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1st Team All "Non-1st-Team-All-NBA" オールNBA・エースじゃない・チーム —ビッグマン編①

 NBAはシーズン終盤に差し掛かっています。この時期になると「MVPは誰だろう」とか「MIPは誰だろう」など,個人タイトルに関する話題が増えてくるかもしれません。

 数あるタイトルの中でも,注目度の高いものの一つが「オールNBA・チームではないでしょうか。1st チームから 3rd チームまで各5選手が選ばれ,いわば「今年の NBA の顔はこの人たちでした!」というような最強メンバーが選ばれます。例えば 16-17 シーズンのオール NBA 1st チームはジェームズ・ハーデン(HOU),レブロン・ジェームズ(CLE),ラッセル・ウェストブルック(OKC),カワイ・レナード(SAS),アンソニー・デイビス(NOP)でした。

 しかし!僕は納得いかない!オール NBA に選ばれるような華々しい選手たちだけでなく,自分の役割をハイレベルでこなし,堅実な貢献をしている偉大な選手も多いはずです。例えばカンターとか,カンターとか,そうだな,あとカンターもそうですよね。そこで MID NOTE では,そういった「オールNBAには選ばれないかもしれないけどすごく良い貢献をしている」と思われる選手を選出し,オールNBA・エースじゃないチームを結成したいと思います。

 今回と次回の分析で「ビッグマン」から1選手を選出したいと思います。そこで候補選手を絞るために,  で ①シュート成功率が 55%以上  ②出場試合数が 40 試合以上 ③シュートの平均試投数 5 本以上 の3点に該当する選手について考えてみます。

 以下,データは  のものを使用。ただし現地 3/20 の試合終了時点ものです。

0. 候補選手一覧

上の ①~③ の条件に該当する選手は 23 選手います

…「オールNBA・エースじゃない・チーム」と銘打ってはいますが,エースっぽい選手もちらほら混ざっているような…。まあお気になさらず。

1.UGS% と 出場時間

 まずUSG% についてみていきましょう。USG% とは,ザックリいうと「チームのオフェンスのうち何%をその選手が担ったか」を表します。

 例えば 10ポゼッション中その選手が 5本シュートを撃ったとすると,USG% は 5/10=50%となります。また,10ポゼッション中その選手が2本シュートを撃って1回ターンオーバーしたとすると,USG%は (2+1)/10=30%となります。ちなみに 16-17シーズンの USG% リーダー(41試合以上出場選手を対象)は Russell Westbrook(OKC)の 40.8% です。例えば 16-17 のKarl-Anthony Towns(MIN)の USG% は 27.4% です。オンコートは 5 選手なので,USG%が 20% 以上だと「オフェンスで意識的に使われている」と判断できそうです。23選手を USG% が高い順に並べるとこうなります。

さらに,出場時間を横軸に,USG%を縦軸に取ったを描いてみましょう。選手名のサイズは2Pシュート成功率と対応させています。

 右上の3選手(Julius Randle(LAL), Dwight Howard(CHA), Hassan Whiteside(MIA))は出場時間が多くてUSG%が高い,すなわち「オフェンスでの貢献を期待された選手」だと考えられます。逆に右下の4選手(Rudy Gobert(UTA), Steven Adams(OKC), DeAndre Jordan(LAC), Taj Gibson(MIN))はたくさん出場してるけど USG% が低い,つまり「オフェンス以外での貢献を期待された選手」です。また,左上の2選手(David West(GSW), Montrezl Harrell(LAC))は短時間の出場で USG%が高い,すなわち「短い時間の中で大きなオフェンスのインパクトを残すことを期待されている」と推測できます。こうしてみると,おなじカテゴリーの選手でも,求められる役割が異なることが分かります。単純にスタッツを比較するのではなく,役割の違いを踏まえた比較をしないと「貢献度の高い選手」かどうか判断できません。いくつかの観点から選手の貢献度を見ていくことが重要でしょう。今回は次章以降「スコアリング」に注目して話を進めていきます。

 また,彼らの出場時間のも見ておきましょう。安定して出場することは,チームからの信頼の証と考えることができるでしょう(もちろん戦略的な部分もありますが)。

 例えば David West(GSW)のヒストグラムは幅が狭いことが分かります。また,出場時間が 5~15 分でほぼ安定していることも見て取れます。ヒストグラムの幅が狭いほど「安定した出場時間」であることを意味します。なので Alex Len(PHX)などは,日によって出場時間のバラつきが大きいですね。

2. スコアリング

 23選手を2Pシュート成功率(2P%)が高い順に並べると次のようになります。

23選手のうち 2P% が最も高いのは Dwight Powell(DAL)の 66.0% **です。ザックリいって 3 本中 2 本の2Pシュートを決めていることになります。また,彼はフリースロー成功率(FT%)が 71.2% と比較的高確率です。きっちり得点できる堅実さがうかがえます。David West(GSW)も興味深い成績を残しています。彼はたった 13.8分 の平均出場時間で 7.0 得点(2P%:59.9%, FT%:75.0%)のインパクトを残しています。

 オール・エースじゃないチームを考えるうえで,この「インパクト」という観点はポイントの1つな気がします。ベンチからの短い出場時間でも,試合の流れを大きく変えることはできます。そこで次に,横軸に 36分換算の 2Pシュート試投数,縦軸に 2P シュート試投数を取った散布図を見てみましょう。36分換算で見た時に,たくさんシュートを撃ちつつ成功率が高い選手は「スゴい」と言えそうです。

 名前のサイズは 36分 換算の得点数と対応しています。

 成功率が高いのは Powell ですが,そもそもシュートをあまり撃っていないようです。堅実なシュートを撃っていることがうかがえます。逆に,Hassan Whiteside(MIA)や Dwight Howard(CHA)は,得点源としてたくさんシュートを撃っており,マークも厳しいぶん 2P% が低めになっていると推測できます。出場時間のわりにたくさんシュートを撃ちながらも成功率が 60% 近いWest や Max the Kanter(Enes Kanter / NYK)は素晴らしいですね。

 特筆すべきは Montrezl Harrrell(LAC)です。彼は 36分換算の2Pシュート試投数が 23選手中2番目に多い 14.8本 であるにも関わらず,その成功率は 63.6% と非常に高水準です。試合のなかで大きなインパクトを残していることが分かります。前の章を振り返ると,彼は短時間でのオフェンスの貢献が期待された選手でした。ということは,彼はその期待に十分応えている,貢献していると言えるのではないでしょうか。

 さて次に,各選手のスコアリングの「安定感」を大雑把に見てみます。第2,第3,それ以降の得点源として考えるならば,安定してシュートを決めてくれる選手は貴重なはずです。そこでまずは 36 分換算の得点のヒストグラムを描いてみましょう。幅が狭いほど「安定して得点をあげている」と判断できます。

 Clint Capela(HOU),Julius Randle(LAL),Mason Plumlee(DEN),Max the Kanter(Enes Kanter / NYK),Steven Adams(OKC),Taj Gibson(MIN)らは安定感があるように見えます。逆に「短時間でインパクトを残す」系の West と Harrell の得点は安定感がないようです。特に Harrell は 23 選手のなかでバラつきが最も大きいように見えます(良く言えば「爆発力がある」)。

 次いで,2Pシュート成功率(2P%)が55%以上だった(2Pシュートを3本以上決めた場合)の頻度を調べてみましょう。例えば 10試合出場して 5 試合で 55% 以上の 2P% だった場合,その頻度は 5/10=50% です。オレンジ色のデータが「55%以上の2P%だった試合頻度」を表しています。

 55% 以上の頻度が最も高いのは Clint Capela で,なんと出場試合のうち 80% 以上(5試合中4試合!)で55%超の 2P% を記録しています。Taj Gibson(MIN), Steven Adams(OKC), Max the Kanter(Enes Kanter / NYK), DeAndre Jordan(LAC)なども高頻度ですが, Capela は別格です。

 そしてもう一つ気になったことが…。もしかして,55% 超の 2P% の試合頻度と オフェンス効率(OFFRTG / 100ポゼッションあたりの得点数)って相関してない?

 相関係数は 0.66 でした。これが意味するのは「高確率でシュートを決める試合が多い選手ほど,オフェンス効率が高い」こと,言い換えると「安定感のある選手ほどチームのオフェンスに影響を与えられる」ということかもしれません。そうだとすると,オフェンスで勝負するチームにおける安定感のあるビッグマンの重要度は大きいのかもしれません。

 さて。彼らがなぜこれほど高頻度に 55% 超の成功率を叩き出せるのか?考えられるのは「アシストを受けてのシュートが多い」ことや「(オフェンスリバウンドからの)セカンドチャンス・ポイントが多い」ことです。そこで横軸に2Pシュート成功数のうちアシスト付きの割合を取り,縦軸に得点のうちセカンドチャンス・ポイントの割合を取った散布図を描いてみます。選手名のサイズは2P% が 55%以上の試合頻度を表しています。

 右に行くほど「アシスト付き2Pシュートの割合が高い」,つまり「味方に生かされて得点する選手」「合わせの上手い選手」だと言えます。また,上に行くほど「セカンドチャンス・ポイントの割合が高い」ので「オフェンスリバウンドからの得点が多い」と推測できます。

 Clint Capela(HOU)は右下に位置しています。つまり「味方に生かされ」系ビッグマンです。HOU には James Harden と Chris Paul がいるので,納得の結果かもしれません。一方,Steven Adams(OKC)や DeAndre Jordan(LAC),Max the Kanter(Enes Kanter / NYK)はセカンドチャンス・ポイントの割合が多い選手です。味方のシュートミスを拾い,得点につなげていることが推測できます。Adams と Jordan はアシスト付き2Pシュートの割合も低くないので,味方とのコンビネーション&オフェンスリバウンドで得点する,まさに「ザ・ビッグマン」な点の取り方と言えるかもしれません。この 23選手のうち特殊なのが Max the Kanter(Enes Kanter / NYK)です。彼は 23選手中最大のセカンドチャンス・ポイント割合ながら,アシスト付き2Pシュートの割合が最小です。つまり,味方とのコンビネーションではなく,オフェンスリバウンドあるいはポストアップなどで得点を重ねていると推定されます。メイン・ウェポンではないにせよ,困った時の得点源として機能している可能性があります。俺がカンターファンなので良いように解釈しているだけだけどな!

 ということで,今回分かったことをまとめます。
・Montrezl Harrell(HOU)と David West(GSW)は短時間で大きなインパクトを残している選手。
・David West(GSW)や Max the Kanter(Enes Kanter / NYK),Montrezl Harrell(LAC)は出場時間の割に多くのシュートを放ち,かつ成功率が高い。特に Harrell がすごい。
・Clint Capela(HOU),Julius Randle(LAL),Mason Plumlee(DEN),Max the Kanter(Enes Kanter / NYK),Steven Adams(OKC),Taj Gibson(MIN)は得点の安定感がある。
・Clint Capela(HOU),Taj Gibson(MIN), Steven Adams(OKC), Max the Kanter(Enes Kanter / NYK), DeAndre Jordan(LAC)は多くの試合で高い2P%を記録しており,成功率の安定感がある。とくに Capela がすごい。

 今回の内容を踏まえると,オールNBA・エースじゃない・チームに近いのは複数回名前の挙がった Harrell(2回),West(2回),Kanter(3回),Capela(2回),Adams(2回),Gibson(2回)でしょうか…。カンターが一歩リードかな!参ったなあ!贔屓目にしたつもりは,ないんだけどもなあ!そうかそうか!参ったなあ!

 そうは言っても,ビッグマンの貢献度はスコアリングだけで決まるわけではありません。次回はリバウンド・アシスト・その他のスタッツにについても見ていきたいと思います。

【おわり】

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