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アルプスの水道水

どうやらお腹を壊したらしい。どうも水が合わなかったようだ。

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ここのところ季節の変わり目で不安定な天候が続いている。気温はグングンと上昇し、曇りでシトシトと雨が降っていたとしても寒さは感じない。

そんな中、いつものように朝台所に立って温かい飲み物を作っていると、浄水器の容器が白い水垢で汚れているのに気が付いた。窓から差し込む太陽光が反射して、ほのかに銀色っぽく光って見えた。よく観察してみると水の入っている内側というより外側の部分が白く曇っている。

月イチでカートリッジを交換する度に洗ってはいるものの、洗い場の近くに置いていたので水はねでついてしまったのだろう。透明なプラスチックについた白いウロコのような模様を眺めていると、寝ぼけた脳みそのシワを辿ってほぐすように言葉がポッポッと湧いてきた。

水垢、水、ミネラル、カルキ、硬水、ヴィッテル、エビアン、上水、紅茶が濁る、お湯、常温水、溜め置き、水の温度。。

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パリに住んでいた頃はずっと水を買っていた。日中はほとんど家にいなかったし持ち運びが便利なので、外出先での水分補給にはペットボトルのミネラルウォーターが欠かせなかった。愛飲していたのはボルビック。それがない時はエビアンを買っていた。

その頃は家で喉が渇いた時、買い置きの水がなければ水道水をそのまま飲んでいた。お茶を入れる時以外はだいたい普通に水道水を使っていた。

フランスの水道水は硬水なので、お茶を入れると薄い膜が張る。硬水に含まれる豊富なミネラルがお茶の成分と反応して出来るものらしいので、害はないが味に濁りが生じる。個人的な表現で言うと、舌にべっとり絡む感じ。

南仏に越してきてからは家にいる時間が長くなったので、必然的に浄水器、ブリタを買った。大がかりな設置作業が必要ないし、買い物で重いボトルを抱えて帰る必要もなくなる。飲料水としてだけではなく製氷したり料理にも使えて手軽で便利だ。

以降、特に深く考えることもなく家では習慣的に浄水器の水を飲んでいた。

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何の気もなしに浄水器の水で作った温かい飲み物を飲みながらも未だ寝ぼけてボーっとした頭の中では引き続き言葉が繋がっていく。

。。お湯、常温水、溜め置き、水の温度、浄水器、水の消費期限。。。

浄水器の表示を見ると期限はあと一週間。ちょうどカートリッジの買い置きが無くなっていたので買いに行かなければならない。

。。浄水器、水の消費期限、賞味期限、そー言えば昔ペットボトルのミネラルウォーターに異物が混入してるってニュースで見たことあるなぁ、あれってカビだっけ?ん?そー言えばミネラルウォーターにも賞味期限が記載されているよね、消費期限だっけ??。。。

目の前にある浄水器の容器をじっと見つめて考えてみた。月イチでカートリッジを交換するまでは継ぎ足しながら使っている。ひと月分の溜め置き水。

冬はそれほど気にならないが、夏になると蛇口をひねって出てくる水の方が浄水器の中の水よりも冷たくなる。浄水器は常温で置いてあるので当然だ。陽の光を浴びずに暗い管を通ってきた水の方が冷たいのは当然なのだ。

ふむふむむむむ。

朝は何かと忙しいからそれ以上考えるのは止めて通常モードで支度をする。

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結局、水に関する思考が途切れたまま何だかんだとバタバタしてしまって、浄水器のカートリッジをネットで買ったのが期限ギリギリになってしまった。週末を挟むので入手するまでに一週間弱かかってしまう。

まあ一週間くらいなら水道水でも大丈夫っしょ。ってか、水道水で良くない?ここはアルプ-マリティーム県、本家アルプス山脈の麓なのだ。美味しい水で有名ではないか!!パリのどこぞの河川や地下水なんかに比べたら、高級ブランド張りのリッチクオリティーのはず。

という訳でいつも通りにガブガブと水を消費していたら、二日目あたりからおなかの調子が怪しくなってきた。食事は普段と変わりない。なのにお腹の調子がすこぶる良くない。

一瞬、昨年の絶不調が脳裏をよぎった。ま、まさか!またか?いや、でもそこまで痛みがある訳ではなく、単に調子が悪いのだ。なぜだなぜだなぜだ!!食生活で変わったのは水だけだ。

どうやら超高級ブランド張りにリッチな本家アルプスの水道水は私のカラダには合わないらしい。悲しいかな、貧乏性だからなのかしら。。。

急遽、ボルビック大先生に切り替えたら少し楽になってきた。

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元々ストレスに弱く、すぐにお腹が痛くなっちゃう体質なのだ。食べるものには何かと気を遣っていたが、まさかここにきて水にやられるとは!しかもカフェとかレストランでは普通に水道水を飲んでいた。家で飲む水を水道水に変えただけでこんなすぐに影響が出るなんて。

そー言えば、シャワーヘッドにイオンだかなんだかが付いた浄水装置を付けている日本人の知り合いがいた。お風呂で浄水装置はやり過ぎじゃない?って思ってたけど、侮るなかれ。髪やお肌がツルツルのスベスベになるってめっちゃ自慢してたのを思い出した。

んなこと言ってる私も実は、フランスに来てから水で顔を洗うのを止めている。もっぱら拭き取り派だ。

パリに住み始めてすぐに肌荒れが酷くなり、皮膚科に行く度に、あなたは水で洗顔しちゃだめよ、と言われたからだ。そして薬局で買える基礎化粧品の好きなブランドを聞かれ、化粧水やらクリームやら毎日のお手入れで使うものを処方してくれた。皮膚科医の処方箋だからもちろん保険が使える。

そーゆーことがあったから、それまで使っていたデパコスを卒業して薬局のコスメに変えたのを思い出した。そうそう、水。キッカケは水が肌に合わなかったからだった。

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水のエンジニアをしている夫の妹が、水道水もミネラルウォーターなのよ、と言っていた。確かに。今回はその豊富過ぎるミネラルにお腹をやられてしまったのだ。本家本元アルプス山脈の水は私には少々キツ過ぎると分かったので、浄水器とはこれからも末永くお付き合いしていこうと思います。

暑い季節に不安がよぎったら、冷蔵庫に入れればいいじゃないか。ね。

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