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33、ACTHの話

ACTHという名称は多くの人にとって、あまり聞き慣れないものかもしれません。しかし、内分泌の世界ではかなり名の通ったものです。とはいっても医療や医学関連の世界では、諸事情によって複数の名称を持つものがたくさん存在しています。最近ではだいたい統一されてきていますが、アドレナリンとエピネフリンの様に全然統一の兆しがないものも存在します。ACTHも同様に、全然別の名前を持っています。以前はコルチコトロピンと呼ばれることがありましたが、最近はその名称を耳にしなくなりました。どうやらACTHの一択に落ち着いてきたようですね。

さてこのACTH、本来は「副腎皮質刺激ホルモン」と呼ばれていて、下垂体前葉と呼ばれる場所から分泌されて、副腎(腎上体)の皮質に働きかけます。このことから考えて、副腎皮質から分泌されるホルモンの上位にあって調節をするホルモンだということが分かります。

副腎皮質ホルモンで有名なのはストレスホルモンとして名高いコルチゾールでしょう。他にもアルドステロンや糖質(グルコ)コルチコイドといったホルモンが挙げられます。男性ホルモンのアンドロゲンも副腎皮質で産生されます。ここのホルモンについては別に取り上げることにします。

ACTHは下垂体前葉から分泌されますが、さらにこれをコントロールする上位のホルモンが存在します。場所は視床下部というところから分泌されるホルモンでこれをCRHと呼び、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンという名称がついています。これによって、視床下部→下垂体前葉→副腎という流れを作ります。この経路はHPA系とも呼ばれて、この3者が互いにフィードバックし合う関係にあります。

どんなことに対してのフィードバックを行なうかというと、例えばコルチゾールやアドレナリンに代表されるようなストレスに対する反応であったり、それに伴う感情(情動)についてであったりします。さらに(これは自律神経とも関係してきますが)興奮を抑制した時のリラックス状態から睡眠に関わるところであったりします。分泌リズムなどとも関わりが出て来ますので、サーカディアンリズムとも関係があるとされます。

その他としては免疫関係、摂食関係からエネルギー代謝に関わるところであったり、アンドロゲンが副腎で産生されることから生殖行動といったところまで含む体内活動の多くに関わりを持ちます。
(人間の性に関する行動ですから次世代に命をつなぐ行為を指すのですが、文献的には「繁殖性行動」と書かれていました。この言葉を人間に使うのはちょっと抵抗がありましたので、今回は敢えてその表現を変更しました。)


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