見出し画像

読書感想文 / 白銀の墟 玄の月 3巻

収束する真実


泰麒のいる王宮、李斎のいる驍宗捜索部隊、そして驍宗が一気に動き出す3巻。阿選の思惑も明らかになり、物語が佳境へと向かっていく。

2巻であれだけミスリードしてからの3巻。しかも発売時は2巻と3巻の間に一ヶ月の間があったわけで、3巻読み終えたあと倒れ伏すでしょ、倒れ伏しました


「ただ凍結させたかった」という阿選の思惑はハマり、同時に阿選自身の誤算も明らかになる。民の支援、元驍宗麾下の思惑、そして阿選麾下の思いなども交錯して、一気に最終巻への地ならしが行われる巻である

3巻こそ祈りの巻であろう。誰ともわからない人の為に娘が飢えて死んでもその食べ物を流し、祈る民。その祈りが届いた先こそが戴の希望なのだ。

どうしようもない現実に重くのしかかるのは理不尽な外圧ではなく生活と将来への不安であろう。家族を食わせていけるのか、この冬を乗り切れるのか、明日生き延びられるのか。そういう事態が天災であればまだ諦めもつくが、災厄を引き起こした張本人が存在するとしたらどうなるか。自分でその大本は断てない。ただ生きるのに必死だがやり場のない怒りが存在する。それが祈りへと昇華され、貢物を捧げる行為に落ちるのだ。感情を具現化する行為こそが祈りであり、布施である。

戴の命脈が確かに紡がれたその時に最終巻へと向かっていく。まさしく天の配剤と言える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?