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日本の戦後60年の歴史から見る、これからのデザインの在り方。〜グッドデザイン神戸展2019レポート〜

歴史を知ることは未来を知ること。いいことを教えていただきました。


今回、たまたまTwitter上で見つけたイベント「グッドデザイン神戸展2019」の「グッドデザインの60年」という講演に参加してきました。

↑公式Webサイト


この公園ではグッドデザイン賞の歴史を追いながら、日本の社会とデザインの変化について学ぶ、という、ちょっと学術チックでもある内容。

大学でもデザインの歴史というものは勉強しましたが、グッドデザイン賞と絡めて、ということで、新しい視点でまた日本のデザインの視点を知れるのではないか、と思い、当日でしたが急遽思い立ち参加しました。


事前申し込み不要の参加無料!すごい!



会場紹介〜デザイン・クリエイティブセンター神戸「KIITO」〜

今回の会場は三宮駅各線から徒歩15分と、ちょっとだけアクセスは不便ですが、近くに神戸みなとのもり公園がある、「KIITO」という施設で行われました。

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↑エレベーターがものすごく渋いんですよ…。


50名定員ということで、参加できるかな〜なんて心配しながら会場へ足を運んだのですが、私が一番乗り(笑)ということで、一番前の席に座らせていただきました。



講師紹介

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久慈達也さん
グッドデザイン神戸展 2019キュレーター

10月31日から11月頭まで開催されていた今年のグッドデザインの「GOOD DESIGN HISTORY」の展示担当をされたそうです。すごい!



早速ではありますが、講演内容をざっくり追っていきましょう。ここでは、日本の歴史を10年〜20年で一括りとし、5つの時代に分けて解説いただきました。


【1950年前後】終戦後のアメリカ・イギリスでのデザイン運動に影響を受ける

第二次世界大戦後、アメリカやイギリスなどで生活水準を取り戻すためのデザイン運動が起こります。

アメリカではBauhaus(バウハウス)によるモダンデザインの学校が開校したり、イギリスではイームズによるグッドデザイン運動などが次々と起こります。

日本でも、そのあとを追うように、グッドデザインの啓蒙を目的としたグッドデザイン賞品選定制度が開始します。これが、現在のグッドデザイン賞の前身となるんですね。


最初は現在のように公募制ではなく、審査員が一から足を運んで選んでいたそう!大変だ…。



【1950年〜1969年】生活の復興

1950年は、終戦直後の時代にあたります。戦後の日本では、生活の復興をテーマに、日用品や工業製品のデザインの評価がなされていきます。

この時代は、ホンダのスーパーカブキッコーマンの醤油差しホッチキスなどが受賞対象として選定されました。

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↑会場には1950年代〜現在までに選定された作品の実物をお持ちいただいていました。1950年代のNikon!!!!

人々の生活に根差した日用品が多く受賞しています。この時代のデザインは、のちにロングライフデザイン賞を受賞するものばかりだったとか。


ここで久慈さんのGトリビア。(グッドデザイン賞にまつわるトリビアをいくつか紹介いただきました。)

日用品など人々の生活を支えてきたものが受賞対象となる中、最初にグッドデザイン賞に選定されたのは、なんとCanonのカメラだったそう。日用品ではなかったんですね。



【1970年〜1989年】 豊かさ

これまでは生活の中で必要とされるものが「よいデザイン」の基準とされてきましたが、1964年の東京オリンピックなどを経て、生活の基準がある程度復興し、ついてよいデザインの基準は「豊かさ」に移行していきます。

また、技術の進歩が皆一様な方向を向いていたことも特徴的だと久慈さんは述べます。その一例が自動車。排気量の技術競争が凄まじかった時代だったようです。

また、家電等も花柄や家具様式のデザインから、工業的な美しさを求めるようになってきます。(花柄の家具ってなんでしょう、私はまだ生まれてませんのでその辺り想像がしづらい…。)


この時代にグッドデザイン賞にグッドデザイン大賞が始まったり、審査対象が日用品だけだったのが、全ての工業商品にまで領域が拡大していきました。

この時代に受賞したのは、自動車ではシビックカローラ、また、カメラでは写ルンです(最近また流行ってきてますよね)や、SONYのウォークマンでした。


そして、この頃から、今までは海外の技術やデザインを模倣したり後追いをしたりするだけだった日本が、逆に海外から真似されるようになります。そこまで、技術やデザインの水準を上げることができたんですね。



【1990年〜1999年】 情報の邂逅

1980年代後半に起こったバブルが崩壊したり、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件など、日本の歴史に爪痕を残す悲しい事件や不況などが起き、「失われた20年」といわれる、少し後ろ向きな時代が幕を開けてしまう90年代。

一方で、携帯電話サービス、iModeの開始やWindows95の発表など情報通信技術が興ってきた時代でもあります(筆者、ようやくこの辺りで生まれます)。


この時代に受賞したのは、愛玩ロボットのAIBO携帯電話、自動車ではプリウスなども登場してきますね。新しい技術が社会の革新を後押ししていきます。


グッドデザイン賞も大きく変化します。今までは日本のデザインレベル(生活の向上)を目的として公的機関で運用をしていましたが、その目的が果たされたとされ、グッドデザイン商品選定制度は新たに、現在のグッドデザイン賞として民営化されます。審査領域にも建築部門や、新たな領域部門などが登場し、ますます広がりを見せました。

ここでGトリビア。この時代には、あの怪談で有名な稲川淳二さんが自身がデザインした車止めでグッドデザイン賞を受賞したそうです。稲川淳二さんはインダストリアルデザイナーなんですよ?知ってました?



【2000年〜2009年】 生活の編集

情報通信技術は急速に発展していき、インターネットの常時接続が実現します。常に私たちはインターネットとつながっている。現在の社会の状態にほとんどなった、という時代です。

また、情報のやり取りが、マスメディア等からの一方的なものではなく、自分で情報を探すようになり、価値観の多様化が進んでいった時代でもあります。インターネット、SNSの普及がこの頃ですね。

誰でも情報にアクセスできる、価値観の多様化を受けて、グッドデザイン賞の審査領域にコミュニケーションデザイン部門ができ、グラフィックデザインも審査対象に入りました。こんなに最近だったなんて、グラフィックデザイナーの私としては一番の驚きでした。


この時代に受賞したのは、佐藤可士和デザインのSMAPのプロモーションのグラッフィックや、デザインモバイル無印良品などです。


この時代の大きな特徴は二つあります。

一つは、大変な不況のため、デザインが「売る手段」として利用されていたこと。(デザインモバイルや佐藤可士和のようなスターデザイナーの誕生がまさにそれ)

そしてもう一つは、グッドデザイン賞の選定意図が、新しいデザインの発見と共有に移行していったことです。



【2010年〜2019年】 社会の課題解決

そして直近の10年。それまではインダストリアルデザインやプロダクトデザインの受賞事例が多かったのが、2011年の東日本大震災を受けて大きく変わります。

日本の災害が多いことや、世界の課題などを解決するための商品、サービス、そして、考え方や取り組みに審査基準が向くようになりました。サステナブル(持続可能な発展性)であることが、よいデザインの前提条件とされるようになったのです。


この時代に受賞したのは、熊本県の地方創生をテーマにしたくまモンや、電気自動車のリーフなどです。また、おてらおやつクラブという、お寺発信の、貧困問題を解決するためのマッチングの取り組みが受賞していました。


ここ近年で大きく変わったことは、デザインは、装飾や機能美を追求するものだったのが、仕組みや取り組みなどの枠組みにまで大きく解釈が広がったことと、課題を顕在化させ、未来への気づきの装置として機能し始めていることです。




最後に

講演後には展示ツアーを久慈さん自身にしていただきました!

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まとめ〜これからのデザインのあり方〜

デザインは常に日本の社会情勢や人々の生活に寄り添ってきていました。

最後にくじさんにお声がけいただき、こんな素敵なお言葉をいただきました。


「歴史を知ることは未来を知ること。これまでのデザインの流れを知ることで、これからのデザインの未来がわかる。」


モノからコトへ。多様化が進み、ニーズや課題が細分化していく社会の中で、デザインはより本質的な答えを提起する重要な役割を担っていくことでしょう。



筆者紹介

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関西圏内でデザイナー/カメラマンとして週末フリーランスをする23歳、女。スターバックスのコーヒーを飲みながらスターバックスで仕事をするのが好き。

これからのデザインで重要になってくるのはAIだそう。


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