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まゆみちゃんのはなし(3)

まゆみちゃんとうちで遊ぶときは、お菓子を食べながらおしゃべりをするか、お人形さんで遊ぶかだった。私は空想ばかりしている子供だったから、ごっこ遊びが大好きだった。まゆみちゃんはいつも嫌な顔ひとつしないで私のごっこ遊びに付き合ってくれた。
「今日はどんな設定にしようか?」とまるでまゆみちゃんが遊びたいみたいに。でも本当は知っている。まゆみちゃんはごっこ遊びが好きなわけじゃなくて、私が喜ぶのが好きなんだ。私はまゆみちゃんの好意に甘えて
「いつもの!」と張り切って答えてしまう。
いつも設定は私が女の子でまゆみちゃんは男の子だった。私が望んだわけではなく、まゆみちゃんが男の子役をかってでたのだ。
初めは幼稚園の頃のおままごとの延長だった。お父さんがいて、お母さんがいて、子供がいて。それがいつの間にかもっと若い男の人と女の人に変わった。高校生くらいの。女の人は高校生になった私だ。私は毎日学校へ行き、友達と遊びに出かけ、アルバイトをして彼氏とデートをする。彼氏はまゆみちゃんだ。実際の私はまゆみちゃんにばかり興味があるから友達はすごく少ない。遊ぶのもまゆみちゃんばかりでまゆみちゃんがいなければ外にもいかない。でもごっこ遊びの私は友達がたくさんいて、行動的で彼氏のことが好きだ。だけどデートで何をするのかはよくわからない。一緒に帰って、おしゃべりして、手をつないで。まゆみちゃんとすること以外はわからない。
でもまゆみちゃんのやる彼氏はいつも色んなことをしてくれる。映画を見に行こう、とかゲームセンターに行こう、とか花火を見に行こう、とか。
そしてデートが終わると必ずキスをしてくれた。私はまゆみちゃんはこういうことを男の子としてるのかな…と思いながら、でもまゆみちゃんが今私とごっこ遊びをしてくれているのがうれしくて夢中でお人形の彼氏とデートをしていた。

小学校を卒業して、私とまゆみちゃんは違う中学に進学した。そもそも学区域が違っていたので違う中学に進学することは決まっていた。私は中学受験をしようかと思っていたが、直前でやめたのだ。中学に入ってから、まゆみちゃんとは一度も連絡を取らなかった。お互い新しい環境に慣れるのに必死だったんだと思う。ごっこ遊びの事はいつの間にか記憶の片隅に追いやってしまっていた。

それから私は中学2年生の時に彼氏ができた。
部活が終わった後に待ち合わせをして、一緒に帰ったり、名残惜しくおしゃべりをしたり、手をつないだりした。全部まゆみちゃんともしてたこと。
高校生になると、男の人とキスをしたり、裸で抱き合ったり、セックスをしたりした。
ごっこ遊びで途中まではお人形の彼氏としてたことだ。お人形の彼氏の方がドキドキしたり、安心したり、大好きだったのは秘密だけど。
私たちがあの時もっと大人で、ごっこ遊びじゃなくて、本当にまゆみちゃんのこと裸で抱きしめられたらよかったな、って男の人と裸で抱き合った後に何度も思った。そしたら取り巻きの女の子たちの中で、時より見せるあんな淋しそうな顔させないでいられたかな。

そして今、私の恋人は実はまゆみちゃんに似ている。時折見せる淋しそうな顔も、私だけに見せる優しい静かな笑顔も。私は人に慣れるのが苦手で、お付き合いを何年しても慣れずにお別れすることも多いのだけど、今の恋人とは5年付き合ってやっと一緒に食事をするのも、セックスするのも、裸で抱き合って眠るのも大好きになれた。人との距離が近すぎるのが大体苦手なのだ。
だけど、それが大好きになった今、
久しぶりにまゆみちゃんの夢をみた。
そして思うんだ。
今まゆみちゃんの隣に、キスをしたり裸で抱き合ってしあわせな気持ちにしてくれる人がいますように、って。


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