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にんげんの命

昔、大好きな父の肉体から魂が抜ける瞬間に居合わせた。

本当に、カラダはすぐに、単なるガランとした使い古した容れ物みたいになった。

だけど、父が生前に撒き散らしていた言葉や姿や音の粒々が私の中にも沢山入っているから、何十年経っても居なくなる気配が無い。

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それより、私にとっては、人が産まれる瞬間の方が100倍衝撃的だった。

お腹の中に命が宿って、育んで、育んで、育んで、世界に放つ。

何これ?

わたし、お腹の中に人間を入れて育めるんです。

とんでもない機能を携えて生きてたんです。


んで、世界中で、全員のお母さんが、今までこんなとんでも無いことを繰り返してたんかと。


マジでこんなヤバい世界に生きてたんかと。


ブラックホールみたいな場所と産道で繋がったまま、瞳孔が開いておさまらないって感じで産後の数日を過ごした。


新品のカラダのふにゃふにゃしわくちゃの赤ちゃんが美しすぎて、自分も元を辿ればこの生き物なの??自分の親に、こんな尊い姿を見せて生きていたの??

と思ったら、親の有り難みじゃなくて、自分の有り難みがめちゃくちゃよく分かった。


伸びたり縮んだり、丸くなったり、かさかさしたりぷるんぷるんしたり、こんな面白い乗り物に乗って死ぬ瞬間までまだしばらく生きられる。

(写真は、長女が4歳の時に描いてくれた"おかあさんのおなかのなか")



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