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18、クロール(塩素)の話

今回取り上げるものはクロール(塩素)です。水泳の話や塩素消毒といった話ではありません。身体に必要なミネラルの話です。とは言っても、これだけだと分かりにくいかもしれませんが、食塩の塩化ナトリウムでいうナトリウムの相方、「Cl」のことです。医療機関を受診して採血をした場合、多くの人が血中濃度を測定することになります。それだけ頻度が高い検査の一つです。

一般にナトリウムやカリウムと一緒に測定される電解質項目の一つとなっていて、血液濃度としては 98~108 mEq/L(基準値なので施設によっては多少数値が違う場合があります)となっています。クロールは人の体にとって必要不可欠なミネラルの一つです。ミネラル自体が5大栄養素の一つですから、重要なことが分かりますよね。

クロールは血液中の陰イオンの中では最大量であり、60~70パーセントを占めている物質です。その働きは、体内の水分を一定に保ったり、浸透圧の調節を行なったりといった重要な役割を担っています。ですが、あまり不足だとかいった話は聞きません。クロールは主に食塩として摂取します。日本人は塩分を摂り過ぎていると指摘されるくらいですから、不足することはあまりないでしょう。

といっても、全然ないわけではありません。多量におう吐したような場合はクロールの値が下って不足気味になることがあります。他にも、水分の過剰摂取であったり、食塩の摂取を気にしすぎて不足してしまったりする事があります。反対にクロールが高値になることもあります。そんな場合は脱水症や下痢といった状態が考えられます。

その他の働きとしては、胃液の中の胃酸を構成するイオンともなっています。胃酸の成分は塩酸ですからHClで表されますが、HClはペプシンを活性化させます。そしてクロールはアミラーゼの活性化を受け持っています。

一般的に、クロールの変化はナトリウムの変化と並行して、同じような変化を示します。つまり、ナトリウムの濃度が下がる時にはクロールの濃度も一緒に下がり、ナトリウムの数値が上がるとクロールの数値も一緒に上がるといった傾向があります。この傾向と外れた場合は酸塩基平衡が考えられたりします。

そもそもクロールとは電解質というグループの一つです。電解質とは、水に溶けると電気を通す物質のことを指します。電解質は水中では電気を帯びたイオンになり、電気を通すようになります。人間は身体の70パーセントほどが水分ですから、電気を通すことになります。

この電解質、ほぼ量が決まっていて、それよりも多すぎても少なすぎても平衡状態が崩れてしまいます。ですから、これは細胞にとっても臓器にとっても大変なことになって、その機能が低下してしまって役割を全うできなくなります。場合によっては命にかかわることがあります。

それにしても、クロール(塩素)ってすごい名前ですね。

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