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腎臓の病気 慢性糸球体腎炎の話

どんな病気か

慢性糸球体腎炎とは病気のグループの名前です、一つの病気ではありません。このグループにはさまざまな病名が含まれます。ピンとこない名前かもしれませんが、IgA腎症だとか、膜性腎症、紫斑病性腎炎といった名称が並びます。一つ一つが異なる病気なので、それに応じて治療も違ってきます。

さて、糸球体の炎症で起きる病気で、タンパク尿や血尿が出るモノの総称して「糸球体腎炎」と称します。その中でも慢性的に、長期にわたって続く時には「慢性糸球体腎炎」と呼びます。腎臓病の中でも最も多い疾患といわれており、急性糸球体腎炎の原因となる一部の病態から発生するのではないかとされています。また、ときには、急性糸球体腎炎が治癒することがないまま、長期化・慢性化することもあります。しかし一般的には、慢性糸球体腎炎の原因は特定できない例が多数存在しています。

症状についてですが、通常はごく軽い症状しか見当たりません。ですから、つい軽視してしまいがちです。場合によっては全く本人が気が付かない事もあるでしょう。そのまま長期間にわたって病気が継続してしまうと、当然ですがどんどん悪くなる傾向が出てくるでしょう。そして浮腫や高血圧が出てきます。どんどん悪くなると、最終的には腎不全と呼ばれる状態になってしまいます。

腎不全とは、腎臓が持つ本来の機能を果たせなくなった状態ですから、糸球体の網の目のような構造が詰まってしまい、破綻してしまった状態ですね。こうなると、老廃物を体外に出すことが困難になってきます。一説によると、腎臓の機能が7割も失われて、正常な状態の30パーセントまで落ち込んだ時に「腎不全」と呼びます。しかも厄介なことに、慢性腎不全と呼ばれる状態になると、腎臓の機能は回復が不可能になるとされていますから、これではもう治らないことになります。最後に行き着くのは「人工透析」しかありません。こうならないためにも、腎臓の病気は早めに気付いて手当てをしなければなりませんね。

今回は、慢性糸球体腎炎の中の一つについて、紹介します。

IgA腎症

先に挙げた慢性糸球体腎炎のグループに含まれる病名の一つで、IgA腎炎、あるいはバージャー病(Buerger病)と呼ばれたりもします。IgAは免疫グロブリンの一種で、体の中にある抗体の一つです。のどや気管支、腸などの粘膜を外敵から守ります。

時に、粘膜に感染した細菌やウイルスの一部とIgAが反応して結合し、免疫複合体を作って血液中に入り、腎臓に流れ着くことがあります。この免疫複合体が腎臓の糸球体(フィルター)に引っかかると、2~3か月という長時間をかけてジワジワと炎症を起こして、腎臓の組織を壊していきます。こんなことが繰り返されると、腎臓にはどんどん免疫複合体がたまってしまいますよね。

IgA腎症は男性にやや多く見られ、発症する年齢はというと、20歳代、小児では10歳代に多く見られますが、10歳以下でも50歳以上でも発症することがあります。それだけ幅広い年代で起こしうる病気ということですね。その中では若年層に比較的多く、成人では30パーセント以上、小児でも20パーセント以上を占めていることが明らかになっています。

世界的な分布で見ると、IgA腎症が多発する国や地域は、アジア太平洋地域の諸国に多いとされ、反対に北欧や北米では比較的少ないようです。こういった地域差の原因は不明ですが、一部の説によるならば腎生検を施行する頻度と比例するのではないかともいわれています。北米においては白人には多く、黒人ではまれであることも知られています。

現れる症状としては、日本では健康診断などで偶然にタンパク尿や血尿が発見されるものがとても多いのですが、海外の他国ではこの比率は低いようです。むしろ、肉眼的血尿や浮腫などの症候性所見の比率が、日本よりも高くなっています。この差異の理由を考えてみると、日本では医療機関を受診するとまず検尿が行われることが挙げられます。加えて、腎生検を施行する対象となる症例の選択方針が、日本と他国では基準が異なるためと考えられています。欧米諸国の中でも腎生検を比較的多く活発に行っている所ではIgA腎症の発現頻度が高いようですね。

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