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[英詩]日本語詩の母音韻

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

※「英詩のマガジン」の副配信です。
※note 外から訪問された方へ:強勢拍律言語(特に英語)の詩の韻律を専門的に研究する立場から、英詩が読めるようになる道を探っています。

本マガジンでは英詩をめぐるさまざまな話題を取上げています。

なかでも、繰返し問題にしているのが、母音韻です。英詩においてじつは広く用いられていながら、そしてアイルランドの詩人やボブ・ディランや現代の rapper たちがしばしば使っていながら、その音韻論的な内容があまり知られていない韻が母音韻であるとも言えます。

しかし、プロソディ (prosody, 音韻論) でそれを定義することはかんたんです。

強勢のある音節の母音(以降の母音)が一致する韻

と言えば事足ります。

ところが、これを日本語の詩の領域に広げようとしたとたん、困難に突当ります。日本語は強勢アクセントを用いないからです。

それでも、強勢の有無はわきにおいて、ともかく、ある母音(以降の母音)が一致する韻を用いた日本語の詩や歌について、考えることは可能でしょう。

もしも、話題を脚韻に広げるなら、日本の詩の歴史におけるマチネ・ポエティクの問題にも言及しなければならないでしょう。

しかし、ここでは話を母音韻にかぎります。特に rapper の「押韻主義」の例を取上げてみたいと思います。

目次
 空からの力(キングギドラ)
 Shock to the Future (Future Shock Allstars)
 K DUB SHINE
 揃い踏み(韻踏合組合)

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空からの力

ヒップホップユニットのキングギドラ (K DUB SHINE、ZEEBRA、DJ OASIS) の1枚めのアルバム《空からの力》(Pヴァインレコード、1995) に収められた〈空からの力〉は、日本語における母音韻のお手本のような曲だ (下の動画は mashup 版)。

動画リンク [King Giddra, '空からの力' (Jazzy Hip Hop Remix)]

空からの力 Part2
作詞:H. Sakakura, K. Kagami
作曲:DJ OASIS

この歌の4連から2行引く。

頭脳旅行中 集めた記録 地獄の黙示録 見抜く透視力
調子良く見える現実も 実は連日の演技中

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