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喬太郎さん、「次回は古典落語で」

 6月24日に催された「COREDO落語会」。
 CORED室町の最上階にある日本橋三井ホールは満席です。
 

仲入り後は喬太郎さんのみで、喬太郎さんも苦笑い

 さて「COREDO落語会」は基本、開口一番があってそのあと2人の演者さんの後に仲入りになるのが普通ですが、今回は4人を終えた後です。
「仲入りまで長いなあ」というのが率直な感想でした。

<プログラム>
ごあいさつ  山本益博
イヤホンガイド付き「子ほめ」   柳家しろ八  +  三遊亭わん丈
「青菜」             林家たい平
「三枚起請」           三遊亭兼好
「船徳」             桃月庵白酒
=仲入り=
「すみれ荘二〇一号」       柳家喬太郎

 トリを務める喬太郎さんのネタは新作落語です。
「三人が古典落語をやってこれで終わりでいいんじゃないですかね」「ふつう4人やって仲入り後の1人という、そんな大したネタじゃないいんですよね、『子ほめ』に毛が生えた程度のものなんで」とマクラで嘆く喬太郎さん。
 それもそのはずネタ自体が大ネタではないのでマクラで時間を稼ぐしかないといったところでしょうか。
 
 ここの落語会はプロデューサーの山本益博氏が事前にネタを決めています。個人的には、結構そのネタが「この師匠だったらほかのネタを聴きたいなあ」と思うことがしばしば(主催者に怒られますね)。
 普通の落語会のように噺家さんがネタ帳を見て、客席の雰囲気を図り、ネタを決められる方式でいいかと思うのですけれど。

 余談ですが、当日にもらったパンフレットのプログラムには「すみれ荘201号室」と書かれていましたが、正確には「すみれ荘二〇一号」みたいです(「室」はつかないようで、ポスターは正しい表記でした)。

「次回は『文七元結』で」とオーダーした喬太郎さん。この新作落語をぼやきながらも熱演されておりました。
 
 そして、落語に登場する「東京ホテトル音頭」。すみません、こんな曲がはるか昔に出されていたんですね。初めてナマで聴きました。
 喬太郎さんと同世代もしくはそれ以上と思われる男性陣たちからは爆笑をさらっておりましたが、80年代のバブル期の下ネタ的な歌詞に正直、何も面白さを感じません。喬太郎さんにはいつも笑わせてもらっているのですが、さすがにこのネタはちょっと……。
 曲を歌う前に「お子さんがいる前では」と一応ためらったワケが分かりました(この落語会にお子さんがいるのは初めてかと。仲入りで見かけたときはお子さんが小さいので驚いたものです。よく喚かず我慢したものですね、古典落語もお子さんにとってはちょっとハードルが高いと思われます)

 ところで、喬太郎さんは昨年の夏くらいからひざを痛めておられるようで今回の高座も見台を置き(釈台なんですかね? 上方落語では見台を使って落語をしているのが普通なので同じものかと思ったのですが)、あぐらをかいて勤めておられました。早くよくなられることを願っております。

兼好さん、「三枚起請」絶好調!

 「COREDO落語会」の今回の三遊亭兼好さんのネタは「三枚起請」です。
 話としては、吉原の喜瀬川という女郎に入れあげた三人がそれぞれ起請文をもらっていたということで「さあ、このままでは腹の虫がおさまらん」と三人一緒に吉原に乗り込んで……。

 この女郎のずる賢さ、とっさの判断による対応など兼好さんが演じるとリアルで目の前にいるような気がします。男性に愛想を振りまいていたかと思えば、3人が事実を知ったとわかるや否や本性をさらけ出す場面の変化を見事に演じ、思わず笑ってしまうのでした。 


 そういえばこの落語会では去年1月、兼好さんが当日、休演されました。このときの落語会はやや波乱含みでして、前日まで春風亭昇太さんはコロナの関係で高座に上がるかどうか不明だったのでした。幸い、復帰されて快活に笑いをとります。
 兼好さんの代役は春風亭一之輔さん。急遽2席することになったのでした。 

 兼好さんが演じる女性は魅力的ですね。嫌味にならない、女性の愛嬌と嫌らしさを演じるのがとてもうまいと思います。

 去年10月19日の国立演芸場で開かれた三遊亭兼好さんと桂米團治さんの二人会もとても良かったので、今回もその期待を裏切らない面白さでした。
 

国立演芸場で催された二人会。隣の国立劇場で上演中の「義経千本桜」の影響を受けてのネタか

 ちなみに国立演芸場で高座にかけた「厩家事」のやきもち焼きの女房などとてつもなくうまかったです。嫉妬深すぎてもこちらが引いてしまいますから、どことなく愛嬌もあり、許せる部分のバランスがいいんですね。

 トリを務めた喬太郎さんがマクラで自分が日本大学の商学部の落語研究会であったことを説明し、兼好さん以外は今回のメンバーが皆落研出身だということを仰っておられました。ちなみに兼好さんはラグビー部だったとか。そう言われると面影が残っているような気がします。

仲入り後が一人となったのは、たい平師匠のせい?

 さて、そもそものこの歪な構成になった理由がわかるのが桃月庵白酒さんが高座に上がったときでした。
 お客さんの疑問を代弁するかのように「落語会というのは、3人やってそのあと仲入り後に2人というのがふつうなんですけれどね。だれかのせいでですね、すでに2番目の方は楽屋を出られてますしね」と言いつつ、「でももしかしたら喬太郎兄さんかもしれませんね」と触れたものだから、高座に上がったときに喬太郎さんが「私のせいではありません!」と無実を訴えておられましたが。

 白酒さんはそのほかにも「仲入り後に一人というのはたいてい大ネタなんですよ。たとえば『地獄八景亡者戯』とかね。1時間半やったそうですから」と説明しておられました。
 たい平師匠が次があるから順番を早くしてほしいということならば、2番目に出たらそれで済む話です。なぜ4人の高座のあとで仲入りとなったのか理由がわかりません。

ポスターは高座の順番がわからない形で作成されています

改善してほしいこと

 日本橋三井ホール自体は悪くないホールなのですが、如何せん、毎回思うのはホールから続くエスカレーターまでの導線の悪さ。ホールから出てエスカレーターへ向かうと、エスカレーターに人が集中するためかなり混み合うのが難点です。

 コロナ禍のときには順番に席を立たせるということでしたが主催者側の段取りが悪く、途中から皆が聞いていないため勝手に席を立って帰るという始末。今回は5類になったということもあり、終演後はとくに指示はありません。一斉にエスカレーターへ皆が押し寄せる感じになり、スタッフ一人くらいは声をかけていましたが、ドミノ倒しになっても不思議ではない状態なので気になります。もう少し何とかならないものですかね~。

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