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Lyrical Balladsノート

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

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「[英詩]詩形の基礎知識(12)——Blank Verse」で論じた Wordsworth の 'Tintern Abbey' が収められた、Coleridge との共著詩集 'Lyrical Ballads' (1798/1802) についてのノートです。なにか一冊英詩の詩集を挙げるとすれば、重要性の点でこの詩集にとどめをさします。今回は、Oxford 版の同詩集の編纂者 Fiona Stafford (Oxford 大学英文学教授) の序文を取上げます。


目次
Lezard の書評
 critical apparatus
 plain speech
Stafford の序文

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'Lyrical Ballads' の1798年版と1802年版が収められた Oxford World's Classic 版(下)は、両方の版が参照できる点で、貴重な本といえる。


Lezard の書評

Nicholas Lezard はこれの 書評 (The Guardian, 16 Jul 2013) で次のように述べている。

'Lyrical Ballads', in case you missed it, is, quite simply, possibly the single most important collection of poems in English ever published.

つまり、これまでに出版された英語の詩集で、これ以上に重要な詩集はないという評価をくだしている。これは Lezard の特別な意見ではなく、英文学史のある意味で常識といえる。

Lezard の書評のポイントを二つ挙げておこう。一つは校訂版詩集に関わることで、もう一つは 'Lyrical Ballads' で用いられたことばに関することである。

■ critical apparatus

学術書、特に原典の校訂版には、critical apparatus が必ず附いている。考証・注解・異文などの研究資料のことである。

本マガジンでおなじみの例でいうと、ボブ・ディランの校訂版詩集(Christopher  Ricks ら編、下) には critical apparatus が附いている。どちらかというと、異文が中心ではあるが。

逆にいえば、critical apparatus なしの校訂版はあり得ない。

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