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41、レニンの話

今回はレニンのお話です。前回少し書きましたが、レニンは「レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(長いのでRAA系と略します)」のグループを構成する一員です。名前の由来は「腎臓」で、その名の示す通り腎臓の傍糸球体細胞で産生されて分泌されます。何がレニンの分泌をコントロールしているかというと、血圧なんですね。

腎臓の傍糸球体細胞は常に血圧の動きをチェックしていて、血圧が下がってきた場合にレニンを分泌します。その後はRAA系が働いて、その結果血圧が上昇して本来の状態に戻る、そんな仕組みになっています。

血圧を上げる仕組みをもう少し詳しく書くと、傍糸球体細胞が血圧が下がってきていると判断するとレニンを分泌します。この時のレニンは活性を持っていない前駆体の状態なので、プロレニンと呼ばれます。一方で、肝臓からアンギオテンシノーゲンという物質が合成・放出されます。プロレニンは活性を持つレニンに変化したうえでアンギオテンシノーゲンに働きかけて、アンギオテンシンⅠという物質に変化させます。つまり、アンギオテンシノーゲンという物質はレニンの基質という訳ですね。

このアンギオテンシンⅠは肺で作られるACE(アンギオテンシン変換酵素)によってアンギオテンシンⅡに変換されます。このアンギオテンシンⅡは体内でとても有力な昇圧物質で、働きかける先の血管の平滑筋は血管の断面に沿うように分布していて、血管の内径を収縮されたり拡張させたりします。これに加えてアルドステロンの分泌を促進する作用も持っており、この両方が働くために、とても強力な昇圧物質とされています。

アルドステロンは前回書いた通り、腎臓でのナトリウムの再吸収を促進する働きがありました。ナトリウムを引き戻すことで水分が一緒に移動しますので、血管内の循環血漿量が増加します。そんな一連の反応があって、血圧が上昇します。しっかりと血圧が上がれば、それがフィードバックとなってレニンの分泌が減り、それ以上血圧が上昇するのを防ぎます。

この一連の反応に関わっている物質がレニンやアンギオテンシンであり、アルドステロンなので、これを総称してRAA系と呼ぶわけです。また関わりのある臓器は腎臓、肝臓、副腎皮質、あとACEの関係で肺が挙げられます。血圧一つ上げるためでも、これだけの物質や臓器が関わっているんですね。

さらに、レニンは一連の反応のスタートに当たりますが、実際に血圧を上げる働きを持つのはアンギオテンシンでありアルドステロンです。アンギオテンシンが直接血圧上昇に関わるのは血管に対して働きかけるところがあるからで、ナトリウムや血管内の水分量といった直接的な部分を担うのはアルドステロンです。

レニンとアルドステロンの二つの物質について、それぞれ高値なのか低値なのかを組み合わせて見ていくだけでも体の中で何が起きているかが分かります。それをうまく使えば、どの様な理由で血圧の上昇が起きているのか、適正なところまで血圧を下げるにはどうすれば良いかといったところまで判断ができるようになります。臨床の先生方はこういったことを含めて診断をしているんですね。


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