなく、アドバンスな不可逆過程や非平衡系が取り扱われています。「岩波書店 現代物理学の基礎 5 統計物理学」の現代版と捉えていいです。
はじめ数章は、熱力学~統計力学の基礎がまとめられています。数学的扱いに忖度がなく、比較的きれいな記法・手法で記述されています。
たとえば、一般的な熱力学の教科書では、熱力学不等式は導出に高校数学と微積分の基礎を使ってなされます。
この『統計物理学ハンドブック』だと、2次形式とヘッセ行列を使って、凸解析的に導入しています。こちらの方がスッキリします。数理面でも応用が利きます。
この本は高価すぎるので、図書館で必要な箇所を写したり、コピーするのがいいでしょう。
なお、2次形式とヘッセ行列を習うケースは少ないと思います。人工知能での最適化問題でもこれらを使います。田崎熱力 や 清水熱力 にも載っていますが、系統的に知っておいて損はありません。
関数の極値問題とラグランジュ未定乗数法だけなら、
応用的な熱力学範囲をあまり扱わない問題は「化学熱力学」で。
わたしは、ちがって、これ。
と、ようやく真打ち登場ですが、長くなりすぎたので、今日はここまで。
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