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初夏のカナディアンロッキーに呼ばれて

久しぶりに旅行に出ていた。アメリカは7月4日が独立記念日。その州なら夫が連休を取れるというので、思い切って計画。

最近の私はわかりやすく煮詰まっていて、Twitterがみるみるサボりがちになり、noteも一記事書くのに何日もかかっていた。

だいたい、こういうときは他人の言動が自分の心を占領している。誰かに投げつけられた発言に落ち込んでいたり、羨望や嫉妬を抱えきれずひとり相撲していたり。

日常とは違うどこかへ行きたい。自然がいっぱいあるところ。空気がきれいなところ。

今回の行き先は初めてのカナダ。隣国とはいえ海外なので携帯がつながるのはホテルのwi-fiのみ。それがちょうどよかった。

5泊6日カナディアンロッキーの旅。5年ぐらい「行きたい」と夫に訴え続けて、ようやく叶った憧れの場所。

サンフランシスコ→カルガリーの3時間フライト

自宅から空港までは車で40分ほど。いつもは起床後ウダウダしている長男も「飛行機に乗れる」ことでテンション高め。

フライトは3時間弱。日本との往復を何度も経験している長男にとっては余裕の距離だ。私たちも随分と心得ているので楽チン。

問題は歩きたい盛りの次男。空港へ早めに着いてクタクタになるまで遊ばせる。無事、きれいに熟睡。機内ではブラックマヨネーズ吉田さんのエッセイを3分の1ほど読んだ。

レンタカーを借りてバンフ国立公園を目指す

車を走らせてすぐに「好きだ」と思った。道路がきれい。緑がきれい。天気予報では雨や曇りが多くて心配していたのだけれど、初日はまるで訪問を歓迎されたような快晴だった。

目的地までは約1時間半。近づくにつれてどんどん景色が壮大になっていく。これがロッキー山脈…!フロントガラス越しでも美しい。これから6日間はこの山々と共に思い出を作るのだ。

到着初日:眠らないバンフの街

ようやくチェックインできたのが19時。荷物を置いて、とりあえず屋上へ行ってみる。ダウンタウンは想像よりもショップやレストランが多く、散策しがいがありそう。

山々と街が一体化している様を眺めていると、ときどき遠近法が狂ったり、遠くの山が陽炎に見えたりする。まるで街を守っているかのような母なる存在感。厳しい顔つきと優しい眼差しを併せ持って。

2日目:美しい景色を横目に大氷原体験へ

バンフはまた終盤に戻ってくるので観光は後回し。早朝に少しだけお散歩。

名残惜しさを感じながらドライブ開始。ジャスパー国立公園にあるコロンビア大氷原を目指す。相変わらずの山々と、ところどころに湖。時間が決まっているので急がなければならない。けれど見逃せない光景だってあるわけで。

「子どもたちが飽きないうちに」「子どもたちが寝ているうちに」子連れ旅はいつだって真剣勝負。あぁ、ここでのんびりしたいよ。次第に山の積雪が増えて、いよいよ氷河が見えてきた。

ここかな?ここだよね?あいまいな下調べを後悔しながら、ようやく大氷原体験。バスと雪上車を乗り継いで、氷の世界へ足を踏み入れた。

びゅうびゅう風が舞って凍えそう。身を縮める大人をよそに、長男は氷を足で割ってみたり、雪解け水を触ってみたり、異世界を存分に楽しんでいた。たくましいぞ。

併設のセンターでランチや休憩を。貴重な思い出ができた…と噛み締めるのは親ばかりで、子どもたちにとっては「ちょっと珍しいお出かけ」ぐらいの認識なんだろうなぁ、などと思う。

この日はさらに北上して、ジャスパー国立公園の隣りにある街で宿泊。ドライブが多い一日だった。

3日目:ジャスパー国立公園は雨模様

バンフ国立公園と同様、壮大な山々と美しい湖が楽しめるジャスパー国立公園。観光のために用意された丸一日はあいにくの…雨。どんより灰色の雲の下でも、わずかにエメラルドグリーンを放つ「パトリシア湖(Patricia Lake)」。お天気だけはどうしようもない。歯がゆい。

雨の中ジャスパーの街を散策していたら、素敵なコーヒーショップに出会った。蓋の上にある黒い粒はチョコレート。あっさりしたカフェラテに濃厚なビターチョコがうまく合う。この日は早々に切り上げ、ホテルのプールで子どもたちと遊ぶことに。よくわかんない山とか湖とか見るより、よっぽど楽しそうにしていた。

4日目:再び南下して絶景の湖巡りへ

祈りが届いて、晴れ間が戻る。この日は旅行中の最長ドライブ(4時間半)を乗り越えなくてはならない。

朝のうちに子どもたちをたくさん遊ばせて、次男が昼寝に入るタイミングで出発。早く進めばいいのに「せっかく晴れたんだから」と貧乏性が顔を出し、昨日どんより空と写真を撮った「パトリシア湖(Patricia Lake)」へ再び。

絶景が待っていた。水面に映る山の姿はヒダまでも正確で、湖の透明度を物語っている。一文でも心に留まるものがあれば「この本を読んでよかった」と思うように、一景でも心に留まるものがあれば「この旅を選んでよかった」と思う。

ここからが本番とでも言うかのように、快晴のジャスパー国立公園は心を打つ景色の連続だった。野生のエルクはこれまでの道中で何度も出会ったけれど、背景が変わると迫力も増す。

カラフルな貨物列車。山々と水面のちょうど境目を走る。実用的でもあり、絵画的でもあり、二役を担う列車なんてそうそうない。雲ひとつない青空も爽快でいいけれど、雲が景観を変えてゆく様を眺めるのも好きだ。

目的地まであと1時間弱というThe Crossing Resortでようやく休憩。レストラン、ショップ、宿泊所を兼ね備えているロッジ。 子どもたちに羽を伸ばしてもらう。快晴から一転どよん。晴れた日の夜に、ここから見る星空はこの世のものとは思えないらしい。

ドライブすること合計4時間半、バンフ国立公園で絶対に行きたかった湖の一つ「ルイーズ湖(Lake Louise)」に到着。7月はカナディアンロッキーのハイシーズンにつき駐車場は朝7時半には埋まってしまうという。早朝か夕方が狙い目。

写真は夕方16時半ぐらい。日が長いので陰りもなく美しい眺めを捉えることができた。

湖に沿うように建てられているホテル(Fairmont Chateau Lake Louise)。かなりお高めなのだけれど混雑も気にせず思いのままに湖を堪能できるとするならば、宿泊する価値はありそうだ。

そして最大の見どころ「モレーン湖(Moraine Lake)」へ。世界でも唯一無二の美しさを誇るという。想像を超えた色と光。まるで背比べをするように並ぶ雪山の迫力も相まって。

高台からの眺めがすごかった。エメラルドブルーの…と頭の中で描写しながら、あわてて首を横に振る。人間が作った色の名前に当てはめてしまうのはふさわしくない気がしたから。

雲が太陽を隠すと、水面から光が消えて色味はさらに強まった。横から平行に見るのと上から見下ろすのではまったく濃度が変わる。他の湖も同様に、冬場は凍るので夏しか見ることができない希少性。思い切ってよかった。

いたるところで出会ったシマリスは、とても人懐っこかった。観光者ばかりなので人間慣れしているのだろうか。長男をじーっと眺めているところをパチリ。

5日目:子どもたちのサービスタイム

最終日はのんびりしようと子どもたちのサービスタイムに。バンフに隣接したヨーホー国立公園をドライブしていたら山あいにあるプレイスペースを見つけたので、しばしランチや自由時間。

長距離ドライブに慣れないホテル生活。大人がやりたいことに付き合ってくれてありがとう。きっと大部分は退屈だったろうに、一緒に楽しんでくれたこと、笑って過ごしてくれたことに心から感謝。

最終日:帰路へ着く

最後の日は雨だった。お天気に一喜一憂する旅だったな。こればっかりは運に任せるしかない。大雨の中、物々しさを増す山脈を名残惜しく眺めながら空港を目指す。さようならカナダ、さようならカナディアンロッキー。

おわりに

爽やかな写真ばかりを集めてみたけれど、この裏側では終始子どもたちとの格闘があった。

お出かけ好きな夫と一緒に旅をすると、いつも「子どもたちが巣立ったら二人でまた来ようね」と約束する。

道のりが険しい渓谷、旬の食材を出すレストラン、ご当地ビールが飲めるバー。まだまだ行きたいところがたくさん、たくさんあった。だから身軽になったら二人でのんびりしたいねって。

でも、もしいつの日か実現したとして、きっと思い出すのは子どもたちと過ごしたガチャガチャした時間なんだろうな、なんて考えて、うっかり涙を先取りしそうになる。

重苦しい煮詰まりはほどよく解けてった。雨だろうが風だろうが、凛とした姿で存在する自然の姿を見ていたら、自分もそうあろうと思えた。

旅レポートおわり☺︎

最後まで読んでいただいてありがとうございます。これからも仲良くしてもらえると嬉しいです。