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ミチル商会社史と司書のおねいさん

また一冊、読みながら鼻息が荒くなり動悸が速くなる小説と出会った。
いつまでも読み終わりたくない。この小父さんといつまでも生活を共にしたい。大きな事件が起こりませんように…。女になんか近づいちゃいけない!
思わずため息が出たりべそをかいたり、朝夕の通勤電車で感情を隠し切れない日々だった。

小川洋子著『ことり』

なんといっても小父さんの淡々とした愛おしい日々と、そこに加わるささやかな出会いの妙が得も言われず好き。

月並みだけどハラハラドキドキしたのが、公立図書館分室の司書との関わり。
この部分を読んで、この本が勤務先の「図書室スタッフへのおすすめコーナー」に置かれていた意味がわかった。
あー、もう、図書館員と利用者の間に流れる特有の空気がたまらないのです!

レモンイエローのポーポーと、小父さんのお兄さんの白いバスケット、缶詰のスープ、カットされたりんご、ミチル商会の社史、青空薬局のおばはんと幼稚園の園長、昼にベンチで食べるパン、虫箱のおじいさん、ポーポー語をやりとりする小父さんとめじろちゃん…萌え萌えポイントの連打に、やられました。(ポーポーとは何か、については、ぜひ本書を読んでいただきたい!)

小父さんがめじろと出会えたように、この本に出会えて良かった。感謝。

そして、駅のホームで、しおりを落としたことに気づかず読み入っていた私に、「落としましたよ」と拾って持ってきてくれたあなたにも、感謝です。