見出し画像

無職引きこもり日記 夢ー白いタイル 8月26日

 私とピカッチは 日曜日の夕方、山の方に向かって車を走らせている。信号待ちをしていると、すぐ前を突っ切って行った一台の車が私の車のフロントバンパーのあたりにコツンとぶつかる。あっと思っているうちに、車は止まらずそのまま走り去ってしまう。「何あれ、今ぶつかったよね」とピカッチは言う。「いいの。大したことないと思うから。」そう言ったとき、正面からさっき走り去った車が猛スピードで戻ってくる。水色の外国製コンパクトカーだった。私たちの車の横を見る間に通り過ぎる。「何あれ」と今度は私が言う。
 それから、もっと山の方まで来る。どこへ行こうとしてたのだっけ。日曜日の夕方、休みが終わるからちょっとお出かけしたくなったのだっけ。「どうする?博物館でも行く?」山に市営の小さな博物館があったのを思い出して私は言う。でも、もう四時か。博物館はそろそろ閉館だった。そのまま山を上がって行くと、水道局か何かの施設にたどり着く。
 白いタイルの建物を私たちは登って行く。薄暗い冷たい通路。地下水が染み出して、じめじめとタイルを濡らしている。何階かまで上がったとき、何だか気味の悪さを感じてくる。不潔な青いタイルが片隅に敷かれ、古くて汚れた便器が置いてある。ピカッチに「そろそろ戻ろう」と声をかける。他にも見学者がいて、その人たちの声がタイルの建物にこだましている。「行くよ」と言っても、ピカッチは「うん」と答えたままなかなか動かない。窓の外か何かに気を取られているようだ。
 もうすぐここは暗闇に包まれてしまうだろう。早く戻らねば。「先に降りてるからね」と私は言って、階段を降りようとするが、それはいつの間にか不思議な形をした螺旋階段に変わっている。白いタイルを幾重にも重ねた岩盤のような板が、カタツムリの殻のように渦巻きながら下に延びている。一枚一枚を確かめながら降りていかねばならない。私はピカッチを振り返る。「ねえ、行くよ。一つ一つ足を置いて行けばいいから」私はちゃんと降りられるか自信がないけれど、そのようにピカッチに指示する。もはや階段かどうかもわからない渦巻き状の白いタイルに不安定に足を乗せて、私たちは降りて行こうとしている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?