男子サッカー3位決定戦後のインタビューから感じたこと

昨晩、オリンピック男子サッカー3位決定戦があり、名残り惜しいが内容的には全くおしい試合でもなく日本が負けてしまいました。

試合後Twitterで「久保の号泣に心打たれた」「試合には負けたけど感動した」「感動する試合をみせてくれてありがとう」という投稿をいくつもみた。「遠藤戦犯」という単語も見た。一般の人よりサッカーを見ている私は1-3で負けて試合を感動しか残らない試合でよかったのかと考えている。たしかに負けていても全力でやりきるというスポーツ観戦の醍醐味を享受するのもいいとは思う。しかし、号泣によって日本のいくらかの人を感動させた久保選手さえも試合後インタビューで「そんなものは何にもならない」「結果、手ぶらで自分の家に帰ることになりますし」と答えていて、吉田選手は9月のワールドカップ最終予選のメンバーにこの中から食い込む選手がいれば、ということを話していた。

さらに、「サッカーを知らなすぎる」と話した田中選手のインタビューが印象的だった。https://hochi.news/articles/20210806-OHT1T51241.html ぜひ読んでほしい。1対1のデュエルで勝つということが重視される日本サッカーだが、スペインやメキシコはデュエルで勝つことは基礎の部分で、1対1を重視するサッカーを「通り過ぎている」と表現していた。スペインやメキシコのようなチームは守備時にもコンビネーションを行い、1対1を超えた2対2、3対3での戦術を定着させている。私は川崎ファンで、田中選手のインタビューをたまに見ているが、今までよりもサッカーIQが高くなったコメントだと思った。割と感覚でサッカーをしていると思っていた田中選手が上のような回答をしていて、田中選手の成長を感じた気がした。

これらのインタビューから、この試合での学びや経験を残すことが重要だと強く思った。サッカーが選手や監督だけではなく応援している観客が勝敗を分ける要素にもなるスポーツだとするならば、我々観客の質も上げなければ日本は世界で通用しないだろう。

ここからはさらに主観をいれながら書くが、川崎びいきの私がいつも川崎の試合をみているフィルターで昨晩の試合を語るなら、あのプレーで遠藤を、吉田、富保、相馬を評価してはいけないのだ。

森保監督は守備意識が強い。攻撃だけできる選手と守備だけできる選手なら間違いなく守備だけできる選手を使う監督だ。守備してボールを奪ってこそ攻撃ができる、という考えは理解できるが、3位決定戦でもメダルを獲得できず、結果を残せなかったのだから、批判されて当然だ。私は批判する。

遠藤選手はデュエルが強い。対人守備やヘディングでの競り合いにおいて相手選手に負けていない。ドイツリーグでデュエル勝利数が最も多いというのはもちろんすごい数字だが、リーグ中位くらいの所属チームで守備の機会が多いのは当たり前だ。オリンピックでもその強さを発揮することはできた。しかし、足元の技術が不安だ。トラップをうかせることはもちろん、縦パスがまあ通らないし、視野が狭い。奪った後、すぐカウンターにつながるパスを出せないのが、よくない。さらに足元はないが前線にあがっていく。ボランチは一人上がれば一人は下がってカウンターに注意するのが定石なので、守備特化の遠藤選手が上がると、守備攻撃ともに評価が高い田中選手が後方に下がって攻撃に参加できない。昨晩の試合ではPK献上にマークを振り切られるイエローカードを受けるなどのマイナス点、そして攻撃面での貢献がほぼなかった。最低点だ。

吉田選手、富保選手も主に言いたいのは足元とロングパスの技術面。対人守備がいいだけにもったいなく感じる。

相馬選手は、もうみんなわかってほしい。キックがうまくない。左サイドからカットインしてあげる右足のクロスはまだいいが、左足のクロスでチャンスを作っていない。試合に出ているのは、守備への貢献度が高いことが考えられる。守備でも走って後方まで戻る運動量は評価すべき。しかし、これまでの選考試合と本戦でとにかくキックができないことが分かった。瞬間のスピードは速く、相手守備を置き去りにはできるが、そのあとのキックがよくない。得点に絡むことがない。さらにポジショニングの問題。外で広がってうけるのがほとんどで中でうけることはあまりない。相馬の得意なはがしで相手選手をはがし、不得意のキックで相手選手にボールを献上。昨晩の試合では酒井選手、久保選手、堂安選手など攻撃センスが高い選手は右サイドで活躍できるのに、例のドラミちゃんが左であげきるので得点のにおいはしなかった。後半からは、旗手が入った。旗手は右サイドにボールがあっても比較的中にしぼって右サイドで崩し切ったボールにゴール付近で対応することに努めていた感があった。三笘選手は少ない時間で得点を決め、決定的パスも供給した。それにひきかえ相馬選手にどこかひかるところがあったか、相馬vs三笘論争は最初から言わずもがな、なのだ。

ずっと川崎びいきだから、川崎の選手ばかりよくそれ以外は悪く見えていたのかと思っていたが、そうではないと今回の大会でわかった。

いい選手が評価され悪い選手は評価されない代表戦であってほしい。東京五輪が決まってからというもの、男子サッカーはとても力を入れて合宿やキャンプに行っていた。五輪のスケジュール優先のためにJリーグは過密日程を極め、まさに日本サッカー全体がこの大会にかけていた。それなのに結果を残せなかった日本代表には何が残る?負けても感動できればそれでいいのか、勝った感動を得たくないか。それには、私たち観客のサッカー眼の質も上げなければならないのではないかと思う。

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