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番外編:想定外はいつも隣…⑨

3月30日に、転院した今回の病院は、なんと面会が出来ました。
「自由に」というわけではありませんが、予約が取れれば毎日でもOK、ただし、面会時間は30分とのことでした。
それでも、これまでリモート面会しか許されなかったので、最高です。
おまけに、母はもう、話が出来る状態だったのです。
転院したその日も、ソーシャルワーカーの方から、様々な説明を受けた後、早速、母の病室へ面会に行きました。

病室は、4人部屋で、決して広いとは言えませんでしたが、それでも母と直接話が出来ることは、嬉しいことでした。
「お母さん」と呼びかけると、こちらを向いてくれました。
病院を移ったことや、これからは、面会が出来ることなどを伝え、
以前、日赤で面会出来た頃にやっていたように、足にクリームを塗ったり、
ハンドマッサージを行ったりして、あっという間の30分でした。

翌日の31日も予約が取れたので、面会に行きました。
母には、面会のたびに、今日は何月何日何曜日、今は何時何分と、伝えていました。時間の感覚のようなものをわかっていて欲しかったからです。
それは、今も続いています。
3月31日は、金曜日でした。平日は割に予約が取りやすいのですが、土日は、すでに一杯で、2日間会うことができません。
2日後の日曜日は、4月2日で、私の誕生日でした。
「4月2日は、何の日か覚えている?」と聞くと、
「誕生日でしょ。」と、答えてくれました。
嬉しかった。
母は大丈夫。
きっと、このまま楽しい毎日が過ごせる。
もちろん、何もかもが以前の通りというわけにはいかないけれど、
これはこれなりに、穏やかで優しい日々を過ごすことができると思いました。

しかし、私には、大事なことが残っていました。
次の行き先を決めることです。
今度こそ、病院ではなく施設というかたちになるのかもしれません。
そこには、ある「決意」みたいなものがいるような気がしました。
上手く説明できませんが…。
母にとっては、そちらの方が良いとアドバイスくれる方もみえます。
私のエゴなのかもしれません。
が、私には、なかなかその「決意」が出来ずにいました。

4月12日、13日、兄が埼玉から2ヶ月半ぶりにこちらに来ました。
面会予約も取れたので、2人で会いに行きました。
母は、嬉しかったのか、今思うと、兄が来ていたこの2日間が一番饒舌だったような気がします。
初日は、兄の娘、母にとっては孫の結婚式での話をして盛り上がり、今度、埼玉の兄の家に行きたいとか…。
母は、自分自身の状況を、「少しずつ、良くなっている」と言っていました。
いつかは、退院して家に帰るのが当たり前の事のように思っているようでした。多分、今も、思っています。

2日目、兄と面会に行き、私は母に聞いてみました。
「日赤にいたとき、お兄ちゃんと2人で会いに行ったんだよ。覚えている?」と…。
なんと、母は「覚えている」と言いました。
あの時は、すごくビックリした。嬉しかったと…。
あの時は、延命治療のため、中心静脈栄養に切り替えた後で、母は言葉を発することがない状態の時でした。
それでも、ちゃんとそのことを覚えていたことに、私も兄も驚きました。
言葉でコミュニケーションは取れなくても、ちゃんと伝わっているものなのですね。

2日間面会をして、母が思った以上に元気だったことに安心した兄は、自宅へ戻っていきました。
その後、GWが近づくにつれて、入院患者が増えてきたのでしょうか、面会の予約が取りにくくなってきました。
土日を除いて平日は、毎日のように会えていたのに、会えない日が出てきたりして…。
そのままGWに突入し、5日間、会えない状況でした。
母には、連休前日に「明日からは連休で、会えないからね!」と、話しておき、母も「わかった」と言っていました。

GW明け、5日ぶりに面会に行き、私は母のある変化に気付きました。
母は、あまり話をせず、声もとても小さくなっていました。
日によっては、耳も聞こえづらいようで、「聞こえない」というので、補聴器をつけて話したりしていました。
少し、感覚が鈍くなってきている…。そんな感じでした。

その頃、たまたま母のケアマネさんだった方から連絡があり、
私は、そのことを話しました。
彼女は、先生に言語リハビリをしてもらうように頼んだら?とアドバイスをもらったので、さっそくそのことを伝えたのですが…。
「現在は、もうその状況ではなく、誤嚥防止のためのリハビリの段階だから」とよくわからない説明を受け、やんわり断られてしまいました。
断られたら、俄然、やる気が出てきるのが私の性格。
「やってもらえないなら、私がやる!」と、面会のたびに、短い時間ですが、発声練習を始めました。
とは言うものの、正しいやり方など知らないので、「あ・い・う・え・お」と、ただ、ひたすら声を出しているだけです。

6月に入り、ようやく土日以外の面会予約が解除されました。
とは言うものの、面会時間は午後1時30分から5時までの15分間だけです。
予約がなくなったのは嬉しいのですが、たった15分では、ゆっくり発声練習をしている時間は取れなくなってきました。
それでも土日を除く毎日、会えることは母にとって良い刺激になっているようでした。
声が出る日もあれば、なかなか話さない日があったり、やたら眠たそうだったり、面会に行くタイミングは難しいものです。

この6月には、ちょっとした出来事がありました。
それは母のことではなく、私自身のことです。
今年の2月初めから、左肩を痛め、整体に通っていたのですが、
あまりに治らないため、4月、肩を専門としている整形外科へ行きました。
MRIで詳しく調べてもらうと、なんと肩の腱板断裂とのことで、日帰りではありますが、手術を受けなくてはならなくなりました。
手術日は、6月16日、金曜日。
当然、その日は面会に行くことができないため、土日を含めて3日間、会えないこととなります。
もちろん、母には、きちんと説明をしたので、わかってくれました。
それどころか、現在、一人暮らしの私が、術後しばらくの間は、片腕生活になるので、そのことを心配してくれました。
やはり、いくつになっても母親は母親なのですね。


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