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犬をかう ~柴犬にしよう!の巻~

私がミアと一緒に暮らし始めたのは六年前。夫が犬を飼うぞ!と宣言してから約一年半後のことだった。小さい頃から犬好きな私は両手を上げて大賛成。だったらSPAで保護犬を引き取ろうと提案した。

SPAというのは、La Société Protectrice des Animaux の略で、動物保護団体のこと。フランスでも捨て犬や捨て猫問題が深刻で、躾が出来ないとか、バカンスに連れて行けないとか、身勝手な理由で犬や猫を手放す人がいる。

犬を飼いたいならもらってくればいい、と、即座にSPAが頭に浮かんだのは、元々「犬を買う」という概念が私にはないからだ。ウチの実家で暮らしていた犬たちは皆、近所や知り合いからもらってきた雑種犬ばかりだった。

だけど夫は反対した。初めて飼う犬は最初から育てたい、と強く主張してきた。ちなみに夫の父親は転勤族で引越しが多く、一度も動物を飼ったことがないのだそうだ。

じゃあまあ言い出しっぺの夫がそう言うならそうしましょう、ということになり、ブリーダーさんにお願いすることにした。

犬種は夫の希望で柴犬に決めた。昔ウチの実家で飼っていた柴犬(実際は柴強めの雑種)と同じがいいと、またまた主張してくるので、まあじゃあそうしましょうってことになった。


柴犬専門のブリーダーさん
五月、夏が待ち遠しい季節。ヨーロッパで日本犬が流行り出した頃。自分たち調べで当時パリから一番近い柴犬専門のブリーダーさんのところへ見学に行くことにした。

パリから車で三時間ほど。森に囲まれたエントランスは周囲を草木に覆われて薄暗く、一見では見逃してしまう。二回ぐらいUターンを繰り返してやっと辿り着いた。

道路沿いの森を抜けるとひらけた土地があり、家が建っている。その裏手には大きな柵がいくつもあって、一匹につき一区画が与えられていた。多少の差はあれ、一区画だいたい畳七、八畳ほどはあるだろうか。どの犬ものんびりと優雅に過ごしている。

ブリーダーさんはそれぞれの名前と性格などを自慢そうに話しながら案内してくれた。

大会で賞を取ったのはこいつの息子だ。

こいつとあいつは仲が悪いから離しておかないとエライことになる。など。

どの犬も凛々しくて美しい顔をしている。

ひと通り回って最後に案内してくれた区画には年老いた犬がいた。ブリーダーさんはその老犬の名前や性格、好き嫌いなんかも教えてくれた。

現役犬と比べると目が小さくて毛並みが悪く、細い足で立つのがやっとなくらいに弱って見える。名前を呼ぶと私たちの方へ寄ってきて、手を差し出すとニオイを嗅いでくれた。

こいつはもうずっと前に引退してるんだ。

老犬は優しい顔つきでブリーダーさんを見つめて尻尾を振っている。すぐに、仲良しなんだと分かった。。。もしかしたらお腹が空いていただけかもしれないけどね。


柴犬がいっぱい
見学が終わり、家の中で詳しい説明をするからと玄関の方へ近づくと、ワンワンワンワンと騒がしい声が聞こえてきた。扉横の窓越しに低い犬の影が見え隠れする。

扉を開けるとそこには、きつね色の生き物がわんさかと群がっていた。

柴シバ柴シバ柴シバ、全員シバ!

引き取り手のない子や事情があって戻ってきた子を飼ったり預かったりしているのだそうだ。十五、六匹はいたと思う。

手を差し出しながらその場にしゃがむと、飛びついてくる子もいれば、距離を置いてウロウロする子もいる。クインクイン鼻声で甘える子もいれば、ウオンウオン吠えて威嚇する子もいる。

それぞれに個性があるのがわかる。同じ犬種だけど、同じ犬はいない。みんな違ってみんなかわいい。

この中から一匹譲ってもらうのはどう?

そう提案した私の声は、犬の声に紛れて誰の耳にも届かなかったらしい。無視された。

夫とブリーダーさんはテーブルで手続きの話をしていて、私はしゃがんでシバに囲まれたまま至福を味わっている。このままこの子たち全員引き取りたい。。。なんて、夫が知ったら驚愕するような妄想までしちゃったりして。


やっぱり犬が好き
小さい頃からウチにはいつも犬がいた。実家を出てひとりで暮らすようになってからは、家族よりも犬に会うために帰省していた。

年に一回、私が帰ると嬉ションしながら腰を抜かして喜ぶ犬。私のためにそこまでしてくれる存在。それが犬。

一緒に歩いて一緒に驚き、一緒に走って一緒に笑う。犬と暮らしているだけで、自然に笑えて優しい気持ちになれる。

愛情という言葉だけでは足りないほどの、大きな暖かい温もりを心に注いでくれる犬。

だから私は犬が好き。


犬を飼いたい本当の理由
実は、特に犬好きでない夫が犬を飼おうと言い出したのは私のためだった、と後になって聞かされた。

体調を崩して、気が滅入っていた私の日常を明るく前向きなものにするためには犬の力が必要だ!と思いついたのだそうだ。

やたらと柴犬にこだわったのは、昔ウチの実家で一緒に暮らしていた柴犬(実際は雑種)を私が溺愛していたのを覚えていたからだってさ。


とまあそういう理由で犬を飼うことになりました。
そんな私たちがミアと出会うまでの経緯は次の回で。

子犬の頃のミアちゃん

次回はいよいよミアちゃん登場!!
~ミアと家族になる!の巻~へ続く


#うちの保護いぬ保護ねこ  
*実際に今一緒に暮らしているのは保護犬ではありません。

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