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秋の旅⑥ただいま新居浜

6時頃出発。予報は雨だが、ほぼ気にならないレベル。
目指すは、新居浜のみんなのコーヒー。松山からは東温市経由の最短コースを走る。
ややきつい登りがあり、トンネルも多く、交流量も多い。が、雨に降られることもなく、順調に進む。

手ぶらでは失礼だと思いながら、収納力の乏しいチャリ旅ゆえ、各地でお土産を買いそびれていると、ついにあと5、6kmまで来てしまった。

何となく良さげな駄菓子屋を発見。地元の人に地元のものを差し上げることより手ぶらの方がダメだろうと、可愛いパッケージの飴を購入。

オープンから10分後の11時10分。
ついにみんなのコーヒー到着。1年前と異なり海側からの初潜入だ。

海に向けて開かれた店内から、店主のJさんが見えた。

「おかえり〜」

これまでいろんなところを旅してきたが、自宅以外でそんなことを言われたのは初めてだった。

1年前は、絶望していた旅の初日。
今日は旅の最終日。ここまで700km以上走ってきたが、まったく気分が違う。

この言葉だけで、きつかったけど、昨年、旅してよかったと心から思った。

新居浜在住のスーパーサイクリストのSさんもいる。
先週東京で一緒に走り、夕食を共にしたばかりなのに、旅先でもまた当たり前のように会っている。もはや必然とさえ感じる。

彼を中心にしたこのところの奇跡的な偶然の連続は鳥肌ものである。
詳細はこちらを(「偶然が重なれば必然」)

店内は、地元の画家兼お米農家さんの個展が開催中。
それもあってテーブルにつくと、1年前とはまったく違うお店に来たようなテンション。昨年は店内をこんなに広く感じられなかったのは、あまりの疲労で視界が狭まっていたからだろう。今日は海をゆっくり眺める余裕もあり、素敵なロケーションを堪能する。

この1年で、私の走行スキルも多少上達したかもしれない。以前よりお尻も痛くないし、握力もまだまだ十分残っている。おかげでJさんの本に落ち着いてサインもかけた。

本当は昨日到着したいと思っていたのだが、当初の計画が無謀すぎて出雲の時点で怪しくなり、松山の先輩に挨拶しないわけにもいかないしで、1日後ろ倒しすることにした。

そのせいで雨が心配だったのが、奇跡的に今日はまだ降っていない。
去年はあれほど天気に苦しめられたのに……。その意味でも、この1年の私の行いがよかったのだろう。

そしてもう一つ。
みんなのコーヒーさんの隣にある読×舎さん。
1年前にもお邪魔し、その後、私の著書も仕入れてくださった(完売!)ので、ぜひご挨拶をと思っていた。

いつもは月曜日お休みなのだが、なんと今日はやっているという。
世界は私中心に動いているのではないだろうか。愛を叫びたいくらいのめぐり合わせに静かに興奮する。

JさんとSさんと一緒に、読×舎さんにご挨拶。
こちらでもあたたかく迎えてくださり、あーほんと、本、書いてよかったなーと感激した。

著書にも使用させていただいた昨年と同じ構図で、Jさんと1枚。

今年は、2人の間に本がある。

次、撮るときは本が増えているよう頑張ろう。

両親も他界し、実家のなくなった今、自宅以外に「ただいま」と言ってもらえる場所があるのは、本当に幸せなことだ。

ありがとうございました。

後ろ髪をひかれつつ、新居浜を発つ。

四国中央市までの工場横の道のり、坂の上からの景色、川之江のコンビニで食べた朝ご飯、香川県の看板、ピンクのゴリラ、この先でシフトレバーが折れたんだ……。

昨年の旅の記憶がよみがえる。街を再訪することはあっても、同じ轍をたどるなんて自転車ならではだろう。

懐かしいとは少し違う興奮は、はじめての感覚だった。

陽の沈んだ6時頃、香川の高松港に到着。

結局、雨雲から逃げ切れた。今回は、終始、天候に恵まれた旅だった。

神戸行きのフェリーは夜中出発。

まだ時間があるので近くの銭湯に行くと全身刺青の本職の方々が何人も。しかも現役感丸出し。このエリアに暴対法はないのかもしれない。

あまりに怖かったので、湯船に入らず、シャワーで汗を流すだけですぐに出た。

夜、いよいよ大雨。強風も吹き荒れたが、フェリーは出航してくれて、無事、神戸へと到着。昼には東京へ帰ることができた。

本日の走行距離は170km。合計850km。

帰宅後は、潮風を浴びた自転車を、はじめてプロに洗車していただいた。

すべてのはじまりは、この方なのだ(「偶然が重なれば必然」)。

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