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大磯プリンスホテルで味わう非日常②【完結】

前回からずいぶんと間が空いてしまった。

誰が待っているわけでもない。別に続きなんか書かなくたって誰も困らない。

しかし、これを書き上げないと気持ちが悪い。おそらく自分だけが、気持ちの悪い思いをしている。というわけでこの旅日記は、自分のためだけに書く。当時(約1年前)を思い出しながら。

白亜のリゾート・大磯プリンスホテル

食事を終えて部屋で一休みした後、再びスパ&温泉へ向かった。先ほどは温泉にザブンと入っただけだったが、2度目はスパをがっつり堪能するつもりだ。

大磯プリンスホテルのスパは、水着で楽しめる温泉やサウナ、岩盤浴が豊富だ。水着をレンタルして一通り楽しんだ。
ホテルのアイコンと言っても過言ではない「インフィニティプール」。太平洋と一体化するかのようなロケーションが人気だ。が、夜は真っ暗で、目の前は海ですよといわれてもよくわからない。遠くの海岸線沿いにまちの灯りが見えた。それはきれいだった。

海を見ながら入れるサウナもあるが、夜は以下同文。水着で、男女一緒に入れるサウナなので、やたらにカップルが多い。広いサウナ室ではあったが、隅っこの方でいちゃつかれていると、正直居心地がよろしくない。

このときはまだ私もサウナにどっぷりハマッていたわけではないので、純粋にかつ冷静に、サウナだけを楽しむことが難しかった。今ならば「カップルなんぞ気にせず、サウナに集中するぜ!」と、前向きなおかまいなしになれるのだろうが。せっかく高級サウナに入るチャンスだったのに、もったいないことをした。

部屋に戻って、湘南平の灯りを間接照明に、小田原駅のセブンイレブンで買った酒やかまぼこなどを楽しんだ。大磯駅には店があまりなかったので、小田原で調達したのは正解だった。

籠清のおつまみかまぼこ(右)は白ワインにも合う


宿泊した部屋から望む湘南平=二日目朝

翌朝もスパへ行った。インフィニティプールは、日の出を待つ客でいっぱいだった。せっかくなので私も、プールの端っこで太陽が昇るのを待った。外の空気は冷たく、肩まで温水プールに浸かった。

ラベンダー色の空にブルーグレーの雲が浮いている。水平線からオレンジ色の光が差してきた。その光が透明感を増しながら広がっていく。太陽がじわじわと顔を出す。プールで日の出を待機していた人たちから、歓声が上がった。私も思わず「おぉ」と口から漏れた。防水のスマホで写真を撮る若者も多くいた。

今日は正月ではない。ここは富士山の頂上でもない。それでも「日の出」を見れば、ありがたいと感じる。老いも若きも変わらない。なんだか妙に嬉しかった。


朝食はビュッフェスタイルだった。客は料理を取る際、ビニール手袋を装着する。と言っても、料理はほとんどスタッフの方がサーブしてくれた。パンケーキがおいしかったと記憶している。

朝から他人様が作ってくれた料理を食べる。しかもゆっくりと、満腹になるまで。一人暮らしの私にとって、それだけで十分非日常だ。

ビュッフェのパンケーキやクロワッサン

チェックアウトまでホテルを散策した。併設の大磯ロングビーチは閑散としている。冬場、水の張っていないプールはものさびしい。

白い飛び込み台は、「OISO」のロゴが気高さすら感じさせる。あんなに高い所から飛び込むのか。想像しただけで恐ろしい。

飛び込み台
大磯ロングビーチの敷地内。ヤシの木が南国っぽい。

太陽はもうすっかり頭上にあって、青海原を照らしている。敷地に植えられたヤシの木を眺めていると、ここが神奈川県だとは思えない。しかし振り返ると、雪を頂いた富士山が鎮座ましましている。どこだよここ、と脳がバグる。

振り返ると雪化粧した富士山が見える

帰りはホテルから少し歩いた所にある、幹線道路沿いの停留所からバスに乗った。車は多いがどこかのんびりした、不思議なまちだ。そういえば、河野太郎氏のポスターがやたら貼ってあった。さすがお膝下だけある。

大磯駅。のどかでいい。

上りの東海道線に乗る。二日間の「非日常」が終わってしまった。

今回、ロマンスカーミュージアム、小田急小田原線、大磯プリンスホテルと、小さな旅を経験した。居住する県、もっと言えば居住地域からは出ていない。旅というには小さすぎる、おでかけ程度のものだ。

しかし、それでもいい。自分の生活圏ーー「日常」からほんの少しだけ外に出るだけで、「非日常」は味わえる。楽しく、濃く、新鮮な「非日常」。これがないと、「日常」はやっていけない。

「非日常」は不要不急ではない。絶対に。

《2021年12月の情報です 》

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