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社会派ミステリー×恋愛模様を描いた「未定事件簿」がおもしろい

 2022年5月、たまたまYouTubeで見かけて気になった「未定事件簿」をプレイし始めました。
 ソシャゲや乙女ゲームにはほとんど馴染みがなく、しかも中国の企業発のタイトルということで抵抗があったのですが(「未定事件簿」ってタイトルがかなり中華っぽいし)、蓋を開けてみるとそのクオリティの高さに圧倒されすぐにハマってしまいました。

 ひと目でわかるイラストのクオリティ、ずっと聞いていたくなる心地よいサウンド、何度も読み返したくなるシナリオやその細かい設定など、素晴らしい点をピックアップしてみました。気になる方はぜひプレイしてみてほしいです。

リアルに動くイラスト

 各イラストそれ自体の秀麗さはさることながら、Live2D技術の素晴らしさが目を引きます。表情はもちろん、体躯、指先、背景とかなり細部まで作り込まれており、かつほとんど違和感のないリアルな表現になっていて没入感があります。
 また、ストーリーの中では場面転換が頻繁にありますが、背景に出てくる各キャラクターの部屋やオフィスの内装やインテリアはひと目でプロが設計したとわかる素晴らしいコーディネートです。
 さらにミニゲームやオプション機能なども細部まで洗練されたデザインで、操作も非常に快適です。
(その分負荷が高いので、古いスマホや空き容量に余裕がない場合は筐体が発熱しやすいようです。私はiPhone13 256GBでプレイしていますが、発熱やフリーズなどの不具合は感じていません)

心地よいサウンド

 各イラストカードには環境音が組み込まれているのも注目したいポイントです。木々のざわめき、足音、グラスの響き、水音……など、ASMRのような音質と美しさ。
 また音楽も丁寧に作り込まれており、作品の世界観を演出しています(期間限定のイベントにもがっつり曲が用意されていて驚きました)。
 サントラの中で特に好きな2曲がこちら。YouTubeのほか、SpotifyやApple Musicでも聴くことができます。

序章

泉の光

本編は完全にミステリー小説

 本作品においては恋愛パートと本編パートが独立しています。恋愛ゲームだとおそらく「主人公と攻略対象が結ばれるまでのストーリー」がメインになるのが一般的かと思いますが、未定事件簿の主軸はミステリーであり、硬派な構成になっています。
 未定事件簿公式HPのストーリー紹介では「利益紛争の下に隠された真実を求める物語」とされ、主人公たちは時に命を危険に曝しながらも事件の真相を追求していきます。作風をポップに言い換えるならば「名探偵コナンが現実だったらこうだよね」といったところでしょうか。
 舞台は2030年軸で多少の近未来要素が取り入れられつつも、ビジネス用語や法律用語などが常用され、私たちが住む現実世界に根ざした設定になっています。
 高層ビルから大ジャンプしたり、キックボードが火を吹きながら爆走することはありません(とはいえ小型麻酔銃を自作する幼馴染や、大富豪のお金パワーを存分に発揮する御曹司がいますw)

 ストーリーは不穏なプロローグから始まり、1話目からなかなか重みのある内容になっています。物語のテーマが違法薬物であり、それを巡る人間関係などもしっかり用意されていてヘビーな描写も多いです。
 多くの要素が散りばめられており、ぼーっと話を進めてしまうと人物関係や利害関係が把握しきれなくなるかもしれません。とはいえ、ゲームの進行自体はとても簡単にできるようになっているので手詰まりになるということはありません。内容についていけなかった時は、ストーリーを読み返したり、会話のログや事件の記録を振り返ることも可能です。

文化や芸術へのリスペクトがすごい

 シナリオの中には社会的背景や歴史、文化、人間心理など面白いテーマがふんだんに盛り込まれているので、そういった要素から色々考察を広げたり、考えを巡らせたりしたい方にはぴったりの作品だと思います。
 美術品、音楽、文学作品などが取り扱われているのもまた趣深くて面白いポイントです。ストーリーを追っていると美術館に行きたくなりますし、クラシック音楽を聴きたくなってきます笑
 ストーリーの中では「クリプテックス」や「フィボナッチ数列」なども登場し、昔読んだ小説「ダ・ヴィンチ・コード」を思い出しました。
 主人公のスマホ端末からビッグデータセンターにアクセスすることで様々な業界・学術・専門用語の解説を見ることもでき、ちょっとした読み物のように楽しむこともできます。

キャラクターの深掘りがおもしろい

 本編でも様々な事情を抱えた人物が登場しますが、男性主人公4名もそれぞれ異なった性格と境遇を持っています。
 4人とも一見現実離れしたハイスペ&イケメンなのですが、世界観と人物像がとにかく丁寧で奥行きある描写をされているおかげで、非常に自然に馴染んでいて、恋愛映画のような美しさや深みがあります。

 彼らのパーソナリティを深掘りする役割を担うのは、主に個人ストーリーや各キャラクターカードです。
 個人ストーリー、カードストーリーは本編の進行に干渉しませんが、彼らの過去や家族関係などが明かされることもあり、物語をより深く解釈できるようになります。主人公に対する思いの向け方も4人それぞれ違っていて面白いです。
 これらを踏まえて本編がどんなエンディングを迎えるのか今のところまったく予想できませんが、これからの展開も楽しみです(不穏なプロローグはどう回収されるんでしょうね)。

ゲームの楽しみ方

 個人的にソシャゲ=パズル系、戦闘系、育成系かつお金がかかるゲームというイメージしかなかったのですが、これほど読み応えのある骨太なストーリーを読めるんだというのが一番の驚きでした。ゲーム開始時はアイテムやパラメータの多さに戸惑いましたが(体力とかコインとかソシャゲっぽい要素色々)、続きをもっと読みたい!という気持ちで進めていくと、仕様にはすぐに慣れました。
 課金するかしないかはそれぞれの熱量によると思いますが、個人的には本を買ったり映画を見たりする予算分くらいは充ててもいいなと思いました。完結まで数年単位で遊ぶことになると思うので、長期的に見て無理のない範囲を設定しておくのが良さそうです。


 さて、今後も未定事件簿を遊ぶ限り、考察…とまで呼べないかもしれませんが感想や気づきなどを書いていこうと思っています。なかなか要素の多い物語なので、他のプレイヤーの方の感想・考察も楽しみです。


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