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関西電力高浜原発3、4号は蒸気発生器を交換せずそのまま廃炉に!!==美浜2号事故を振り返る==

傷ついた細管には栓をしていたけれど交換することに

高浜3、4号は定検の度に蒸気発生器の細管に傷がみつかり、その管に栓をして動かしています。まもなく運転開始から40年の老朽炉ですが、従来の主な損傷は管の内側からの腐食が原因でした。しかし長期運転停止の後、管の外側に損傷がみつかるようになりました。関電は金属のごみが管にくっついたり、擦れたりしたことが原因としています。外側の傷は栓をしても腐食環境が変わらないので傷の進展を抑えることができません。関電は高浜3、4号の蒸気発生器ごと交換することを計画しています。

蒸気発生器とは

福井県の資料よりhttp://www.athome.tsuruga.fukui.jp/nuclear/information/fukui/data/betsu_04.pdf

蒸気発生器は加圧水型原発のアキレス腱ともいわれています。いわゆる熱交換器なので、細管の厚みを厚くすると効率の良い熱交換ができません。細管は長く、本数も多いので、検査も大変で、時間がかかります。細管の中の1次系の水(高温の熱湯)は温度約320度、圧力15MPa、外側の2次系は温度約220度、圧力6MPa。2次系の高熱蒸気でタービンを回して発電しています。この温度差と圧力差の中、運転しているので、ずっと激しい振動が起きています。細管の数はそれぞれ約3300本あります。細管の外径は22mmで10円玉くらいの大きさ。厚さはわずか1.3mm、これもちょうど10円玉の縁くらい。蒸気発生器自体は電車の車両一台くらいあり、高さが約21m、直径は太いところで約4.5mあります。

美浜原発2号機でギロチン破断事故

1991年2月9日、美浜原発2号機の蒸気発生器細管がギロチン破断して、原子炉が自動停止、ECCS(非常用炉心冷却装置)が作動するという大事故を引き起こしました。
この事故の前から、特に高浜2号の細管の損傷が増えてきて、損傷がある細管には栓をしたり、騙し騙し使ってきたのですが、ついに関電は蒸気発生器そのものの交換を申請、許可が降りた矢先にこの事故が起きました。
この事故の前、相次ぐ蒸気発生器細管の損傷に対して関電は「インコネル(細管の材質)は粘りがある」とか「損傷のないところは新品同然」という説明をしてきました。でもそんな「粘り」はなく一気に破断してしまうことがこの事故でわかりました。
この事故の原因は、蒸気発生器の上部で細管の動きをおさえている「振れ止め金具の挿入不備」でした。いわば欠陥商品だったわけですが、いくら定検毎に探傷検査で調べても、欠陥を見つけられず、細管が一気に破断する事故が起きました。「損傷を見つけたときに対処すればいい」ではすまないことがこの事故で明らかになりました。

中には鉄くずがいっぱい

「高浜原発4号機の定期検査状況について」 (蒸気発生器伝熱管の損傷に関する調査状況)2022年7月22日によれば「前回定期検査における薬品洗浄時の条件を確認した結果、温度管理 や薬品濃度管理が計画どおり実施されていたことを確認し、薬品洗浄 によって、SG1基あたり約680㎏の鉄分を除去できていたことを確認しました」とあります。長期停止によって、蒸気発生器の中に大量の鉄くずが発生したと思われます。https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2022/pdf/20220722_2j.pdf

細管表面に生成されたスケールが悪さをしている

11月9日、関電は高浜3号の蒸気発生器損傷の原因と対策を発表しています。それによると、蒸気発生器の中から長さ約23mm、幅約7mmのスケールを回収。細管表面に生成されたスケールとのこと。厚さが0.1mmあり、これが擦れることで細管を摩耗させた可能性があると発表。
こんなスケールが一体どれくらい蒸気発生器の中で生成されて、それがはがれて悪さをしているのでしょうか。
高浜発電所3号機の定期検査状況について (蒸気発生器伝熱管損傷の原因と対策) 2023年11月 9日
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20231109_1j.pdf

運転停止期間も原発の老朽化は進む

原発は原則40年運転、審査に合格したら一度だけ20年間の運転延長を認めるというのが、福島原発事故の教訓を生かした安全審査の方針でした。しかし、岸田政権のGX推進、原発依存、原発安全神話復活の中で、長期停止していた期間は運転期間に含めなくていいということになり、60年を超える運転延長が認められるようになってしまいました。
しかし、蒸気発生器内からみつかった1基あたり680kgの鉄くずからや今回見つかったスケールからもわかるように長期運転停止期間でも腐食は進みます。むしろ、長期停止が原因で大量発生したと思われる鉄くずやスケールが悪さをして、今までは見られなかった損傷が生じたことが考えられます。これは明らかに原発の老朽化の問題であり、原発の安全規制は暦年で行われるべきです。

交換すると巨大な放射性廃棄物に

蒸気発生器そのものは新しいものに交換すればいいのかもしれませんが、交換する部品と配管の継ぎ目の溶接などが心配ですし、原発の中には絶対に交換できないところもあります。
また、交換した古い蒸気発生器は原発の敷地に専用の置き場をつくって保管しています。高浜3、4号機にはそれぞれ3基ずつ蒸気発生器があるので合計で6基の蒸気発生器を交換し、新たな保管庫を建設して保管します。持って行き場のない巨大な放射性廃棄物が、すでに関電の原発の敷地に21基保管されていて、今回の交換で計27基になります。

交換しないでそのまま廃炉に!


*1 高浜3号機は、規制委員会から対応区分を引き下げられ、直接原因及び根本的な原因の特定、安全文化要素の 劣化兆候の特定、並びにそれらを踏まえた改善措置活動の計画の報告を求められています。詳しくは下記noteをご覧ください。

*2 関電の蒸気発生器損傷への規制委員会の対応は以下のまさのあつこさんのnoteに詳しいです
「高浜原発3号機:老朽化ではないのか?」

*3 4月24日に福井県は高浜3、4号の蒸気発生器交換を了承。「1月末に4号機が自動停止するトラブルがあったことから、この対応に注力するよう求め、事前了解の回答を保留していた」(4月25日朝日記事より抜粋)その2日後の26日に三菱重工は受注を発表しています。早っ!!

*4 関電は最大13ヶ月とされている原発の運転時間を、15ヶ月に伸ばすことを画策しています。新規制基準に合わせるための工事を行い、蒸気発生器など大型機器を取り替えるので、かさんだ費用の元をとるために60年を超える運転の上に、長時間原発を動かして検査期間(運転休止期間)を減らすしかないってことなのでしょうか。「原発のコストが安い」なんて嘘ばっかりという証拠です。おんぼろ原発は今すぐ廃炉に!!

*5 タイトル写真は1991年美浜2号事故のとき、本店内の関電ホールで行われた事故説明会の写真。左から2人目が、後に副社長にまで登りつめ、森山栄治高浜町元助役から1億円以上の金品を受け取った豊松秀己氏。『関西電力五十年史』より。
この頃は関電が本店で事故の説明会を開催、原子力の技術者が壇上で説明をしていたことを思い出しました。福島原発事故後、関電は消費地の市民への説明会は一切開かなくなりました。市民グループからの要望書などは総務の社員がうけとるだけ。ガードマンが受け取ったこともあったようです。関電の市民への説明姿勢は明らかに後退。


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