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何もしない会社に2年間で8億円!?〜原発マネーの不正還流の証拠が明らかに〜

2022年4月20日関西電力(以下関電)コンプライアンス委員会(以下コンプラ委)が発表した「調査報告書」(以下報告書)https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2022/pdf/0420_1j_04.pdfでは、巨額マネー不正受領事件の中心人物である森山栄治元高浜町助役の関係会社=吉田開発の「土砂処分問題」のことが調査報告されています。仕事を「ちゃんとやれない」森山氏の関係会社にいかに実際の仕事をさせずに、利益だけを確保をするという難題?を解決するためとんでもないスキームを作り上げたことが明らかになっています。

3億6千万円相当の金品を受領

ここで森山元高浜町助役からの巨額金品受領事件を簡単におさらいしておきましょう。2020年3月14日に関電が経産大臣に行った報告「電気事業法第106条第3項に基づく報告」から。
・原子力事業本部等の役職員合計75名が、森山氏及び森山氏と一定の関係を有すると認められた企業から、総額約3億6000万円相当の金品を受領。
・金品受領は、1987年の森山氏の高浜町助役退任直後から始まり、1990年代、2000年代、2010年代と満遍なく認められた。
・受領者は、原子力部門の重要な役職者を中心としつつ、工事発注に関係のある部署の役職員等多岐にわたる。

原発不正マネー還流の明らかな証拠

関電の元役員たちは森山氏から送られた巨額の金品を「預かっただけ」と主張しています。しかしこのコンプラ委の報告書を読むと、森山氏の要求どおりに森山氏の関係会社に多額の発注を行い、その関係会社は森山氏に多額の顧問料を支払い、森山氏はそのお礼に金品を関電役職員たちにばら撒いていたという原発にまつわる不正マネーの還流が明らかになっています。
電気料金値上げ申請の審議会の議論の中で、委員からもっと競争入札の比率を増やすように言われた関電は、原発関連の工事は特殊な技術を持った会社にしか発注できないことや地元の企業を優先することを理由にあげて、なかなか競争入札の比率を上げられないと説明していました。この言い訳がまったくの虚偽であったことも、この報告書で明らかになりました。

土砂処分ができない会社=吉田開発

関電は森山氏からの要求で、2014年度に2億円程度の仕事を森山氏の関連会社である吉田開発に発注することにしました。具体的には高浜原発の工事で発生した残土を処分する仕事を発注したのですが、土砂が流出する事故が起きました。盛土の崩壊、土砂流出の危険、騒音といったクレームがゼネコンや高浜町に高頻度で入りました。これを受けて、原子力事業本部の役職員は「ちゃんとできるようになるまでY社(吉田開発)での処分はやめる」、「** [ゼネコン名] を通してちゃんとできるよう技術指導する」というメモを2014年に残しています。
2017年になっても、この状況は変わらず、吉田開発について「自社技術力はあまりなく、設計・施工計画、工程・品質管理は信認をおいて任せられるレベルにない」「地元の評判が悪く、下請けを地元から段取りできない」「地元住民や高浜町(役場土建関係者)からも信頼されておらず、悪評をよくきき、横とのつながり、情報共有にも難がある」というメールのやり取りがありました。

吉田開発は何もしないで儲けるだけ

工事を発注しなければ、森山氏の要求に応えられません。そこで関電が考えたのは、吉田開発には何も仕事をさせず、お金を儲けさせる方法でした。
関電からゼネコンへ単価3400円/㎥で発注し、ゼネコンは吉田開発へ同じ単価3400円/㎥で発注します。吉田開発は地元業者へ単価を下げて2380円/㎥で発注します。地元で評判の悪い、信頼のない吉田開発は工事に関わることなく、差額の1020円/㎥を儲ける仕組みが出来上がりました。この地元業者への単価2380円/㎥が、世間の相場であることも、メールには記載されていました。
ちなみに高浜原発と大飯原発で工事の残土は合計220万㎥発生していて、もし全てこのやり方で発注がなされていたなら、吉田開発には22億4400万円(1020円/㎥×220万㎥)もの利益が渡ったことになります。
実際どれくらいのお金が吉田開発に渡ったのかは不明ですが、2017年4月、森山氏との面談では2018年と2019年の2年間で合計8億円の要求があったそうです。その時処分量として提示されているのは17.4㎥。単純に単価を計算すると4597円/㎥となり、実に相場の2倍。森山氏の要求のとんでもなさがよくわかります。

明らかに高値発注していた

 このコンプラ委の報告書がでるまで関電は「発注の金額については正当なものであり、工事を高値で発注したことはない」としてきました。しかし、この報告書を読めば、これが真っ赤な嘘であり、相場よりはるかに高い金額で発注、その上乗せ分を何もしない吉田開発が受け取る仕組みを作り上げていたことがわかります。
また、関電は「地元のために、地元企業に仕事を発注しなければならない」と主張してきましたが、かえって地元の信頼を失うと現場から言われていた会社に、無理やり発注していたことも判明。原発利権へ群がる実態が明らかになったのです。

うそをつかない、それさえできれば原子力などありえなかった

「うそをつかない。人に対してもうそをつかない。自分に対してもうそをつかない。もし間違えたらあやまる。それさえできれば、原子力などあり得なかった。都会では引き受けられないほどの危険を抱えた原発を、『安全です。絶対事故は起こしません。』と言い続けて原子力を進めてきた」(小出裕章)元京大原子炉実験所のX(旧ツイッター)より。
ほんとにそのとおりだと思います。不正のデパートと呼ばれ、何度も謝罪会見を開き、新社長が新体制を発表しては、また新しい不正が発覚する関電。うそをごまかすために、また新しいうそをつく、そんな関電が日本最古の老朽原発を再稼働させている。恐ろしいことです。

中間貯蔵施設に関する関電の新たなうそ

10月10日、関電は使用済核燃料に関して「使用済燃料対策ロードマップ」を発表しました。
1番の対策は、いつまでたっても動かせない六ヶ所村再処理工場を早く動かし、六ヶ所村に使用済核燃料を運び込むこと。
2番目はフランスに200tを搬出してMOX燃料再処理の実証実験をすること。
3番目が県外中関貯蔵施設を2030年ごろ操業を開始すること。(具体的な候補地名を今年12月末までに示すと約束していましたが示せませんでした。約束は守られていません)
4番目は原発の敷地に使用済核燃料の乾式貯蔵の施設をつくること。県外搬出をずっと求められてきた関電にとって、これが一番やりたいけれど、いままでは認められないことでした。しかし、福井県知事はこれを認めてしまったのです。関電は「中間貯蔵施設への円滑な搬出のため」「搬出までの間、電源を使用せず安全性の高い方式で保管するため」そして「原則として」貯蔵容量を増加させないと言っています。ここが今回最大のうそではないかとおもいます。せめて使用済核燃料の量が今現在の貯蔵容量より増えた場合には原発を止めるという約束をあらたに結ぶべきです。議会での議論もなく、市民の声も聞かずに、杉本福井県知事は今回ののロードマップの説明で「一定の前進があった」として老朽原発高浜1.2号と美浜3号の運転継続をあっさり認めてしまいました。このロードマップのどこが「前進」なのでしょうか。わたしには関電の中間貯蔵施設に関するうそのまた新たな1ページが書き加えられたとしか思えません。
もんじゅが廃炉になり、日本の核燃料サイクル政策は完全に破綻しました。六ヶ所村の再処理工場はそう簡単に動きそうにありませんし、できたプルトニウムの使い道もありません。海外再処理でできたプルトニウムを消費するために、高額のMOX燃料を使用しているのに、またフランスに使用済MOX燃料をもっていってまた再処理をして、で取り出したプルトニウムはどうするの?再処理をフランスに海外に依頼してもっともっと高額のMOX燃料を使う??何の解決にもなりません。

関電はうそとごまかしをやめて脱原発を!!

*1 前述の2020年3月14日に関電が経産大臣に行った報告「電気事業法第106条第3項に基づく報告」では発注に関しては、こんな記載になっています。
==当社役職員は、本件事前発注約束等を行うとともに、森山氏の要求に応じ、元請会社から本件 取引先等に対する発注金額を当初の金額から増額することを約束していた。当該行為は、当社 の発注プロセスの適切性や透明性等をゆがめる行為であり、ひいては当社の利益をも損なわせ るおそれをはらんでいる。なお、発注金額については、不合理であったとまでは認められるに 至らなかった。==
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2020/pdf/1006_2j_01.pdf

*2 株主代表訴訟が提訴されています。第1回口頭弁論は12月8日(木)15時半から 大阪地裁 

*3 裁判についての詳細は「関電の原発マネー不正還流を告発する会」のHPをご覧ください

*4 仕事はしないで儲けだけの丸投げスキームは元高浜町議の会社救済にも使われました。
「関西電力は高浜原発再稼働のため高浜町議の会社を救済」

*5 関電のこれまでの中間貯蔵施設をめぐるうそとごまかしについては「関西電力 中間貯蔵施設の『約束』をめぐる黒歴史」を。

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