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『 おばぁ録② 』 ~ おばぁの一日 ~

祖母:「朝の5時には起きるわね。目が覚めちゃうから。朝食までベッドの上で待ってる。6時ぐらいから職員さんが、周りの部屋のおむつ替えに回るの。7時半になったら、朝食。ホールに自分で行くわ。朝ごはんは、白米の人もいるけれど、私はパンなの。何でパンになったかは忘れちゃったけど、朝ぐらいパンが食べたいから良いわ。メニュー全体が洋食になる訳じゃないから、パンとお味噌汁の組み合わせになるけど、気にならないね。それからお昼まで部屋でゴロンとしてるの。お風呂がある日は、自分でお風呂の場所まで行くのよ。この施設で、自分から行くなんて私ぐらいよ。私の頭はみんなと違って、ボケてないからね。

祖母:「11時半になると、お昼ごはん。15時になると、おやつタイム。何が出ても美味しくいただくわ。18時まではやる事がないから、本を読んだり、写経したり、脳トレしたり、色鉛筆で絵を塗ったりするね。
施設で催しがある時は参加するわ。この間は書道教室があったの。廊下に貼ってあるから、見て帰って!上手く書けてるのよ。私の書が一番上手だと思う!!本当にね!!もともと、字は上手いのよ。廊下に貼りだされてるから、見てってね。」

祖母:「18時になると夕飯。20時には就寝。誘眠剤を飲んで寝るのよ。なんで薬を飲むかって?徘徊する人がいるから、朝まで寝せる為よ。私は頭はハッキリしてるから、職員さん達は、手がかからないと思うわ。職員さんから、廊下に貼りだす塗り絵や作品を作ってくれってお願いもされるし、疲れてない時はちょっとした中のお手伝いもするのよ。」

私:「わぁ、頼りにされてるんだね。『施設の催し』ってレクリエーションだよね?習字以外にどんなのがあるの?」
祖母:「色々あるわよ。ボランティアの人が来てくれるの。書道の他には、音楽かな。ピアノで演奏してくれるの。ズラリと囲んで聴くのよ。でもね、正直、モーツァルトとかバッハだとか聴かされても、私達には分からないのよね。綺麗な曲だなぁとは思うけど。それだったら、チューリップとか童謡とか、昔からある曲を弾いてくれた方が楽しいわ。手拍子を叩いたりできるしね。高尚なものより、知ってる曲をやってくれるのが一番なのよ。」

『知ってる曲をやってくれるのが一番』ごもっともな言葉だ。一緒に楽しめることこそ大事な事。本音が少し聞けた所で更に、前から悩んでいたお見舞いの手土産について、語ってもらうことにした。

おばぁ録③へ続く→


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