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気になるフランス中間所得層の給与は?

2024年1月末、フランスの経済に焦点を当てたシンクタンク「モンテーニュ研究所」が中間所得層に関する新しい報告書を発表しました。報告書が指摘した主な問題点は以下の通りです。


中間層定義の曖昧さ

過去の議論では中間層について言及されてきましたが、その定義の曖昧さが政治的な議論で一貫性を欠いていました。この報告書では、手取り給与が下位30%から上位20%までの範囲に入る層(全国の約50%に相当)を「中間層」と明確に定義することが提案されています。

モンテーニュ研究所 参考資料

また、手取り給与は世帯構成員で割って計算されており、扶養家族の人数によって調整されています。(扶養家族1人は0.5人で計算。扶養家族が1人の場合は、世帯主1人と0.5人を合計して世帯構成員は1.5人、世帯の手取り給与を1.5人で割ります。) これにより、中間層の定義がより具体的になるとされています。

中間層を職業で区切ってしまうと、年金受給者や失業者など定義できない人もいるので、職業別で中間層を定義しないとありましたが、2021年の職業別平均手取り給与額一覧があったので参考までに。

モンテーニュ研究所 参考資料

中間層から低所得層に移行する不安

過去の調査によれば、2009年には70%のフランス人が中間層に所属していると感じていましたが、2019年には58%に減少しました。2023年の調査では、自身が中間層に所属していると考える人は63%となっています。

特に気がかりなのは、2009年の30代では13.5%が階層から転落し、46%が親の階層より上に上昇したという結果が、現在ほとんどの親が自分の子供たちの世代に対して楽観的ではないという事実です。これはフランスだけでなく、先進国全体の傾向とされています。

OECDによる記事では、中間層が縮小し、特に若い世代が中間層に上がることが難しくなっていると指摘されています。中間層の所得が増加せず、経済的影響力が急速に低下しており、世界的な経済的不平等が進行しているとの警告がなされています。

OECD 政府は苦闘する中産階級を支援しなければならない
https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/governments-must-act-to-help-struggling-middle-class-japanese-version.htm

まとめ

この状況への対応として、2025年にフランス政府が中間層向けに20億ユーロの減税を予告しています。中間層の強化は社会的な安定と持続可能な経済につながると期待されており、この減税政策がどのような効果をもたらすかが注目されています。

参考資料 モンテーニュ研究所 
https://www.institutmontaigne.org/ressources/pdfs/publications/publications-classes-moyennes-lequilibre-perdu-note.pdf


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