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コロナ禍のレインシューズに思う

今までどうしていたのかと言うと、職場の下駄箱に新聞紙を蓄えておくとか、道中シャカシャカとせわしなく水溜まりを回避し続けるとか、そういう地味で効果の薄い努力ばかり重ねていたのである。

アマゾンさんに届けてもらった3000円程度のレインシューズ。どんな服にも合わせやすい黒一色。外出自粛をしすぎてお小遣いに余裕が出たなと思った日にちょうど雨が降っていたので思い立って購入したものである。

季節は梅雨時、そう待たずともは雨は降る。いつものようにバタバタと娘と夫に手を降り、折り畳み傘に手間取った分駆け足で駅へと向かったのだが。

何この守られてる感…?

雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ、長年運動靴デ通勤…をしていた身には「傘を差して通勤」と「濡れてくる靴下」がセットでインプットされていたのだが、今回、後者のみがレインシューズによってアンインストールされ、一瞬認知機能がバグった。

一瞬の後、歓喜。
わあぁぁお、なんて快適!!!

いやちょっと、こんなにいいものがあるってもっと早く教えてよ。カバンに突っ込んできた替えの靴下いらないじゃないのよ。ふふふ、そこの革靴で通勤するおじさま、私の足は守られているのよ、悪いわね。

不敵な笑みを浮かべて歩みを加速、もはやマリオカートでスターをゲットして七色に光るマリオである。

足を快適に保ち、水の侵入、跳ね返りから守り、おまけに分厚い靴底で乗り換え時の雨水つるつる構内をも力強くクリアさせてくれるレインシューズよ。
ブルーな日もこれで快適☆とは、もはや生理用品ではなくレインシューズのためのキャッチコピーである。朝の雨の中をにやにや駆け抜ける私の通勤時の光景をCM動画として提供したい。

その日は下駄箱にキープしてある新聞紙を使わずに済んだし、これを丸めてずぶ濡れの運動靴に詰める作業ももうないだろう。

感慨はさておき、そう、こんなに世に流通しているものを

なぜ今まで買わなかったのか。

私は、靴の先までお洒落に気を使い、かつ外を歩く機会がほとんどない内勤のOLなどではない。むしろ、日々運動靴で通勤し、時間のないときはジャージでそのまま帰る教員である。(胸を張ることではない)それなのに世に流通しまくっているレインシューズを買わず、西友の2階で買った運動靴で校庭の雪かきまでやっていたのだから、もうちょっと頭使おうよと言いたくなる。

ただ、根本的解決への一歩がなっかなか踏み出せず、うじうじと地味で効果の薄い努力ばかり重ねている事例というのは往々にして存在する。そしてそれらはある日あっけなく解決して、今まで何をしていたんだろうと呆気にとられるのだ。

たとえば通勤ラッシュ。
時差通勤だのオフピーク通勤だの、名前ばかりは実に様々な試みがなされては散っていった時代には一切解消されなかったが、ご存じ昨今の感染症予防のために根本的な原因である通勤をなくしたところ、通勤ラッシュもあっけなくなくなった。
コロナの馬鹿力といってしまえばそれまでだが、いやいやもっと早くやればよかったじゃん…と感じた人は少なくないはずだ。

地味で効果の薄い努力でもって試行錯誤していると、なんだか「逆境に耐えるヒロイン」みたいな気分がすることは否めない。
実際、靴をぐっしょり濡らしながらも下駄箱で新聞紙を詰めたり、颯爽と替えの靴下に履き替えたりするときは、なんて準備のいい自分なのだろうと悦に入っていたのも確かだし、あまりに濡れて重くなった運動靴を翌日の話のネタにしたことがある人もいるだろう。

しかし、社会が逆境に耐える一億総ヒロインでは困るのだ。よいものはさっさと使おう。レインシューズを履くように、案外楽な解決方法もあるなら使えばいいし、そのときにスターを得たマリオのごとく、これで快適☆ヒャッホーイと叫ぶ方がよい。結構ストレスフルな現代社会に、レインシューズはいいぞ、うん。

そんなこんなで乾いた靴下で意気揚々と出勤し、勢いで上司に「この日報、手書きじゃなくてデータでいいんじゃないんですかね!?」と笑顔で迫ったが、「ハンコを押す書類だからダメ」と一蹴された。きっと上司は今朝も雨ニモ負ケズ運動靴デ出勤してきたのだろう。レインシューズを履けば世界が変わるのに、もったいない。

それでも、最強のレインシューズで帰れると思うとごきげんな私なのであった。





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