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「お目当ての人をゲットするのと大会の運営は一緒なんです。」パワフルガールが語る「世界に通じるホスピタリティ」とは…?

「英語即興ディベート」という競技を知ってますか?

「なんだか難しそう…遠い世界の話。」なんて思う方もいるかもしれません。

しかし、実はこの「英語即興ディベート」、一部の高校のカリキュラムに導入されるなど、日本で今、非常に注目が高まっているのです。
活きた英語教育」を掲げる、2020年教育改革ブームが背景にあります。

「英語即興ディベート」は、その場で出された「お題」に対して、即興で意見を組み立て、頭フル回転で、審査員に自分の意見が優位だとアピールします。最終的に審査員が1番論理的だと判断したチームの勝ちです。
英語の実践力だけでなく、論理的思考力まで鍛えられるという、1粒で2度おいしい競技なのです。

今回はそんな「英語即興ディベート」日本で唯一の*BP国際大会、「九州ディベートオープン」に携わる、北田瑞希さんにインタビューしました!!


《北田瑞希》
九州大学、地球社会統合科学府、修士2年生。鹿児島県生まれ。
高校生から英語ディベートを開始し、九州大学進学後も、ESS部(英語部)でディベートに励む。
学部2年生から「九州ディベートオープン」の運営に5年間携わっている。


九州を盛り上げたい


—— ディベートの九州大会に関わろうと思ったのはなぜですか?

もともと九州大学のESS部(*英語部)でディベートをしていました。
なので1年生の時は、九州大会に競技者として参加しました。その時、運営をしてた部活の先輩が「九州を盛り上げたい」といったのを聞いて、感銘を受けました

今もありますが、当時の日本の「英語即興ディベート」競技では「関東一極集中」傾向がもっと激しかったです。関東でばかり大会が開催されるので、4年間大会に出ない部員も少なくありませんでした。
「九州の部員が大会に出る機会を作りたい」と語る先輩をみて、「すげえ!私も携わりたい」と。

—— 立派な先輩ですね。それで2年生から運営に関わりはじめた?

そうですね。基本的に3年生が運営の中心になるので、下について運営を学ぼうと思ってました。
でも、院試やら就活やらで上級生が運営に関われなくなっちゃって…もう私が回すしかなかったんです笑


100点を目指したら80点とるみたいな


—— 頼りにできる先輩がいないという衝撃的なスタート。どうやって取り組んだのですか。

とりあえず1年生の時の大会を目標にして、片っ端からやれることをやりました
大会にはディベートの勝敗を決める審査員が必要で、これが大会の質を左右するんです。
まず大会で受賞歴があるような審査員を集めることに奔走しました。

—— 具体的には?

今まで参加した大会やセミナーで会った方に、とにかくメッセージを送りまくりました。またありがたいことに、前年運営に協力してくれた方が審査員長になってくれて。彼と相談して審査員を見つけていきました。

—— パワフルに困難を乗り切ったんですね。

実はそうとも言えないです。
というのも、1年生の時の大会を目標にしたために、それより質が下がってしまって。
先輩を追いかけてばかりで、参加者にどんな価値を提供するか、という視点が欠けていました。
100点を目指したら80点とるみたいな。大会参加人数も下がったし、ディベート大会に重要な論題を話し合うタイミングも遅くて、後悔が残る結果になりました。

—— なるほど。過去を目標にしたのが、かえって良くなかったと。

そう。だから次の年、3年生の時の大会運営は、過去の先輩を目指すのではなく、今回の参加者の満足度をどう上げるかを目標にしました。
つまり、ホスピタリティを意識するようにしました。


審査員の質を大会のブランドに


—— ホスピタリティはおもてなしってことですか?

参加者が何をしたら満足度が上がるかという視点を持つようになりました。
例えば、開催地の九大伊都キャンパスは交通が不便なので、ホテルキャンパス間の移動に専用バスを使ったり。大会中に配るお弁当を九州名物にしたり、イスラム教の方もいらっしゃるので、ハラルを用意したり。

また、ディベート競技の慣習として、大会の参加者が審査員を提供するというのがあるんですが…

——参加者が審査員を提供?運営が用意するものではないのですか?

もちろん中心となる審査員は大会が用意します。ただ、参加者が増えるとその分審査員の数も必要なので、参加者側に補助的に審査員を提供してもらうんです。
ただ、それだと、弊害も多くて。例えば、審査員が見つからないから参加できない人やが出てきます。

——それは問題ですね。

そうなんです。だから、この慣習を破って、こっちで全部すごい審査員を用意しちゃえと。世界大会で表彰されるような方を招待して、審査員の質を大会のブランドにしようと考えました。
それで、世界的に有名な人が審査員としているなら、世界から参加者を募ってしまえと、大会自体を九州大会から国際大会に変えました。

——思い切った試みですね。

そうですね。国外から審査員を呼ぶとお金も桁違いにかかります。でも、参加費はあげたくはなかったんです。それはホスピタリティに反するし。

スポンサーを募り、クラウドファンディングを行いました。大学のOBだった方や、ESS部に興味を持って、メールをくださる方にお話を持ちかけ、協力していただきました。

リピーターになる層が作れた

——ハラルやクラウドファンディングなど、ホスピタリティに基づく様々なアイデア、素晴らしいです。それはどのように生まれたのでしょう?

大会の運営経験が豊富な方のアドバイスや、自分も香港や東京の国際大会に参加し、情報収集をしていました。

——結果的に、3年生の時の大会はどうでしたか?

もちろん人数も増えましたが、それ以上にリピーターになる層が作れたのが大きかったです。来年も行きたい、というかたや、その口コミを聞いて、来年は私も!というかたが増えました。

お目当ての人をゲットすることと大会の運営は一緒

——大会運営の後悔と成功経験から、得た教訓はありますか?

1番は、「参加者の行動を細分化し、初めから終わりまで考える」必要性です。
参加者の行動は、まず大会を知ることから始まります。
「知る→行こうか悩む→行くかどうか決める→準備をする→日本に来る→大会に参加→大会期間中→大会が終わって帰る→帰った後」
ていうトータルで考えることですね。それぞれの行動に対して、ホスピタリティを追求します。

——深い〜、マーケティングみたいですね!

ああ〜これ「合コンでお目当の子ゲットする時」によく例えてるんです。

「どうやって二人きりで誘い出すか」ばかりを考えがちですよね。
でも本当は、「まずどうやって自分のこと知ってもらうか。みんなでの自己紹介か。さりげない話で気を引くのか。」→「どの位置に座るのか」→「どうやって相手の興味ある話題を引き出すのか」→「途中はどんな話で盛り上がるのか」→「抜けるの切り出すタイミングや言い方は?」→「そのあとは二軒目にいくのか、アフターケアはどうするのか。」ていうトータルでうまくいって初めて成功です。どっかがダメだったらダメです。

——おおお…斬新だけどわかりやすいです笑

参加者の行動細分化にもこれは当てはまります。
お目当ての人をゲットすることと大会の運営は一緒なんですよ。

「国際」のどの層にアタックするか

——特に「国際」イベントにおいて、運営の時に大切なことはありますか。

国際といいますが、海外の参加者を一括りに考えてはいけないです。そこでも参加者を細分化する必要があります。
Facebookがどの国でもメジャーな訳ではないです。韓国ではカカオトークの方がいいし、中国ならウェイボーとかですね。
また、外国人だからみんな英語ができるわけじゃなくて、「英語は得意じゃないけど、興味あるから頑張りたい」と考える層もかなりいます。そういう人たちには母国語で宣伝するのも効果的です。
だから「九州ディベートオープン」でも、複数SNS、多言語、で窓口を作っています。「国際」のどの層にアタックするかも考えないといけないです。


——最後に、今年も開催される「九州ディベートオープン」の意気込みを語ってください。

常により高みを目指していきたいです。
九州に1人でも多く、ディベートが好きだ、と思う人が増えるように。
リピーターの方が今年が1番‼️と思えるように。
初めて参加した方の期待をいい意味で裏切れるように。
飽くなきホスピタリティを追求します。



《九州ディベートオープン(QDO)》
日本で唯一の*BP国際大会。
国籍、年齢、関係なく、誰でも参加できる。
初心者も参加できるディベートのワークショップや試合の解説を行うプログラムも開催。
大会専用ページはこちらから⬇️
https://www.facebook.com/QDO.KyushuDebateOpen/

*BP...英語ディベート形式の1つ。世界で最もスタンダードな形式。

(記事執筆:中村凛乃)