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5分でわかる「十二国記」の世界ー「麒麟」がいる世界?!「使令」ってナニ?

2019年10月、18年ぶりの新作が発売されて話題となった「十二国記」をご存知ですか?作者は小野不由美さん、中国風異世界を舞台とした壮大なファンタジー小説です。1992年に「月の影 影の海」が、そして今回の新作「白銀の墟 玄の月」が刊行され、シリーズ累計売り上げ部数は1000万部を突破したそうです。

そこで、「十二国記」という名前は聞いたことあるけど、よくわからない・・・という人や、読んでみたものの、用語が多すぎて覚えられない・・・という人が多いようなので、簡単に解説します!

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「麒麟」がいる、十二国記の舞台とは?

天帝という創造主の創った十二の国がある世界。中央に黄海(と言いつつ海ではない)、その周りを囲むように8つの国と、海を隔てて四隅に4つの国がある。天帝とは、いわゆる国造りの神様的な存在で、天帝の定めた掟に沿って、各国の王は国を治める。

この天帝が重要人物で、その定めた掟は人による解釈の違いなどの曖昧さを容認せず、例え善い行いのためでも掟を破ると天罰により死ぬことになる。

王たちには仁道を持って国を治めよ、と言うが、どこかの国が荒廃し民が死んでも、王が反乱により倒され偽物の王が君臨しても、正してはくれない。そのことがシリーズ全作を通じて投げかけられるテーマの一つとなっている。

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そこでは、天意を受けた霊獣「麒麟」が、王を選ぶ。王の出自も、血縁も職業も性別も年齢も関係ない(12歳で王になった人もいる)。麒麟がその人を見つけ、誓約を交わせばOK。麒麟とはもともと中国で仁のある政をする王のもとに現れるとされる霊獣で、今年の大河ドラマ「麒麟がくる」でも、"平和な世になると麒麟がやってくる"、というのが大きなテーマですよね。

麒麟に選ばれた王は神籍、簡単にいうと神様に近い存在になり、滅多なことでは死ななくなる。作中最も長生きな王はなんと600歳以上!(不老なので王になった時から歳は取らない)

王が国を治める道を誤ると麒麟が病み(失道)、麒麟が死ぬと王も死んでしまう。そして王を失うと国が荒れる。天災が起き、妖魔という人を襲う恐ろしい生き物がどこからともなく湧いて出て、人々を襲い国が荒廃していくことになる。

「麒麟」に仕える「使令」って何もの?

麒麟」には「使令」がつきもの。「使令」とは、麒麟に従い意のままに働くいわば召使い。(「使令」はそもそも「召使」の古い言い方)

本来、誰かに飼い慣らされたり言うことを聞くなんてことのない妖魔を、麒麟が力づくで自分のものにする。その代わり、麒麟が亡くなった時は、その身体を使令が食べることができ、解放される。

十二国記では子どもは木の実である

十二国の世界では、子どもは木になる。子どもが欲しい夫婦が、子どものなる木(里木/りぼく)に祈り、願いが聞き届けられると子どもの実がなる。この設定はかなり画期的で、つまり女性は妊娠・出産をしないので、それにより外で働けないことがない。男女関係が完璧に同等の世界を表している気がします。

作中で日本の世界が出てきた時、亭主関白で妻や子どもは夫の言うことを聞く、女の子は女らしくすべき、と言う表現があるので、それとは全く異なる世界として十二国記が表されているような気がします。

十二国と蓬莱(日本)はどんな関係で描かれている?

十二国は周りを虚海(きょかい)に囲まれていて、東の果てには蓬莱という国があると言われている。蓬莱とは日本のこと。

蓬莱と十二国は本来繋がっていないけど、麒麟ならば行き来できる。チカラが強いから。

ただし、その時「蝕(しょく)」という天変地異(嵐や地震だったり、とにかく周りに甚大な被害をもたらす異変)が起きる。そうでなくても自然発生で蝕が起きることもあり、時折蓬莱から人間が流れ着くことがある。虚海の向こうから流れついた人を海客(かいきゃく)と呼ぶ。

シリーズ中、海客はよく出てきて、言葉も文化も知らないところへ突然やってきて苦労する様子が描かれています。日本からみると「神隠し」ですね。

この蝕により、里木になった実が蓬莱に流されてしまうことがある。その実が蓬莱で誰かのお腹に宿り、日本人として生まれる。そのような人のことを胎果(たいか)と呼ぶ。

十二国記の官位の名前は中国由来?

十二国記を読み進める上で難しかったのが官位の名前。かつての中国の官位に則っていて、冢宰(ちょうさい)春官夏官秋官冬官なども本当にあった官位名、業務内容もほぼ同じ。冢宰が六官(天地春夏秋冬の各官)を束ね、春官は祭祀や学校関係で春官のトップは大宗伯(だいそうはく)、夏官は軍関係でトップは大司馬(だいしば)、秋官は法律、裁判や処刑関係でトップは大司冠(だいしかん)、冬官はものづくり関係でトップは大司空(だいしくう)となる。

他に三公(太師・太傅・太保)といって、王や麒麟の補佐や教育を行う役職がある。麒麟は宰補(さいほ)という王を助ける役職となり、尊称として台補(たいほ)と呼ばれている。

十二国記で使われている言葉と漢字が難しい!

単語と漢字が難しい!いわゆる異体字(旧字体)というのか、現代日本で習う常用漢字ではないものが多い。

例えば部下を「麾下(きか)」、中庭(なかにわ)を「院子」、あずまやを「四阿」や、他にも牀榻(しょうとう=寝どこ)牀(しんだい=寝台)臥室(=寝室)など。

馴染みがないからこそ、"今の日本とは違う"異国感が出るのかもしれない。他にも本来知っているはずの言葉なのに、使う単語を変えるだけで大きく雰囲気が変わるものも。ガラスというよりも「玻璃(はり)」、幼いというよりも「稚い(いとけない)」などー 今は使われなくなりつつある古くて美しい日本語がたくさん散りばめられています。

まとめ

本当にかいつまんでいくつか取り上げましたが、本当はもっともっと細かな決まりや設定がたーくさんあります。また、とあるお話でちらっと出てきた人物や設定が、あっちのお話で生きてくる、なんてことも多々あるので、ついつい何度も読み返したくなります。

読めば読むほど、その奥深さと世界の広大さに驚かされ、登場人物たちの魅力に引き込まれていくのです。

舞台は異世界だけど、血と汗と涙の通った「人間」のお話。きっと誰もがハッとさせられる出来事や言葉が、このお話にはきっとあります。だからこそ、今なお多くの人を魅了し続けている作品なのかも知れません。






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