ルビとラップ

本気の気合いと書きなさいクズ ほんで読み方はマジのバイブス

韻踏合組合 マラドーナ

日本語ラップにおいて、ルビが用いられたものはそう多くない。

今日は無色ポエムさんのTORIMODO'sについて少し書きます。らふと迷いました。

hook
自ら浴びせた罵詈雑言 Q. 君は今己に何を問う
記憶の奥に書き残す構図 愛を取り戻す

記憶(iou)書き残す(aioou)あたりは渋い踏み方。登場人物が自分と君の二人が居て、自分は自分に悪口を言っている状態。愛を取り戻す対象はこの後の歌詞から考えるに自分自身でしょう。

あの日捨てた妄執 10代(青い春)の奔流
※(習作)の参照欄 感情がctrl+x(カット)された
感性の暴走 甘言と相乗 野放図な周りと私の落差
文化(カルチャー)の内部で叫ぶ異文化(デカルチャー)
さながら水と油
相いれないと まくし立てた 祭りの跡
間違いや 悪意だけじゃ 軽いと悟る

()内はリスニングの結果なので合ってるかどうかは謎。
このverseによってhookの記憶はおそらく十代の時、構図は野放図で回収されてますね。構図がまとまったもので野放図がまとまってないという意味。

このまま宇宙(そら)へと飛び降り自殺(フリーフォール)
大人にならない不眠症
御伽噺の主人公
なれないままの夢遊病(あかんぼう)
感動や葛藤不格好な発想
お洒落に決めるだけの木偶人形(うそつき)
此処が脳内(コックピット)
人生は一回こっきり 合わない帳尻

このverseお洒落ルビ芸が二つもあります。一つは言わない方の文字で韻を踏む。主人公と夢遊病で踏めてるのに敢えてあかんぼうにしてその後の感動で踏む。もう一つは木偶人形(うそつき)、二重ルビですね。これ一旦木偶人形(ピノキオ)を経由して、その後ピノキオ(うそつき)じゃないと出力されない単語なので。御伽噺という単語でピーターパンとピノキオを匂わせてるのも評価されるべき点なのではないでしょうか。

君の声が背景(ループバック) まだ足りない存在(空間)
居られない普通じゃ その個性(イメージ)を収監
物を想う瞬間 音楽→(から)文学 
実像となる文化 今見据える終点(ブーンバップ)
この場所ならば 今じゃ戦地
身から出た錆 声 侘び錆とイメージ
現実よりも手に余る勝負
唯一電波を発する動物
覚悟とはき違え手に持った手段(ロープ)
焼き印のように消えない恐怖
その考えなしの頭じゃnope


音楽→文学 がこの曲の中で一番好きな部分。文学→音楽は分かるけど逆は中々あんまりないと思うんですよね。
君の声が背景で「が」が発音されないのは、リズムの兼ね合いだと思う。
一回踏んだ文化とイメージが再登場、ただし読み方はそのまま。別の読み方で出すっていうのもよくあるパターンですが。
今じゃ戦地ってセンチメンタルと掛かってるかも? あんまり使わない言葉だし、イメージとしか踏めてないので。侘び寂びを詫び錆びとしている意図が明確に読めない。

感想。 自己矛盾や周りとの違いについて悩みを抱えながら、自己肯定感を持とうとする無色ポエムと解釈しました。あと今回の作品は大分naro-k好みになっててちょっとびっくりしました。ビートもかっこいいし。

 ルビを使うことによる効果っていうのは、情報量の増加なんですけど、日本語ラップはそれをダブルミーニング等で行おうとしてきたわけで。字幕ありきのハイコンテクストはどうしたって流行る余地が無い。サブスク全盛期ならなおさら。生、現場主義者には取り入れられない文学は、vrapという辺境で咲くかもしれませんね。

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