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42、アンギオテンシンの話

アンギオテンシンという、今回は以前にもまして「聞いたことがない」と言われそうな名前の物質を取り上げます。なぜこんなもの(?)を取り上げるかというと、血圧上昇に少ながらず(とても大きな)影響を及ぼす物質だからです。以前に血圧上昇の仕組みとして「レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系」という名前を出したことがありましたが、その中に出て来るアンギオテンシンのことなので、血圧が気になる人にとっては避けて通れない物質の一つなんです。

アンギオテンシンはⅠとⅡの2種類が存在します。実際にはⅠ~Ⅳの4種類あるそうなのですが、よく名前が出て来るのはⅠとⅡの2種類です。これはもともとはアンギオテンシノーゲンという名前の物質から始まっています。これは肝臓で作られるものですが、脂肪細胞でも産生されます。ですから脂肪、とくに内臓脂肪が溜まってくる状態(メタボなど)になるとどんどんアンギオテンシノーゲンが作られるかもしれません。イヤですね。

このアンギオテンシノーゲンは前回取り上げたレニンによって分解されます。レニンはタンパク質分解酵素としての働きがあるので、アンギオテンシノーゲンがアンギオテンシンⅠに変換されるんですね。このアンギオテンシンⅠの状態では、生理活性はほとんどないとされています。これがアンギオテンシン変換酵素(ACE)によってアンギオテンシンⅡに変化します。

さてこのアンギオテンシンⅡですが、これは強力に末梢の血管に働きかけて収縮させるため、これだけでも血圧が上昇します。それに加えて、副腎皮質からアルドステロンの分泌を促進する働きもあります。こうしてアルドステロンが分泌されると、これも以前に取り上げた通りですが、ナトリウムの再吸収を促進させる働きがありました。ですから、これに伴って水分が一緒に移動するので、血液中の水分量(循環血漿量)が増加します。こんなことも相まって血圧が上昇します。

アルドステロンはナトリウムを再吸収して体内に貯留させるとき、反対にカリウムを排出させています。こういったような、カリウム、ナトリウム、水分量が変化することで血圧が変わりますので、それがレニンの分泌にフィードバックされて分泌量、ひいては血圧をコントロールしています。

この一連の流れを「レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系 ( R-A-A系)」と呼ぶんでしたね。

表記で私は「アンギオテンシン」と書いていますが、「アンジオテンシン」と記載している記事やサイトも存在します。同じものなのですが、混同しやすいかもしれません。実際に混用しているサイトもあるとのことです。薬学用語の解説を行なっているサイトでは「アンジオテンシン」の方を採用しているとのことでした。英語の綴りでは(英語: Angiotensin)ですから、「g」をどう読むかで「アンギオテンシン」なのか、それとも「アンジオテンシン」なのかに分かれてしまったということなのでしょう。

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