NASAの清掃員の言葉を知り、私の働くが動き出した
みんなのあたりまえ
仕事は正社員が絶対なんて、昔、友達や周りの皆に言われたのを覚えている。「大手の正社員が良い」「大手は福利厚生がすごい」「安定が一番だ」いろいろな周りの当たり前を聞いて私は大人になった。
だから、それがあたりまえだとあたりまえに思っていた。
ちなみに私は不登校や引きこもり経験があり、通信制高校でやっと卒業できた過去がある。あの頃、周りの言う〝良い大学〟が全てだと思い込み、過度な勉強をし過ぎたせいもあって気が付けば大きなストレスが溜まり、家に籠っていたのを覚えている。進学校に通っていたが、入学から一年経つ前に退学して通信に編入し何とか卒業をしたのだ。でも、そんな辛い経験はあったが、数年の時間をかけて回復し様々な経験を得て、私はやっと周りが言う〝正社員〟になった。
皆があたりまえに言う〝良い大学〟はいけなかったけれど、まだ周りに流されて生きていた私は、とにかく〝安定の正社員〟を目指して必死だったし、そのあたりまえな夢が叶って喜んだのを覚えている。
正社員は絶対か?
しかし、私の正社員生活は長くは続かなかった。この会社で活躍すると意気込み素敵な先輩になることを夢見た私は、先輩になることは無く〝何もできない新人〟で終わってしまった。
私は、正社員で活躍するために二十もの資格を取り、良い大学へ行けなかった分あんなに頑張ったというのに悔しくて仕方が無かった。正社員ができない自分は落ちこぼれだと思い込み、自信も無くなっていった。
そして、仕事を辞めたまま休養をしているある時、私は気が付いた。
「私はなんのために働いている?正社員が安定だから?」
「何のために資格を取った?正社員になるため?」
自分に問いかけた時、出てくる答えは〝正社員だから〟だった。
そこでやっと何かがおかしいと疑問を持てるようになった気がする。
転職をしても
私は〝正社員は安定〟という言葉に疑問を持ったまま、何度も転職を繰り返した。転職する先では派遣社員で働く時もあったし、バイトや契約社員もあった。そして、〝何のために働きたいのか〟に対しての答えを自分で見つけるために様々な業種にチャレンジをした。しかし、探しても探しても、そんなに簡単にポン!と答えが出てくれるようなものではなかった。
接客・イベント・事務・保育・コールセンターなどなど興味がある仕事を手あたり次第やってみたものの、心の中にもやもやが残ったままだった。
でも、とある仕事で私は自分の心に刺さる素敵な言葉と出会う。
ある言葉との出会い
「あなたたちは何のために働いていますか?」
私が転職した会社のある会議の最後で、私の課の長は皆にそう言葉を投げたことがあった。いつもと何も変わりはない定期的に開催されている会議なのだが、突然、最後に課長はめずらしく業務の内容以外の話を始めた。
「アポロ11号は、何故、月へ行くことが出来たのだろうか、という話をまずはさせてほしい」
「あの時代に、何故、月を目指せたのか」
突然の話は、私たちの今の時代から五十年以上も前の出来事から始まった。スマートホンや電子レンジなどの家電はまだ存在せず、カラーテレビなんて高くて買うことが出来なかった遠い時代に人々は何故、月に行けたのだろうかというものだ。
深く考えたことはなかったが、思えばものすごい事だなと話を聞きながら考えた。携帯なんてない時代に月を目指したのだから、人類は。私はその話と今の仕事にどんな関係があるのかと、ドキドキしながら聞いていた。
そして、話はNASAを支えたある清掃員の出来事になった。課の長はゆっくりと話を続けていく。
「1962年、ケネディー大統領がNASAを視察に訪れた時、廊下に箒を持った清掃員がいて、話しかけたんだ」
「あなたは何の仕事をしているのですか?と」
「すると、清掃員は胸を大きく張り、誇らしげに答えた」
「大統領、私は人類を月に送るのを手伝っています!」
課長が言いたかったこと
「NASAの清掃員がNASAを綺麗にすることで〝人類を月に送り出す手伝いをしている〟というように、私たちは仕事をすることで何をしているのか」
「私は皆が仕事をしていることに感謝をしています」
課長のその言葉は私の胸に深く刺さり会議が終わっても考えた。家に帰っても考えた。きっとまだ考え続けいつも胸に言葉を刻んで仕事をしている。
何故アポロが月に行けたのか、それは月へ行った十数人の宇宙飛行士だけでなく、その下で努力を続けた何万人いや何十万人がいたからだ。その人たちが支えとなり月へ行くことが出来たのだ。ひとりの技術者だけでもないひとりの清掃員だけではない、何十万の夢を持って働いた人々がいたからなのだ。
課長は、きっとお金や安定なんかよりももっと大事な〝何のために〟を、働くことがどういうことなのかを教えてくれたのだ。
私はやっと気が付いたのだ。
私は何で働いているのかを。
とっても簡単なことだったはずなのになんでこんなに難しく、時間がかかったのだろう。バカだなと笑みがこぼれた。でも、きっとそういうものだったのだろう。人生で突然始まる答え探しの答えは、簡単に見つかりそうでとっても難しいのだ。
でも、人生は探している何かが見つからず苦しい事は多いけれど、その何かにやっと出会い見つかった時の感動は計り知れないし、感動に出会えば人生は奥が深く辞められないななんて思う。
世の中の一ミリでも
私は今、自分の力で世の中のどこか一ミリでも変わってくれるなら働く意味があると考え仕事をしている。
それが正社員だろうがなんだろうが関係は無い。
自分の力で変えたどこか一ミリに、大きな意味があるのだ。
例えば事務の仕事だって、工事現場の事を知らなくたってオフィスで工事の書類をまとめる作業をするだけで、次に現場で工事をする人が助かるかもしれないしお客さんだってそのおかげで早い修理を頼めるかもしれない。事務の仕事ひとつだって、目には見えない世の中を変えている力がたくさんある。
ただの単純作業でも、その先に喜ぶ誰かがいるのならそれは素晴らしいことだと私は思う。
私は何のために仕事をしているのか、世の中のどこか一ミリを〝幸せ〟に変える為だろう。そして、その幸せを感じた時私も幸せになれるのだ。だからきっと、働きたいともっと前に進める。
私はそれに気が付いてから、やっと仕事が楽しいと思えるようになった。
自分だけの仕事で
そして、今の私には夢が出来た。
執筆で誰かを笑顔にしたいという夢が。
ブログで過去の経験を書いて誰かの助けになりたい。
執筆で誰かの心を少しでも幸せにしたい。
私の書いた文章を見て、明日が明るいと笑っていてくれる誰かがいて欲しい。
私が創り出した仕事の一ミリで、ずっと先の未来で笑っていられる誰かが一人でもいて欲しい。
私の言葉ひとつのきっかけで、誰かの未来が明るく変わりますようにと願って歩く私が今いるのだ。
だから私は、フリーライターになった。自分ひとりで自分だけの文章で世界の誰かに生きる力を届ける為に。
そして、執筆で出来ることを増やしながら稼ぎながら……私は今、誰かの胸を熱くできるような小説を書いてコンテストに応募することもしている。
フリーランスで生きていくには、まだまだ稼ぎは少ないし長い長い道のりだけれど、私は六月末で大きな企業での仕事を辞めて、自分ひとりの仕事で自分の創り上げた働くで、どこかの誰かを一ミリでも笑顔にするために働こうと前に進み始めた。
それが、私が幸せになることが出来る働き方だと気がついたから。
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