スタッツを通して考える16-17シーズン ②ジョエル・ザ・プロセス・エンビード

NBA.com/Stats のデータから見るNBA2016-17シーズン、今回はリーグを席巻した大型新人、ジョエル・"ザ・プロセス"・エンビードに注目していきたいと思います。また、比較として Jahlil Okafor [Okafor]のデータも紹介していきます。

まずは基本情報として、16-17レギュラーシーズン1試合以上出場した全486選手、そのうち総出場時間が410分(5分×82試合)以上である370選手におおける Joel Embiid [Embiid]の立ち位置を確認していきます。以下、特に理がない場合は総出場時間が410分以上である選手を対象にしています。

まずは横軸に48分あたりのポゼッション数[PACE]をとり、縦軸に勝率[WIN%]をとった散布図から。縦の破線はPACEの中央値を表しているので、大まかに言って、縦破線よりも右に行くほどリーグの一般的なペースよりも早く、左なら遅いことを表します。また、水色の点はフィラデルフィア・セブンティシクサーズ[PHI]のその他の選手のデータを表しています。

なるほど PHI とういチーム自体は、比較的PACEの早いチームであるようです。また、Embiid はチーム内で最も勝率が優れていることも確認できます。逆にOkaforは2番目に悪い勝率だったようです。

次に Embiid のオフェンス効率[OFFRTG / 100ポゼッションあたりの得点数]とディフェンス効率[DEFRTG / 100ポゼッションあたりの失点数]を見てみましょう。横破線はOFFRTG中央値、横破線はDEFRTG中央値を示しているので、縦破線よりも右に行くほど一般的な選手よりもOFFRTGが優れており、横破線よりも下に行くほど一般的な選手よりもDEFRTGが優れていることを表します。

Embiid はオフェンス効率こそ一般的な値であるものの、出場時のディフェンス効率がリーグでも有数であることが分かります。他のチームメイトと比べても抜群の値であり、彼1人の存在でディフェンスが変わると言っても過言ではないほどの影響力をうかがわせます。

一方で Okafor は、そのディフェンス効率がチーム内で2番目に悪いだけでなく、オフェンス効率に至ってはリーグでも最低レベルであることが分かります。

それではここで、 Embiid のディフェンスに注目してみましょう。 NBA.com/Stats には「DFGA」という項目があります。これはザックリ「リム・プロテクト回数」を表しています(※)。ビッグマンである Embiid にとってリム・プロテクトは非常に重要な要素です。横軸にDFGAを取り、縦軸にDFG%、すなわちリムプロテクト時の相手のシュート成功率をとったグラフを見てみましょう。横破線はDFG%の中央値を表しています。破線よりも下に行くほど優秀なリム・プロテクターであるということができます。

平均ブロック回数が1.5以上である選手(+Okafor)を比較として示しています。なんと Embiid は、Rudy Gobert や DeAndre Jordan といった名だたる選手よりもDFG%が優れています。1試合あたり8回近いリムプロテクト回数ながらこの数値、非常に素晴らしいですね。先に書いた言葉、彼1人でディフェンスが変わると言っても過言ではない過言ではない気がしてきました。

それでは Embiid のディフェンスの影響力の秘訣は何なのでしょうか。横軸にDFGAをとり、総ブロック回数を総リムプロテクト回数で割り100をかけた値をブロック頻度(BLK%)、すなわちリムプロテクト機会の何%をブロックしているか示した値とおいて縦軸とします(※)。

Embiid はBLK%が30%強、すなわち大まかに言うとリムプロテクトのうち3回に1回はブロックしているということです。彼のディフェンスの凄さの一つは、このブロック能力であるということができるかもしれません。

それでは次に Embiid のオフェンスに注目します。彼のシュートエリアにフォーカスしてみましょう。彼はどこからシュートを撃つことが多いのでしょうか。

まず制限エリアの Embiid を見てみましょう。横軸にシュート総試投数の何%を制限エリアから撃ったか[% of Restricted Area FGA]を取り、縦軸に制限エリアシュート成功率を取りました。ここでは制限エリアシュートを100本以上放った選手+Embiid のデータを示しています。

Embiidは、制限エリアのシュートがそれほど多くない選手だと分かります。次に制限エリアを除くその他ペイントエリアについて、同様のグラフを取ります。ここでも、対象データはその他ペイント内シュートを100本以上撃った選手+Embiidです。

Embiid は、このエリアからのシュートもそれほど多くないようです。続けて、ミドルレンジコーナー除く3Pシュートについて同様のグラフを見てみましょう。いずれも総試投数100本以上+Embiidのデータが対象です。

全4つのエリアについて見てきましたが、いずれも特筆してシュート割合が大きい、ということはありませんでした。つまり Embiid は、各エリアからバランスよくシュートを撃てる万能タイプということができるでしょう。平均リバウンド数が10本以上だった選手+Embiidについて、制限エリア、その他ペイントエリア、ミドルレンジ、3Pシュートの4つのエリアからのシュート頻度を表にまとめました。

なるほどやはり Embiid は、ビッグマンの中では万能オフェンス型の選手と言えるでしょう。タイプで言うと、DeMarcus Cousins や Karl-Anthony Towns, Kevin Love が近いでしょうか。

Embiid のディフェンス、オフェンスについて簡単に見てきました。最後に Embiid の総合的な支配力について見てみましょう。横軸に試合ごとの PIE(試合における支配力や貢献度、影響力の指標)をとり、縦軸にNETRTG(100ポゼッションあたりの得失点差)をとり、データ点の色で試合の勝敗を表現します。

PIEが高いほどNETRTGが高い、すなわち Embiid が活躍するほどリードが大きくなる、そして勝利につながる傾向が見えています。ルーキーながらも Embiid は、チームを勝利に導けるだけの力を既に備えているということではないでしょうか。

ということで、今回は Joel Embiid のスタッツを簡単に見ていきました。kれはまだまだ 22, 3歳 の選手であり、今後どんな選手になっていくのかは憶測でしか語れません。しかし、NBAファンを楽しませてくれる選手になることは確かだと思います。彼のキャリアは引き続き追って行くつもりです。

[おわり]

(※)実際は、ブロックがすべてリム周りで起こるわけではないので、この計算式は科学的には正確ではない。しかしリム周り以外のブロックはそう多くはないと仮定し、全てがリムプロテクトで起きたブロックであるとして計算している。

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